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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

世論調査結果が、各社によって差が出ることについての資料集

きのう、「自称・他称問題」をまとめた時、「ああ、このブログに細かい話題を蓄積しておいて良かったな」と痛感したものだった。ああいうテーマに興味を持って、しかも10年(なんです)蓄積した人は、この広いネット上でもそうそうはいなかったらしい。

これから語るテーマも、やはり当ブログでは考察の質はともかく、長期間追い続けていたという自負は少々ある。
世論調査に関するトピック、小ネタ…これはけっこう新書レベルでの解説書も多いのでそっちにも譲れるところは譲るが。


今回「安倍晋三改造内閣の支持率」で、新聞社に差がはっきり出ていたので、自社での解説も含めていくつか論考がある。


各社世論調査:内閣支持、選択肢で差 読売、日経は上昇
毎日新聞 2014年09月05日 21時42分

 内閣改造を巡り報道各社が3、4日に実施した世論調査で、支持率の数値や前回調査からの変動に差が出た。専門家は選択肢など調査方法の違いが影響した可能性があるとみている。


『「支持」「不支持」のほか「関心がない」が選択肢に入るか』

各社世論調査:内閣支持、選択肢で差 読売、日経は上昇
http://mainichi.jp/select/news/20140906k0000m010082000c.html
 毎日新聞の調査では支持率が47%で横ばいだったのに対し、読売新聞の調査では支持率が64%となり13ポイント増、日経新聞は支持率が60%で11ポイント増だった。共同通信も支持率が54.9%で、5.1ポイント上がった。

 毎日新聞の調査では選択肢に読売、日経、共同などにはない「関心がない」がある。毎日の調査で支持率の数字が他社と比較して低い傾向があるのは「関心がない」(今回調査は18%)があることが理由だ。

『「重ね聞き」があるかどうか』

実は毎日新聞の紙面には、ネットには無い埼玉大の松本正生・社会調査研究センター長の寄稿がある。


こちらのクリックでも読めます↓
http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/g/gryphon/20140907/20140907143025_original.jpg

ここに書いてあるとおりで「決めかねているような人たちを、『敢えて言えばどちらですか』と聞くことの有無」によって数字が変化している、と分析している。

『「安倍政権を支持しますか」か「内閣改造がありました。安倍政権を支持しますか」か』

これが今回のメインかな。

安倍改造内閣の支持率の傾向が読売・日経と毎日で違う理由 菅原琢政治学者)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140905-00000018-wordleaf-pol
内閣支持率の傾向が各社で分かれたのはなぜだろうか? ――おそらくその答えは、質問文の改造、である。

(略)…共同通信…を見ると、今回の支持率調査の質問文は「安倍晋三首相は内閣を改造しました。あなたは、この安倍内閣を支持しますか、支持しませんか。」となっている。当然、改造前の8月の調査では「安倍晋三首相は内閣を改造しました」という文は挿入されていないだろう。

 継続的に調査し、その増減傾向を見る目的があるとすれば、このように質問文を変えるのは好ましくない。この共同通信の例では、純粋に安倍内閣を支持するかどうかだけでなく、内閣改造を支持するかどうかを聞いているように聞こえる。あるいは改造という言葉に惹かれて「支持」と回答する回答者もいるだろう。この結果、内閣支持率は上がることになる。

 他紙の質問文についてはまだ公開されておらず、あるいは公開されたとしても正確でない可能性があり、今回の件について現時点で断定することは難しい。しかし過去の例では、質問文を「改造」した調査では高くなり、質問文を「改造」しなかった調査では大きく変化しないという傾向があることは明らかである。拙著『世論の曲解』(※6)のコラムでは、福田改造内閣の際の結果について取り上げているので、ご関心のある方は参照していただければと思う。

世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書)

世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書)

「世論の曲解」はもちろん持っているが、もちろん今どこにあるかが分からない(笑)。いつものことだ。世論調査を解説する新書の良書数冊は、常に手元においておきたいものだが。

菅原氏は、こう予言している。

質問文の改造によって数字が動くことは、単に調査のやり方として問題があるだけでない。質問文改造効果を無視してこの数字の上昇を捉え、記事を書けば、世論に関する認識を誤ることになる。質問文改造効果で数字が上がっただけのものを、「支持率回復」「安倍首相にとって追い風」としてしまう。さらに悪いことに、次回調査の際には急激な数字の低下の前に新たな(間違った)説明を加えなければならなくなる。したがって、内閣支持率の質問文を改造するのは、メディアにとっても決して良いことではない

つまり来月の世論調査では、「内閣改造をしましたが」を質問文に入れたメディアでは、支持率が下がるであろう、と。

【追記】その後、朝日の結果や日経の質問文など判明。この仮説はやや揺らぐ?

SUGAWARA, Taku ‏@sugawarataku
https://twitter.com/sugawarataku/status/508676296721723392
朝日は共同とほぼ同じ5ポイント上昇か。誤差もあるが、この間の報道や他社の調査によるアナウンスの影響もあるのだろうか。いずれにしろ10ポイントを超えるような動きにはならなかった。
 
SUGAWARA, Taku ‏@sugawarataku
https://twitter.com/sugawarataku/status/508677003101216768
日経リサーチの結果表が更新されていた。これを見ると、質問文は変えなかったということになる。逆に不思議な気がする。
http://www.nikkei-r.co.jp/phone/results/2014-08.html
http://www.nikkei-r.co.jp/phone/results/2014-09.html

余談 「読売が嫌いな人、朝日が嫌いな人はその新聞社の調査を拒否する。だから回答者は、新聞論調の賛同者の割合が増える」との説は、菅原琢氏は否定。松本正生氏は「あるだろう」論者。


やや長い、上のタイトルの話題は、自分は以前、これを最大の理由に挙げていたところ、菅原氏が「それは俗説である」とのデータと論考を発表し、それで納得したので転向したから特に印象が深いねん。
なんどか記事にした。

「新聞世論調査はその新聞論調を嫌う人の協力拒否で各紙バラつく」説を、菅原琢氏が否定 -http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100924/p4

そこから経由で、氏のブログ記事

内閣支持率が新聞ごとに違うのは、新聞の論調によって回答拒否(あるいは迎合回答)が発生するからだ、という説について
http://blog.livedoor.jp/sgt/archives/51783467.html

ただし、2014年9月6日の段階で、やはり専門家の松本正生氏が「そういうことはあるだろう」と言っているのだから、「その新聞論調への批判者による回答拒否が、新聞の世論調査の数字の差を生む」という説は、やはり捨てるわけにはいかないようだ。
「専門家によって見解が分かれる」とすべきか。


ただ、新聞に寄せたひとことと、上のような詳しい分析記事を同一レベルとするのもむつかしいか。

朝日新聞は5月の「集団的自衛権世論調査の時、記事にしていた。

集団的自衛権世論調査、各社で違い 選択肢の差、賛否に影響 - 朝日新聞デジタル http://t.asahi.com/epv4

というかこの記事、面白かったから当時記事にして紹介したよ!!
そしたらだいぶブクマがついてたよ!!!忘れてた。
ことほどさように、私は世論調査(の精度)についてのアレコレを、ずっと追っているのです。時々は世論調査の内容自体なんてどうでもいいくらいに(笑)。

「選択肢を賛成2つ、反対1つにすれば、前者が増える」「中間の選択肢を用意する」…世論調査に関するこの記事がぶっちゃけすぎ(朝日新聞) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140518/p3

そのブクマ
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/gryphon/20140518/p3

ほか、昔書いた関連コラムの一部

世論調査徒然草(14日の民主党代表選挙を前に) -http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100913/p4
 
統計や世論調査のトリックや本当の意味、政治的影響などを解説する面白本 -http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100906/p1

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)

とか。

その後の追加

「新聞社の論調が数字に影響?」「携帯電話の未調査は結果を歪める?」―政治学者・菅原琢氏が、世論調査への問いに答える - Togetterまとめ https://togetter.com/li/876385
 
世論調査の対象に「携帯電話」が加わって・・・体験談や変化に関するまとめ - Togetterまとめ https://togetter.com/li/1076207

そしていしいひさいち漫画の一場面を紹介する

「選択肢のつくりかた次第で結果が変わる」「聞かれたほうは日ごろから深く考えているわけではない」などの、おれがくだくだ書いてきた問題を、たった2コマで表現するいしいひさいち(笑)

※自分はこの話を、双葉社版の「がんばれ!タブチくん」2巻から引っ張ってきたのだが…今はいしいひさいち作品はほぼ文庫などに「全集」的に収まっているとはいえ、テーマごとの再編集なども進んでいる。今、何を読めば見られるかはちょっとわからない。