上の
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160623/p2
で紹介した「カツシン」は吉本浩二氏の単著だ。
ただ、彼はそれまでも体験記を漫画にしていたから決して初めてではないはずだけど、「ノンフィクション漫画家」としての、彼の大ヒット作品が「ブラックジャック創作秘話」でしたね。これで完全に開眼した、といってもやっぱりいいだろう。
ブラック・ジャック創作秘話 手塚治虫の仕事場から コミック 1-5巻セット (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)
- 作者:宮崎克
- 発売日: 2014/08/08
- メディア: コミック
ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~ (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)
- 発売日: 2011/07/08
- メディア: コミック
そしてその後、吉本氏は「さんてつ」「カツシン」そして現在連載中の「寂しいのはアンタだけじゃない」とノンフィクション漫画の話題作を数々発表している。
これらは単著。
「ブラックジャック創作秘話」の原作者・宮崎氏は「松田優作物語」を、高岩ヨシヒロ氏の作画でつくっている。
宮崎氏のこういう作品では、実録漫画の中で「取材しているシーン」が描かれるのが特徴で…あっ、本宮ひろ志の「実録たかされ」が先行してたかな?
※追記。「やぶれかぶれ」がさらにその前。
まあいいや、それであってもやはり珍しいノウハウだったとは言えると思う。本宮ひろ志は「やぶれかぶれ」のノウハウを「たかされ」に再利用したのだと思う。→ 「原作者って、途中で要らなくなるものなのか?」問題をちょっと考える。 - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) https://t.co/q5p2qv0Q0o
— 早海徒雪 (@hayami_toyuki) 2016年6月22日
作画者も、「この作品だけと自負している」と。
http://www.my-woochan.com/U-story.html
気力・制作体制、最も充実していた時期に出来た漫画。
『世に数多実録漫画あれど、本当に取材をして描いているのは、この漫画だけだ。』という自負がある。
毎月2回ほどの取材をこなしながら、隔週で20P描けたのは原作者の取材力(自分も同行していたが)と、担当者の熱意、 たぐいまれなる才能を持ったアシスタント達、渡邉航(ナツメハルオ)氏 わたんかずなり氏のおかげだろう。
それぞれが個人の力を最大限に発揮したからこそ、+αの結果が得られたのだと思う。
そのスタイルを、吉本氏は完全に自家薬籠中のものにした。
そして、自分の興味があるテーマを設定し(「カツシン」を描くのは、吉本氏からの編集部への提案だった)、黒子役の編集者とともに単独で取材、構想、構成し執筆する。だから原作者は必要ない。
何も間違っているところも、道に外れたところはないのだが……
やはり以前タッグを組んだ原作者の内心では、複雑なものがあるのではないか。
魚の知識も得られて大変楽しい漫画だった「築地魚河岸三代目」(映画は失敗)は、途中で原作者がかわったんだっけ。築地原作者何代目?
自分の連載作品の映画化直前に首をすげ替えられた話 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/462210
鍋島雅治 @SANNDAIME29 2013-02-25 18:23:09
ボクの場合、映画化直前に突然、担当編集者さんから「これまでご苦労さん。これからは違う原作者でいくから、君はここまで」ってメールで言われたんだよね。だから編集長に、それは本当なの?どうするんですか?って聞いたら、まったく知らない。結果どうするのか返事下さいっていっても梨の礫。そうこうするうちに違う原作者さんでどんどん連載はすすむ、映画化の話はどんどんすすむ。「小学館さんとしての方向性を示して下さい」というのに、担当編集さんと、取材者周辺の方々からの懐柔のメールと、先輩で重鎮の作家さんからの懐柔(この方は懐柔するきはない)ばかりで公式見解のないまま。
しょうがないので弁護士さんを通じて内容証明で、公式見解出して下さい。って御願いをしたら、やっと編集長が飛んできて勘弁して下さい。ボクが窓口になりますから弁護士の名前では送らないで。というのでしばらくやりとりしてもやはり話しはすすまず、しょうがないので弁護士名で、小学館社長にお手紙したら、やっと通じるべき所に通じたらしくて担当重役さんがきていただいて、お互いの納得いくように何回か条件を交わし直して集結をみました。今でもパーティに呼んでいただけるし、こちらも小学館さんには遺恨はまったくない。
そういう事もおこるんだよね。弁護士って大事だよ。
その時も、作家のくせに、弁護士を雇って御世話になった版元を訴えるなんて!とか(訴えてない交渉しただけ)恩知らず!とか版元が本気で顧問弁護士立ててきたらアンタの弁護士なんか潰されるばかりか、逆に莫大な損害賠償されるよ!とかさんざん脅されてすごく怖かったけど、こういう事がまかりとおるような漫画界になってはいけない。
漫画原作者はどんなに頑張って成績残しても、編集産が首をすげ替えようとしたら問答無用でいくらでもできるんだ。って事例を作ったら、先輩原作者や、後に続く人たちに申し訳ないと思って頑張りました!
さて、実際どうなんですかね、こういうのって…
テレビドラマはシリーズで脚本家はどんどん交代するし、参入するよね。
最初に、一からシリーズの企画を立ち上げた脚本家は、そういう時に別の脚本家の参加を認めたり拒否したりする権利があるのだろうか。
そもそも手が回らないから、脚本家は複数でやるのが常識のテレビドラマシリーズ(といっても1年を通じて50本ほど放映するのと、13話で終わるのとでもちがうか)と、一人でやるのが通例の漫画原作者の違いとか…一話完結と連続とか……いろいろ違うかもね。
ただ、「転職して魚河岸見習いになった若旦那が、持ち前の人徳と才能でさまざまに学び成長していく。部下は頼れる元料理人と、お調子者と…そしてライバルに…」みたいに、シリーズを作っていくときは初期に設定を固めるよね。
これが固まった上でなら、けっこう楽に他人も創作活動をできるのは「二次創作」の隆盛、シャーロキアンの贋作で分かる通りだ。
そういう設定、キャラクターの立ち上げ、創作にかかわった「創成期原作者(脚本家)」が、ずっとその作品には関わり続ける権利(筋)があるのか、あくまでも脚本家であり、発注する編集部が「ちょっとこの人の話、マンネリになってきたなー」「面白くなくなってきたなー」と思ったら、フレッシュな別の脚本家に依頼できるものなのか。
このへんは最初の「企画」が個々のストーリーの「脚本」と別の権利や報酬ならいいのだろうけど、たぶんそうじゃないだろうな。
そして「原作と言いつつ、テキトーなあらすじレベルじゃねえか!実際は俺が考えてるじゃないか!!」という思いが詰まった「MASTERキートン」騒動もある。
MASTER KEATON / 1 完全版 (ビッグコミックススペシャル)
- 作者:浦沢 直樹
- 発売日: 2011/08/30
- メディア: コミック
この場合、桜井氏は「なんかあったら俺にいえ」と、プロレス業界の「抑え役」の仕事があったから、これはちょっと特殊だが。
- 作者:原 康史
- メディア: コミック
そして「GIANT KILLING」。あれ、原作という表記が無くなったのはいつだっけ…
wikipedia:GIANT KILLING
名義変更に関する噂
2009年に発売された単行本10巻から綱本のクレジットが原作から原案・取材協力になった。この件の具体的なアナウンスがなかったため、ファンの間では「内容や方針をめぐって編集者と揉めたため、原作を降りた」「作画のツジトモと揉めた」と名義変更に関するさまざまな噂がささやかれている[11]。
名義変更後、綱本はサッカー以外の原作が目立ち、2013年12月に過激なツイートを連発したことも、憶測や噂に拍車をかけている[11]。
人気絶好調の『GIANT KILLING』だが…今なお憶測を呼ぶ“お騒がせ”原案者の名義変更 http://otapol.jp/2014/01/post-472.html
ふむう……。
・創設期の原作者はずっと関わり続ける権利があるか、状況に応じた交代もありか?
・連載開始時にキャラや設定を固めたことは、個々のエピソードの脚本を書く書かないとは別の権利なのか?
・原作付きで描いた漫画のノウハウやスタイルを自分のものとした漫画家が、今度は同じようなテーマでオリジナル作品や、別の原作者の作品をかくことは?
と並べてみると、最後のは間違いなくOKというか、当然だよな(笑)
でもつのだじろうの「ゴッドハンド」はセーフじゃなかった!!!(物理的に)
つのだじろうの「ゴッドハンド 」 4 (第9話〜第10話) http://blogs.masoyama.net/?eid=38
カラワジ・ イキツ・キマト ワヒオサ・ハノク キヨウ・ミツオ・ レシモオイ…… 呪われよ!
カチク・ ツテバン・ダクリ ノノロイ・オウケ・ミクニク・ルクシ ミ・クタルバ…… 呪われよ!