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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

忍者の逆手刀も卍手裏剣も、1人のテレビマンの創作が常識化した【創作系譜論】

何の気なしに図書館で借りて読んでみた、この本から。

月光仮面』『ウルトラマン』『金曜日の妻たちへ』は、テレビのアヴァンギャルドだった。テレビドラマ、テレビ映画の面白さの秘密はどこにあるのか?新たなテレビ表現論への試み。

自分はこのへんのことをもう知っているかな?という前提だったのだけど、考えてみたらせいぜい自分の知識は「ゴジラ」や「ウルトラマン」であって、その前の白黒テレビ…月光仮面や快傑ハリマオはほとんど知らないのだ。
しかし、実はファンタジー的な創作の系譜は、テレビという大枠で語るならこちらのほうが源流のものも多い訳で、大いに蒙を啓かれました。

しかし、月光仮面は最初期待されない=製作費がほとんど出ない、であり…10分番組で10万円、駆けずり回って増額して15万円!! 当時のアメリカテレビ映画は30分で400~700万円の製作費だった時代にだ。
そのせいで、製作者の家が応接間は探偵事務所になったり、ガレージが悪のアジトになったり。銃撃戦の背景には買い物帰りのおばちゃんが歩いているなど、低予算というか、アマチュアの自主製作映画なみのアラが『月光仮面』には目に付くらしい。
そもそも鞍馬天狗などの時代劇をやりたかったところが、予算がないので、それを現代劇にしたのだという。

そして、その中心にいたのが当時29歳の西村俊一。この本によると月光仮面のなまえも、それを「菩薩」になぞらえたのも川内でなく西村の発案だったとか。


ま、それは前段で、本論に入ると、もともと時代劇を撮りたかった西村は、月光仮面やハリマオの成功で、その機会を手にする。
それが1962年の「隠密剣士」。初期は幕府の密命で、将軍の異母兄が隠密として諸国を回る…という設定だったが、やや地味にすぎて1クール目は苦戦。そこで、2クール目から「忍者」を登場させたら大ヒットしたという。
当時から、そういう路線変更はあるんだ(笑)。

この番組に先行して山田風太郎の忍法帳、白土三平忍者武芸帳横山光輝伊賀の影丸などの系譜があり、どれも人気だったという。
忍術から忍法になる時代でもあった。

で、この西村氏の回想。54P

西村俊一が考え出した「テレビ映画」的時代劇は、ただ連綿とストーリーが続くのではなく、一回につきひとつ、視聴者のおしゃべりの材料になりそうな「目印」を盛りこむことだった。その目印が、当時小説や漫画でブームの気配があった忍者物の「忍法」だ。
「隠密剣士」のような世界をやってみたいという気持ちはずっと前からありまして、「快傑ハリマオ』で海外ロケしたときも、夜はヒマでしたからアイディアを書き出していたんです。これはいろいろな忍者物の先がけでしたから、いき制作を始めてみると、わからないことが多くて苦労しましたね。
西村俊一はほとんどのプロットを自ら考え、宣弘社の社員だった伊上勝こと井上正喜がそれをシナリオ化して、一か月分ごとにまとめて現場に渡した。第一章でもふれたように、「隠密剣士」が大ヒットの兆しを見せはじめた第二部以降は、毎回さまざまな「忍法」の目白押しだったが、そのアイディアも西村自身が必死でひねり出したものだった。
土遁、水遁、火遁というポピュラーな術はもちろんのこと、”甲賀忍法むささび落とし”、”燕隠れ”、”まんじ風”。と興味津々の秘術を次々にタイトルにして子どもたちを強く魅きつけた。
「少年俱楽部」に育てられ、たいへんな歴史好きでもあった西村は郷土史の資料などもいろいろと蒐集していたが、時代考証がなかなか細かいところまで具体的につかめないのは現在と同じであって、忍者の行動の実際を映像化するにはイマジネーションを要した。
したがって、「隠密剣士」には西村の空想による設定が頻出しているのだが、後の時代劇では期せずしてこれらの西村の制作によるパターンがあたりまえのように模倣されることがたびたびあった。

「例えば忍者が刀を逆手に持つポーズ。これは、忍者にとってそもそもは戦うことより逃げることが目的なので、逃げやすいようにと思って私が考えたんです。それから手裏剣もとがっていては危ないから、卍型にしたらどうかと思ってやってみたんです。
すると、「隠密剣士」の後から出てくる番組で、さもそういうのが昔ほんとうにあったように描かれているんですよ(笑)。けれど、そんなはずはないんですよ、私が考えたんだから(笑)。そういう例がけっこうあって、おかしなことだなあと思って見ていました」

「テレビヒーローの創造」より 忍者の逆手刀は西村俊一の発想。卍型手裏剣も

へえー。最近は忍者研究が進んで、一時は忍者そのものの実在が疑われていたがそんなことはなく、いろいろ裏付けが見つかっている。忍者研究が一段新しいステージに入った…ともいわれる
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だが、だからこそ逆に戦前戦後、講談から時代劇にいたる「忍者イメージの変遷史」も面白い研究対象になるだろう。
おれも白土三平からしか知らんしさ。
忍者の実像の実態的研究は平山優氏や磯田道史氏に任せて、この「忍者・ニンジャイメージ変遷史」をだれかまとめてくれたら、すごく面白くなりそうなんだけど。すでにそういう本あるのかな?しかし外国語できないと研究できそうもない…
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小堀流の卍字手裏剣というのがあるのだがあれは偶然の一致なのかそれとも実は真似たのか/フィクションの忍者についてなら『忍者文芸研究読本』という本がある

2020/12/29 19:29
b.hatena.ne.jp


tobuakaei.hatenablog.com
しかし、この開発された忍者の「刀の逆手もち」はもう、何の他意もなくパクられてるようだ。

「忍者は刀を逆手に持つ」は戦後、隠密剣士の製作者の発案だったが一般化したらしい


それに、なんと隠密剣士は1962年作品だが、海外にバンバン売れて人気番組だったんだとか。ザ・サムライと言う名で、オーストラリアとか、さらには東南アジアではほとんどの国で放送された。
日本エンタメ・サブカルの海外展開ではアトムに負けない速さじゃないかな??そしてそれが、後年の海外の忍者ブーム、そしてニンジャという概念、名称、キャラクターが完全に「定着」する先駆けとなったのであろう。

テレビヒーローの創造 隠密剣士は海外で大人気に

その海外のニンジャ概念の中に、「カタナ、ニホンサーベルを逆手に持つ」も、「スワスチカ型のスリケン」も確実に刻み込まれている。
ほらこれ。

忍者の逆手で刀を持つイメージは海外でも定着

※追記 上の引用イラストに対して




…にしても。こういうささいなディテールに関しても(いや、むしろディテールこそ)、自分のアイデアが模倣され、それがパクリやモノマネを越えて「〇〇といったらXXなのが常識でしょ?知らないの?」になり、それが世界中に広まったクリエーターの気分ってどういうものなのかね。
憤懣やるかたないのか、最高の名誉だと誇らしくなるのか、「いや、そこまでマジにとられると…」と、生まれ変わりをマジに信じられた某漫画家が声明をだしたような、何か空恐ろしさを感じるのか…。
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エルフの耳が長いのもダークエルフが褐色なのも、みんな僕のせいみたいです(笑)

副島氏:
 自分なんかの世代ではもう、エルフといえばディードリットドワーフといえばギム、みたいなイメージなんですよ。

出渕裕氏:
 よく言われるんですよ。エルフの耳が長いのは、お前のせいだって(笑)。

副島氏:
 いろんな方から聞かれてるのかもしれないですけど、実際のところはどうなんですか? 

出渕氏:
 当時はそう言われて初めて「えっ、そうなの?」って。それこそ自分の中のイメージでは、エルフの耳はあれぐらい長いものだって、なぜかインプットされていたんです。
news.denfaminicogamer.jp
togetter.com


(了)

追記 実際の逆手切りの話や、同年の「座頭市」など


machida77.hatenadiary.jp





うむ、逆手の型が無効だとか現実的ではない、という話ではない。「忍者は戦闘を最小限に抑え、そこから脱出するのが主目的だから逃げやすい様に刀を逆手持ちする」/「それが忍者の一般的な構えだ」というのが西村氏の創作だというおはなしです。
残念ながらあまりブレイクしなかった作品だが、MASTERグレープより

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第一話試し読み
gekkansunday.net

「MASTERグレープ」第一話でのナイフ解説


twitterの方で「バズったので宣伝」やった

「バズったので宣伝」を初めてやります。
この記事を載せたブログ
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は基本、テーマが雑多すぎるが、似た分野はカテゴリ「創作論」で読める。
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起源やお約束を考えるツイートを見つけたら集める、こういうまとめも蓄積中。
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追記 「卍手裏剣」について、この説を覆す?新資料が!!

2021年1月18日の投稿ツイート!·




2024年追記




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