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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「世論調査、菅義偉が一気に首位」で電通陰謀論とかの前に…新書『「次の首相」はこうして決まる』読め!

次期首相ふさわしいのは「菅氏」最多 朝日新聞世論調査

2020年9月3日 22時23分

 朝日新聞社は2、3日に世論調査(電話)を行い、辞任を表明した安倍晋三首相の後継に誰がふさわしいかを聞いた。菅義偉官房長官が38%で最も多く、石破茂自民党元幹事長が25%で続き、岸田文雄・同党政調会長は5%だった。

自民党総裁選に立候補を表明した3氏の名前を挙げ、選んでもらった。「この中にはいない」は28%だった。6月の調査で、7人の名前を挙げ、次期総裁にふさわしい人を聞いた時は、石破氏がトップで…(略)
www.asahi.com


しかし、本当に読みごたえがあるのは、記事本文より、ブクマだ。
b.hatena.ne.jp

かんら
かんら……

と笑いたくなるところだが、やはり紳士淑女・日本の知性がつどう、はてな村でこれだと、わらってばかりはいられぬ。一読三歎。

いや、別に村人が
「日食月食は神の怒りだ、魔法だ」と信じているなら、「一定の規則に従って発生する天文現象にすぎない」と知っている側はいろいろと利用できる価値があるから、わざわざ教えるのもソンなんだけどね。
でも、やはり気の毒でね。ライバルのマスカラスに、打ち身骨折によく効く温泉を不死身仮面アズテカは教えてあげたではないか。


だから、ネタもとである、この書籍を教えちゃう。

なぜ安倍と福田は首相になれたのか? いま日本政治を動かしているのは誰なのか? 世論調査に踊らされる政治家の実態から、小選挙区世代の新しい政治力学まで、あざやかに読み解く。

同書って、このブログでは世論調査がテーマの記事の時に、基本的に紹介し続けてきたような気がする。
この時はメインに据えたっけ。
m-dojo.hatenadiary.com
ん?そして、いまの今まで気づかなかったけど、この著者の名前、最近ときどきワイドショーで見てるかもしんない。
政治記者の書いた本は、下手すると「政界裏話」のゴシップ本でしかないものも多く、それはそれで、うんざりしつつも有用な情報だけを抜き取ればいいと割り切って読んでみればおもしろい。
だけど、これはそれとは一味ちがう。


そう、この新書はなかなかに、個別の事例から法則性を抜き出す技術にたけた良書。
世論調査一般だけでなく、「次の首相にふさわしい人は誰か?」という設問での世論調査が、現実の政局にはどう影響を与えるのか、そしてそれはどのようなメカニズムによるものなのかを、具体例を体験談として語りつつも、手探りの「理論」…というより「仮説」を構築しながら語っているのだ。

そこが類書と違う所だし、また2008年刊行の本でありながら、告示前の2020年自民党総裁選に関連して読まれるべき、と推薦するゆえんであります。




ここからみんな覚えてるようで忘れている二つの自民党総裁選と、「次の首相にふさわしい人」輿論調査の影響をおさらいしてみよう

2006年自民党総裁選挙

2005年、小泉純一郎自民党総裁を翌年9月で退陣するという意思を明確にする。同時に10月の最後の内閣改造では総裁候補と言われた人々重要ポストにつけ、ある種の総裁レースをを”煽った。いわゆる「麻垣康三」の、麻生太郎谷垣禎一安倍晋三福田康夫は最後の内閣改造では閣僚入りしていないが「重要な総裁候補の一人」などの言及を行った。


・メディアはそれを受け「次の総理」調査を実施し始めた。


・そもそも時の首相が総裁候補を「決める」 に等しい行為が前代未聞だった。総裁候補というのは派閥が主導して派閥が決めるものだった。小泉はここでも旧来の派閥を壊した。


・そして安倍晋三ロケットスタートを切る 。阿部だけが3割から5割の支持を集め、他の候補は一桁程度。


だが2006年の3月頃から福田が2割ぐらいの支持を集めるようになった。 この頃、福田が靖国参拝に関し「外交的に問題にならない方法がないのかと思う」と言う、小泉安倍路線の逆を張るような言動をして一躍注目が高まったのだ。 それがアジア重視や安倍独走に納得できない層の期待を膨らませたと筆者は分析する。


・しかし党内の情勢がそれに反して盛り上がらなかった。議員の中に福田支持層が見えない状態が続いた。だが、 この時「調査の変化を受けた記事のトーンに国会議員が影響され、その議員と接触するマスコミがさらに強い影響を受けて記事を書き、その記事に再び議員が影響される『共鳴現象』が発生していた」


・だけれども…原文を引用しよう。
「全体的な評論を探るマスコミの輿論調査は、 無作為抽出によって行われる。 その対象者は自民党支持者だけでなく他党の支持者、無党派層を含んでいる…福田の数値は他党の支持者や無党派層に支えられていることになる。」


・そのカラクリに気付いた安倍は自分を支持する「議連(再チャレンジ議連)」の発足を周囲に依頼する・輿論調査の数字がそのまま自民党内の支持者数には直結しないことをアピールするために、、実質安倍応援団となる議連を発足させ、示威行為を行ったのだ。そしてこの戦略は当たり、福田は不出馬を決めた。いや、安倍が福田を不出馬に追い込んだのだ。

だがその一方で、「次の総理は」調査でトップでなかったことも福田の出馬には大きな理由となっただろう。


・ちなみにこの時期の総裁選では、額賀福志郎山崎拓なども当初は総裁選に意欲を見せていたが断念している。その理由が「次の総理」調査で例えば山崎は0.4%、0.1%など、すんごい数字を叩き出していたからなのであった。額賀に至ってはある調査で「―」(計測不能なほど少ない)だったと言う・・・・・・・


・著者はこんな流れを振り返って「ポスト小泉の総裁レースを終始主導したのは、マスコミ各社が毎月のように行った「次の首相」調査だった…派閥の領袖たちの思惑とは無関係にまず調査結果がありそれが政治家の動きを縛っていた…『いいや、流れはこの人物が作った』と反論する向きもあるかもしれない。しかし虚心坦懐に振り返ってみて誰がそれほどの力を発揮したと言えようか」




【2007年】
安倍内閣参院選で歴史的惨敗、 それでもなお続投を求めた安倍首相だったが国会運営が行き詰まりほぼ一年で退陣を表明した。

・その直後からあれやこれやがあり、古賀誠などの派閥領袖が福田支持に動く。 小泉純一郎の再登板や、当時の代表だった町村信孝を押す声を抑え込んだ清和会は、元々自派の人間でもある福田康夫でまとまり、ほぼ最初から党の多数派を形成した。


・安倍退陣表明の直前、「次の首相」調査ではこのような数字が出ていた。

麻生太郎18.6%
小沢一郎 15%
小泉純一郎10.2%
福田康夫9.8%
石原伸晃4.6%
谷垣禎一3.0%
小池百合子1.6% (フジテレビ報道2001

しかしこの数字を見て、ある中堅の自民党議員がこういったという

「一見、福田の数値が低いように見えるが、これは選択肢の設け方の問題に過ぎない。麻生と福田の二択にすれば、福田は小沢と谷垣の数値を吸収して並ぶはず」

2007年総裁選は、実際にこの見方通りに推移した。
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柿崎明二「次の首相はこう決まる」より 「次の首相」数字変化の法則


実はこの時麻生太郎の 陣営は、今回の石破茂と同じような役回りを担った。

自民党内では劣勢かもしれない。しかし調査では自分たちがトップだ。その人気、圧倒的優位を数字で見せつけて選挙の顔が欲しい中堅や若手を引き込む」という戦術を立てていた。


ところが蓋を開けてみると、党内で多数派を形成した上で出馬を宣言した福田康夫が一気に追い上げ、朝日新聞調査では総裁選告示日に麻生14% 福田13%…。
そして数日も経たないうちに福田53% 麻生21%と逆転されたのである。
当時も「勝ち馬に乗る体質」といった論評がなされたが筆者はこれには否定的である。



ここから筆者はさらに箇条書きで用件をまとめている。
それをさらに要約してお伝えする

・前首相の退陣が確実になった瞬間、自民党総裁レースは始まる
・マスコミは最初は「当人の意向にかかわらず」「総裁候補の候補を」 選択肢に調査を行う。
・調査の数字は「集票力」とみなされる。数字が極端に低いものは淘汰され総裁候補が絞られていく
・立候補表明した候補を対象にして調査が行われ、特に中堅若手…選挙の顔の集票力が一番気になる議員が、数値の高い方を支持していく傾向がある。
・それに派閥の幹部や領袖が付いていく。あまりそれに逆らうと派閥が分裂するからだ


もちろん「歴史は韻を踏むが繰り返さない」との言葉もある通り、上に挙げた例と今回は具体的なディティールでは違う部分もある。

しかしだな「デンツーの陰謀」を語るよりは、さすがにみっともなくない分析だと思うよ、はてなブクマカの皆さん、ツイッタラーのみなさん。


いやアタクシもデンツーの悪口とか「責任はデンツーにある」で話を締めるの大好きですけどね。なにしろ天下の UFC に大損こかせて撤退させる悪の帝国ですから(どっちが悪いんだ、それ??)

それに、また世論調査で、設問項目などを駆使しての誘導技術、またその結果のどこにフォーカスするかによって報道の印象を変える仕組み、これはたしかにある。
てか、そのへんのことは興味あって、きのうきょうのおあにいさんより実例やノウハウをこのブログで紹介してもきましたがな。
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………されど…
「はる(三春充希)」さんのリプ欄を毎回にぎわせてる人達じゃないんだしさ。


世論調査が情報操作であるとか、捏造された結果だというような主張は、政治的立場を問わず、与党支持者から野党支持者まで昔から見られました。これまでそうした主張に対しては、世論調査の整合性を検証し、一定の範囲で妥当な結果が得られていることを説明してきました。

 それにはある程度の成果もありましたが、世論調査をツイートすると、調査の実施そのものを非難するリプライがやってくる状況は依然として大変……
note.com

刃牙道なみに「ムサシ」を引き合いに出す人達じゃないんだしさ。
これは、菅氏がトップになった時だけじゃねーーんだよ。その前の段階で石破茂氏がトップだった時も、あとは沖縄県選挙でも東京都知事選挙でも、新潟県選挙でも・・・・どこにでも、どっちの支持層不支持層にも表れる。



そのへんは、すこしは啓蒙されてくださいな、と要望し、終わらせていただきます。

(了)