INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「これ変な肉?」「毎日旨い物食ってるねえ」「人種の壁?その前に自分を磨けヘタクソ!」…BLUE GIANTで描かれるアジア系への3種3様

ジャズ漫画「BLUE GIANT EXPLOER」、いま主人公の宮本大はサンフランシスコにいる。
この号は例のゴルゴ13の、200巻記念特集があり、さらにはちばてつやの回想漫画が載ってるプレミアムな号。

ビッグコミック 2021年 4/25 号 [雑誌]

ビッグコミック 2021年 4/25 号 [雑誌]

  • 発売日: 2021/04/09
  • メディア: 雑誌


で、そこでのコンサートに招いたドラマーはアレックスというチャイニーズ・アメリカンだ。
彼の技術もたしかなのだが、
「ジャズは黒人の音楽で、アジア人はなかなか重用されない人種の壁がある」との不満を抱えている。それに対して大は…それは、後述する画像でわかる。


この最新回で、アメリカ在住のアジア系の日常、がちょと典型的な挿話として描かれる。
コロナ禍のアメリカでは、通常以上に大きなイッシューとなっていることもあり、また非常に重要な意味もあるので紹介したい。


まず構成上、ふたつづきとなっているのでそちらを。

f:id:gryphon:20210424101445j:plain
BLUE GIANT EXPLORER アジア系に関する挿話
f:id:gryphon:20210424101639j:plain
BLUE GIANT EXPLORER アジア系に関する挿話


最初の人物の発言は余りにあからさまでわかりやすい、差別的偏見、よく言っても不謹慎で悪趣味なジョークだろう。トランプに投票したかどうかは知らぬ。
ただその前のコマで、次の台詞にも出てくる「英語表記の無い商品」であることへの不満を語ってもいる。「アメリカの商店で売る商品に英語表記が無いなんて」という批判自体は批判として成り立つか?という、微妙なラインをついてきたのかもしれない。


そして、そこから続く、宮本大のシンプルで一直線な発言。この長期連載の主人公の、いかにも主人公らしい発言だ。というか、こう発言しなけりゃダイ・ミヤモトのキャラ的におかしくなる。
ただ、「お前が刻苦勉励して自分のスキルを挙げていけば、見えない壁なんてない!!今の現状は、お前の努力が足りないだけだ!!」とは、これもよく言われる「典型」な発言でしてね…たとえばこれが性別の壁だったらどうでしょうか。

ちなみに、この作品中では冒頭に書いたように「ジャズ」の世界だから「圧倒的マジョリティは黒人であり、その下で他の人種は抑圧されチャンスを不当に奪われている」という話になるのだが……それをいうと、またこれが微妙がデリケート、危険がウォーキングな話になりそうなことは想像に難くない!!!


ここだけでも、考えさせるに足るのだが、
またさらにこの作品では第三の「アジア系」に関する挿話をぶっこんでくる。

f:id:gryphon:20210424102701j:plain
BLUE GIANT EXPLORER アジア系に関する挿話

「これ(XOジャン)と小籠包を食べるたび、中国人に生まれたかったと思うよ」
「こうして君らは毎日ウマイもん食べてるんだろ?」と語る白人。
アレックスから自分はメキシカン料理が好きだとかえされると爆笑するから含むところは無かろう。
「ありがとう」と笑顔で帰っていく。バイデンに投票したかどうかは知らぬ。



・・・・・・・・・また、ストライクとボールの境目にきわどいの投げてきたなあ。

特に漫画描写としては、このページの最後のコマ。

実はこのあと、
ダイが最初に悩んでいた「厳しい事言っちゃったアレックスが会場に来るかなあ…」という話、彼が来て解決するので、その文脈からいうと
「この中国料理をほめちぎる白人の言葉が、『あれ、アジア文化も大したものじゃないか』という誇り、ナショナリズムとなり、アレックスは積極性を取り戻してジャズ会場に来た」
とも解釈し得る。


だがアレックスの最後の表情、そうなるかね?
いま、マンガは文法的にむずかしい、という記事が話題だが、それ以外でもなかなかにムツカシイのだ。
https://note.com/campintheair/n/ne028c12ce307



そもそもポリコレネタではベテランのおいら、そのへんのおあにいさんとはおあにいさんのできが違うんでえ。
これは例の高度トラップであり
「褒めるような文脈でも、属性をひとくくりにしてステレオタイプを語ったらアウト!!」というやつがあることは知ってますがな。

ポリコレのふりして大路を走らば、すなわちポリコレなり。



この関連では、星野ルネ先生のエッセイ漫画にいくつか例があったはず。
もっとしっくりくるのもあったはずだけど、たとえば似た例はこれ。


あ、あとはこれだな

m-dojo.hatenadiary.com

「この黒魔術をアレするたび、アフリカ人に生まれたかったと思うよ」
「こうして君らは毎日 すっごい飛ぶもんキメてるんだろ?」

とかな。


しかし、ポリコレ十段のおれだから理屈ではわかるんだが、
ホント―に、満面の笑みとともに「これ【A国文化独自の調味料や料理】を食べるたび、A国人に生まれたかったと思うよ」「こうして君らは毎日ウマイもん食べてるんだろ?」と語りかけてきた外国人に「お前はポリティカルコレクトに反した差別発言をするレイシストだ!!そこに直れ!ヘイトスピーチ、ゆるさない!」といえるか、どうか。
各自、考えてみてください。(了)


そして次回、宮本大とアレックス、そしてもちろん?黒人メンバーも加わってのジャズライブの幕が開く・・・・・・・・

※ この作品は、主人公が日本にいた時代が「無印」、ヨーロッパ、米国を回る時代にそれぞれ副題がつき、巻数は1から始まっています。

BLUE GIANT(1) (ビッグコミックス)

BLUE GIANT(1) (ビッグコミックス)


最近話題になった、「米国での『アジア系』」をめぐる現状を伝える記事


www.newsweekjapan.jp