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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「ドイツはエンタメ途上国」(マライ・メントライン)…という話について考える

joshi-spa.jp

この文章自体も興味深いものであるが、ブクマも多数コメントがついてるのでそちらに任せましょう
b.hatena.ne.jp


自分はこのメントライン卿(なんでこの敬称なんだ)のプロフィルにあった、この単語について…

【マライ・メントライン】
翻訳(日→独、独→日)・通訳・よろず物書き業。ドイツ最北部、Uボート基地の町キール出身。実家から半日で北欧ミステリの傑作『ヴァランダー警部』シリーズの舞台、イースタに行けるのに気づいたことをきっかけにミステリ業界に入る。ドイツミステリ案内人として紹介されたりするが、自国の身贔屓はしない主義。というか、エンタメ作品は英米の精鋭作品のコンセプト性をベースに評価することが多いので「エンタメ途上国」ドイツへの視線は自然に厳しくなるとも言える。好きなもの:猫&犬。コーヒー。カメラ。昭和のあれこれ。牛。QJWebなどでコラムを執筆。
ツイッター@marei_de_pon

ドイツが「エンタメ途上国」だって??…そうだったか…?? と思うのだが、
確かに皆さん、ドイツ映画、ドイツ漫画、ドイツTVドラマ、ドイツアニメ、ドイツ推理小説、ドイツラノベ……などなどで日常的に接してる、楽しんでいるものありますか?

自分がここ10数年でみたドイツ映画は「ヒトラー最後の日々」と「帰ってきたヒトラー」だけ…あれ両方ともドイツ映画だよな?まあ、題材的にも特殊事例というべきだろう。

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そんなことで、感想ツイートを寄せた


ドイツゲームの話や、
『現地には優れた作品がすでにあるのに、「需要の怠慢」なだけでは?』という論点は、これまで折に触れて書いています


特に自分は「これだけ情報・カルチャーの流通が早く、広くなった以上、サブカルやエンタメは『世界連帯』し、多かれ少なかれ徐々に収斂していくだろう」というのが基本の予想。

過去記事より

……発想を転換すべきで、サブカルチャーにおいて日本で流行っている何かがあれば、それの「各国版」がある、と考えてあたらずとも遠からず、なのではなかろうか。
「中国の星新一
「韓国の田中芳樹
インドネシア米澤穂信
「タイの夢枕獏
が、われわれは知らないだけでたぶんいるんですよ。そして、一読すれば驚くようなクオリティの、ショートショートや架空歴史小説や「日常の謎」や格闘家の決闘する小説などを書いているわけです。
将来、翻訳ソフトなどが発達して、言語の壁がなくなって、自由に読めるようになったら、そういう人たちが知られないまま…ということもなくなるのでしょうけどね
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こういうのを見ると「中国や韓国、南米のミステリー作家が書いた、あっとおどろく奇想天外で斬新なトリックのミステリーが既に存在していて、我々が知らないだけなんじゃないか?」という、逆の思いって感じませんか?
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もはや令和の時代は別に、「日本に影響された」というわけじゃなくて、たとえば日本がハリウッドの話題作から刺激を受けるのと、中国や台湾、韓国、タイが刺激を受けるのとは同時期、リアルタイムの話になったのだろう。
進撃の巨人」や「鬼滅の刃」が面白い!!とフォロワーが生まれるのも、日本で生まれるのと南米で生まれるのとでは同時進行になる。


だから、まあなんでもいい…いま日本で「受けてるなー」と思うようなサブカルのジャンルは、
おそらくどの国にでもある。(もともと日本発祥でもないだろうし)

異世界もの」もあるし、さらにはそのジャンルの中で異世界内政チートも、異世界グルメも、パーティを追放されたやつの復讐もあるはず
ミステリーでは異能探偵も日常の謎イヤミスバカミスもバディものもある(推理小説というものの輸入も、そもそも中国のほうが早かった)
「悪役令嬢」ものとかもある。幼馴染とつかずはなれずの会話劇、とかもある。ツンデレもある。魔法少女とかもある。
BLも勿論ないはずがない。
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ただ、それが早い遅いや、例えば日本を基準にしたら確かに日本と似た傾向、
違う傾向はある。ドイツが遅いとしたら、それはなぜだろうか



この「ドイツはエンタメ途上国」については、別の人が感想リプを付けて、それにメントライン卿が返信しておる。この理由が、意外な視点で興味深い

ドイツは教養権威主義
ハイカルチャー文学をエンタメ的に紹介する達人」批評家が文壇に長らく君臨
日本では君臨どころか傍流もいいところだけど「更級日記は日本初のオタク少女の記録」とか「枕草子はチョーいけてる、とかキモッ、とかを率直にかいたギャルの日記」「太宰治の「駆け込み訴え」はBL」とか、その種の視点での古典文学読みはいろいろある。
そういうものなのだろうか。そしてそれが、現在進行形のエンタメにはやや邪魔になる??? これは詳しい解説を読みたいところだ。


ちなみに、おいら思うんだけど、…基本、エンタメは需要と供給に任せておけばいいとは思うんだが、
NHKの海外ドラマに関しては、どこかの枠で『需要に関係なく、いろんな国の現地の人気ドラマを敢えて放送する』というのをやってもいいんじゃないだろうか、と思う。
ドイツも、トルコも、台湾も、タイも、セネガルも、ポーランドも、ニュージーランドも……そこで日本でも意外な火が付く作品は、かならずあると思うんだ。
また、どこの国でもその国なりの時代劇はあると思うので、教科書に載るレベルの偉人のドラマだったら、歴史好きは見るよ。スレイマン大帝のドラマとか、康熙帝のドラマとか実際にあるらしいし。





ちなみにドイツがボードゲームの大国になったのは,本邦の手塚治虫に匹敵するような、ひとりの巨人がいたことも大きな理由だそうだね。…ただ、この人はアメリカ人だとか。これもまた世界連帯かな

以前の自分のゲーム記事でもかいたことあったけど、この漫画(※放課後さいころ倶楽部のこと)でも、ひとりの偉人・・・「ボードゲーム界の手塚治虫」的存在を紹介している。


アレックス・ランドルフ

http://gioco.sytes.net/randolph.htm
今のドイツゲームの指導者的な役割を果たした人物をあげるとするならば、間違いなくアレックス・ランドルフとシド・サクソンの両アメリカ人があげられるだろう。ドイツゲーム黎明期にこの二人がゲームの楽しさを伝えたおかげで、今のドイツゲームはあるといっても過言ではない。
アレックス・ランドルフは大の日本好きで、将棋を覚える為に日本に来たが、気が付けば7年間日本に住んでいたらしい。永世棋聖とは友人だそうだ・・・

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最後にこの話題を、たとえば「タイ」の話と合わせて考えてみたいのだけど、それはリンクを張るだけで後日に。

……各メディアで日本のことが報道された際に、どの程度関心を抱くのだろうか。要は日本(の情報)に対してどれだけ興味があるかを確認した結果となる。

↑ 日本のことが報道されると関心を持つか(2021年)
「とても関心がある」と「やや関心がある」を足した関心派の視点で見るとタイがトップで次いで韓国、そして意外(?)にもフランスが続く。アメリカ合衆国は今回調査対象となった国では一番関心派の値が低く、そして強い無関心を意味する「まったく関心が無い」の回答値も一番高い。

タイでは無関心派は2割強にとどまっており、「まったく関心が無い」もわずかに4.5%。他調査項目でもタイは日本への、特にエンタメ部門で強い関心を持っていることが明らかとなっており、興味深い話ではある。
news.yahoo.co.jp

おまけ ついでにドイツの「総合格闘技」人気って、いまどうなったんかなーとか思う。

いったんはUFCドイツ大会が開かれたりするぐらい人気だったのだけど、今はあまり聞かない気がする。
これはUFCがコンタクトスポーツなので各国の規制がいろいろあるから、何とも言えないところだ。それにドイツ大会も、むしろ近隣のクロアチアポーランドからの来客を当て込んだとも言われる(PRIDEで活躍したミルコ・クロコップやパウエル・ナツラらの活躍で、それなりにMMAが根付ているのである)


追記 このテーマで、卿が論じてくれました。

マライ・メントラインプロフィール中の〈「エンタメ途上国」ドイツへの視線は自然に厳しくなるとも言える〉。この一文に、ネット上で興味深い反応があった。そこでマライの脳裏に改めて浮上した命題は「ドイツはなぜ『エンタメ途上国』なのか」…(後略)
ドイツはエンタメ途上国なの?村上春樹を人気作家にしたライヒラニツキの絶頂と失速(マライ・メントライン)
qjweb.jp