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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

お魚を論ず。ウナギとサンマとイワシと刺身

この話は後回しにしようと思っていたのだが、最新のビッグコミック築地魚河岸三代目」がこのテーマを取り上げていたので、合わせて書かざるを得なくなった。


築地魚河岸三代目 (15) (ビッグコミックス)

築地魚河岸三代目 (15) (ビッグコミックス)

その前に、この漫画について説明しておくと、元サラリーマンにして娘婿という立場で魚河岸に関わるようになった主人公が、周囲のサポートを受けながら情熱と純粋に「魚(を食べるの)が好き!」という思いで勉強を重ね、多くのアイデアで店と業界を活性化させる・・・という話。
切り身にすると「アジ」とか「タイ」とか大まかに分類されて消費者には伝わらない、細かい種類の差や珍しい料理法、本当の旬などを知ることができて、薀蓄漫画としては極めて有用だ。

実は、にわかちもご贔屓だそうだモナ( ´∀`)。


美味しんぼ」が「自然の材料だから美味しい」みたいに、ある意味計測不能なご神体でオチをつけることに頼りすぎなのに対し、これは「魚河岸」の立場から、より加工や養殖、冷凍保存の意義についても目配りしているところもいいと思う。


で、今号はというと、中途半端にエコをかじった感のあるリポーターが「漁業者の乱獲のせいで、イワシが激減してしまいました!!」と魚河岸で非難。
しかし三代目が集めた古老の仲買たちは「戦後の50年代、60年代にもマイワシが激減して高級料亭でしか卸せなかったなあ。でも70年代にまた激増したんだっけ」と意外な事実を回想する。その理由は・・・・・・・・という点で解決編は次回に続く、でした。


この話のネタバレ、いやネタバレというか解決編のオチをこれから予想するので、知りたくないという人は読むのを避けてください。たぶん合ってると思う。

実はイワシの激減は、http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050824にも一言だけ書いていたのだが魚種交替によるものですよね。


http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/java/turnover.html

http://www.maipress.co.jp/menu/sanpo/4.html

小生、実はこの魚種交替が始まった90年代、港町の近くに住んでいてこれを肌で感じた・・・というと大げさですけど、ちょっとサンマが安くなってるなあ、と思ったですよ。

この本もそのころ出された。

河井智康『イワシと逢えなくなる日──5億年の結晶『魚種交替』の謎に迫る』,情報センター出版局,1988年

http://wakana.fcs.muroran-it.ac.jp/works/nishin/gyoshukotai.html

「毎日毎日,山のように水揚げされる魚を『猫またぎ』と呼ぶ。魚好きの猫もうんざりしてまたいで通るという意味である。今,日本中の猫がまたいで通るのはイワシだ。ところがこのイワシも今から約二〇年前には,一万トンもとれず,『幻の魚』とまでいわれた。銀座の“いわしや”という料理屋ではまさに高級魚扱いであった。それではその頃,海の中の魚が少なく過疎状態であったろうか。そうではない。その頃の『猫またぎ』がサンマであり,アジだっただけの話である。さらにその後,『猫またぎ』はサバに移り,イワシへとバトンタッチしたのである。ということは,またいつの日か再びイワシが『幻の魚』へと変身することを意味しよう。
 はたして『イワシと逢えなくなる日』はいつか?
 かくして,世界各国がこの『魚種交替』の謎にとりくみ始めた・・・

あ、出版元を変えて再販されている。

イワシと逢えなくなる日 (角川ソフィア文庫)

イワシと逢えなくなる日 (角川ソフィア文庫)


この話になぜかずっと興味を持っているのは、「人間が環境を破壊している(影響を与えている)」という話が多い中で「人間如きがどうしようもないほど、自然が巨大である」という珍しい例となっているのが印象深いからなんだよね。もちろん、これで人間による環境問題を矮小化するようなことはあってはいけないが。
だからこそ、この漫画でも軽薄なエコのテレビレポーター、というキャラクターが登場するのでしょう。


ま、それはどっちにせよ、これから数十年、私たちは老人になるまでイワシが少し高級魚、サンマが毎回獲れに獲れまくって安値続き・・・という時代を過ごすことになりそうです。
実は自分はサンマのほうがよっぽど好きで、実にいい時代だと嬉しい次第なのですが。

めぐる めぐるよ 時代はめぐる
 喜び哀しみ 繰り返し


さて、魚といえば、キングオブキングス、リビングレジェンドなのがうなぎです。そこで・・・・・・・
(続きます)。
続編は http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20051014#p2
    http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20051015#p6