そんなこんなで、上の各種記事にあるように、音も重視して、意味は敢えて大雑把にとらえる訳もあります。その最大のものが、歌の「訳詩」(訳詞)でしょう。
これもライナー・ノーツの解説のように、曲との整合性を気にしないで、あくまで正確に意味を取るというパターンと・・・さらに極端にいえばカバーといいつつ曲を借りてまったく別の情景を歌う、日本語の歌詞はまったく別物・・・というパターンがありますね。
自分は何がすきかというと・・「やや曲よりの訳詩。細かい部分はともかく、だいたいの情景は一致しているもの」が一番好きです。
んで、以下に紹介するのは、オリンピックでもよく掛かる米国国歌。
国歌の訳詩ジャンルには、不滅の金字塔を打ち立てた高田三九三氏(「メリーさんの羊」訳詩でも有名)があるし、
また、正確な訳はちょっと検索すれば
http://w01.tp1.jp/~a971174342/
http://stimaro.blog35.fc2.com/blog-entry-1.html
http://www.worldfolksong.com/anthem/lyrics/usa.htm
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1211394417
など、多数出てくるのだが・・・
曲にあわせた中で、歌詞の意味をぎりぎりまで近くしてみたつもり。
「だいたいこんな情景を歌っているんだ」という知識として覚えるには、それなりに効果的だと思うので、拙訳を世に問うてみよう。
【アメリカ国歌「星条旗」訳詩版】
君よ見たか
朝焼けの空に
夕暮れの闇に
われらが誇り
戦場(いくさば)の中に
ひるがえる旗よ
かくも 雄雄しく
あの城壁に
戦火激しく
砲音(つつおと)やまず
されど わが旗
なお そこに在り
ああ 星条旗よ
いずこに たなびくや
自由の大地
勇者の故郷!!
Oh, say can you see,
by the dawn's early light
What so proudly we hailed
at the twilight's last gleaming?Whose broad stripes and bright stars,
through the perilous fight.
O'er the ramparts we watched
were so gallantly streaming?And the rockets' red glare,
the bombs bursting in air,
Gave proof through the night that
our flag was still there,Oh, say does that star-spangled
banner yet wave.
O'er the land of the free
and the home of the brave!
(イントロ)
【アメリカ国歌コソコソ話】
この作詞をした人は、米英戦争時(※独立戦争ではありません。だからこそ既に星条旗がある)に、英国軍艦に一時抑留されてしまい、なんと「自分の国の要塞への敵軍艦の砲撃を、敵側の視点から見る」経験をしたんだって!
だからこそ、「戦火激しい戦場に、なおわれらが国の旗が翻っているぞ…」という感動を体験できたのです。
なお、最近のキャンかる(キャンセルカルチャー。政治的に正しくない文化や人物を退ける運動)で判断すると、この作詞家は奴隷制のことでいろいろあるみたいで、立場が微妙に…
ja.wikipedia.org
news.yahoo.co.jp
一応、訳詩でイメージした情景を同国出身者に伝えたら「まあ間違いじゃない」と言われる水準には仕上がっていると思う。もちろん先行の正確な翻訳者のおかげであることはいうまでもない。(自分が一から訳したら、意味がさっぱりとれないところは数箇所では効かないだろう)
ラ・マルセイエーズ(フランス)や義勇軍行進曲(中国)は、高田訳の完成度がかなり高いと思われる。
しかしこうやって先行する正確訳をもとに、勝手に歌よりの訳詩をするのは楽しいものだ。
「世界軍歌全集」