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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

パリ五輪を機に、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の大体の意味を覚えよう。そのまま歌える訳詞(高田三九三訳)を紹介

柔道団体戦、最終的には「現・柔道の本場」フランスの二連覇となった。個々の内容(審判云々)は別に3-3から団体戦までもつれる、見ごたえがある決勝でした。

その中で、リネールと斉藤立の本戦だったかな……応援の歓声がいちすか国歌の合唱にとってかわり、最後はフルコーラスがうたわれた。試合がその歌に合わせておわるわけではないから、終わってもなんか試合が続いたのはちょっと居心地悪かったが(笑)

ただ、その歌の良しあしとは別に各国歌でそういうのに向く、向かないはあるのです。フランス国歌はなにしろ「軍歌」「行進曲」ですからね。


そして世界的にもこの国歌は歌そのものの完成度、歴史的な経緯に裏打ちされた知名度、議論を呼ぶ性質…などにおいてずば抜けてる。自分、インターネットのできる前から実は国歌マニアで、有名無名国の国歌を集めてたのだけど、ネット以前となると無名国(失礼)の国歌って、本当に調査も収集もむつかしかった!ほんとうにWIN95でネットが普及し出した時、自分は国歌の音源や歌詞を集めたサイトを作ろうかと思った。その時は「一つ一つ大使館に問い合わせるか?」とか思ったものね。


そんな時代から、「ラ・マルセイエーズ」は資料の豊富さで別格でした。


そしてもうひとつ、別格の存在があり…それが「高田三九三」という作詞家。メリーさんの羊の訳詩で歴史に名を残しているが
この人は何か「一覧づくり」が好きだったらしく……

ja.wikipedia.org
世界の国歌全集 - 一八八カ国


という本を作り、とにかくインターネット以前は、これに頼るしかなかったのだよね。
いまとなっては正確性に欠ける…というか、高田氏はあくまでも「訳詞」、そのままその曲で、日本語で歌えるような形を重視したので、そのぶんだけ彼は、正確性は気にしなかった。
だからそういう訳詞と、正確な逐語訳の両方が必要だったのだ。



そしてこの高田訳詞版「ラ・マルセイエーズ」はかなり今でも、そこかしこに痕跡が残っているはずだ。

これは実際にうたってみることで、訳詞の完成度がわかる。

ゆけ祖国の国民 時こそ至れり
正義のわれらに 旗はひるがえる 旗はひるがえる
聞かずや野に山に 敵の叫び


悪魔の如く 敵は血に飢えたり


立て国民 いざ矛となれ
進め進め 進みて
あだなす敵を 屠らん


www.youtube.com

www.youtube.com

ラ・マルセイエーズ


そのまま、歌えるところが重要。これを丸ごと覚えていれば、歌詞の大体の意味も自動的に把握することになる。
もちろん、後から正確な意味を知るとちょっと不満で、たとえば「正義の我等に 旗は翻る」って、最初の頃は自分の三色旗を誇ってるんだと思ったら「我らに向かって、敵の血塗られた旗が翻ってる!」という意味だと後で知った(笑)

ほほう、これは…同じようにそのまま歌える「訳詞」だが、原文との正確性では高田版を大きく上回っている。
これが「アップデート」というやつか…すばらしくも、ちょっとさびしく。

www.youtube.com




ま、それでも高田版の国家翻訳は、貴重な情報でしたよ当時は

あと、実はこの国歌は五番ぐらいまである。高田氏は、すべてを訳詞してる

いま手元にないけど、自分はそらで書けるよ。二番と最終五番、かいておくかね


♪2番
反逆者の群れは 何をば 望むや?
鎖の束縛は 誰がためにあるぞ?
誰がためにあるぞ?
我等はその侮辱に 耐えるべきや?
彼らに下りて 奴隷となるべきや?

立て国民(以下1番と同じ)




♪5番(だったはず)
祖国のために立ちし われらを導け
自由 自由のため 我等たたかわん
我等たたかわん

我等が旗のもとに 勝利は来たらん
敵は散りゆきて われらに輝く勝利
立て国民(以下1番と同じ)


高田氏は何か国語できたのか、英語その他からの重訳なのか…。すごいことには「イタリアファシストの歌」まで訳してたしね


立て 我が同志よ 未来にすすまん
死をものともせぬ われらが軍隊
若き理想に 勝利を目指して
国家のためには われら闘わん
若さよ 青春よ 美しき春よ
ファシズムに自由の 救いこそあれ

この「正確な訳と、歌える訳詞版の両方が必要」というのはつとに高田訳詞から影響を受けて考えていて
だからこの時に,つたない英語力を十分承知で「そのまま曲に乗せて歌える訳詞版の米国国歌」を試作、披露したのだ。

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ラ・マルセイエーズの歴史や歌詞の意味、作者の生涯などはこの一冊に充実してる。同時期の、開会式でも歌われた「サ・イラ!」や、当時の反革命歌(国民の目覚め)などについても詳しい。
いまも絶版でないことを祈るばかり



むかしは国歌も国旗もこういうレベルで知識を収集しないといかんかったわけで、大河ドラマ「いだてん」にも、ただの市井の「国旗マニア」あるいは国旗バカ一代こと吹浦忠正氏が昭和東京五輪の時には登用されて大活躍、この人が国旗の逆さ掲揚などのやらかしを何度も未然に防いだ…という部分が映像化されてたね。