<ソウルの春 見たまま 雑感>
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まず、どストレートに感想を言えばこの映画、すごく面白かった。
自分は韓流映画、 クーデター 映画 ともども、 見てると言えば見てるけど、 マニアと 言えるほど見ているかといえば どちらも 片手 レベルで、 まあ 初心者の位置はやっぱり脱してないな。
ただ それであっても、面白いと 手放しの評価をしたい。
… とはいえ うっかり 手放して評価しまうとまずいのは、この面白さ というのは 史実上の「 全斗煥クーデター」 が一進一退、
最後まで ドキドキハラハラの「ルーズベルトゲーム」 だったからで、それに伴う犠牲と社会の混乱を 考えると 面白いというのも 少々 憚られるのも事実だ。
しかし、それもまた全ての軍記物語 に言えることなのでそのジレンマを はじめに 認めつつ、 心の中で 棚上げして 論評 しよう。
いや 論評というほど体系立てては 語らない。
タイトル通り 思ったことをそのまま見たまま 雑感で。
※あと、韓国映画の近代史物は名誉棄損対策もありちょっとだけ名前を変えるのがデフォルトらしいんだが、以下の感想では自分が知ってる名前は実名、ほかは役名でごっちゃにします、すまん
・ 韓国 近現代史は最近のヒット 映画を並べることで、 ある程度の流れがわかるという指摘はたくさんあって前の記事でも紹介済みだけど、今回の映画は自分が見た「 大統領有故」という作品がダイレクトに前史 となってるな。
今配信とかで見られるかな
しらべたらアマゾンプライム300円、
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B8TS5BXS
U-NEXT配信無料だった
https://www-video-lp.unext.jp/title/SID0092132
・で、 この 朴正煕大統領暗殺事件の捜査を担当する役割に 全斗煥はなったわけだが、それがある意味で 特殊かつ 強大な権限を臨時に彼に与えることになり、 野心が膨れ上がる。
・一方で へー、と言うか ちょっと気になったことがあった。 多分 翻訳 字幕の人もかなり最新の注意を払っていると思うのだが、 韓国語も日本語も、というかむしろ 韓国語は日本語以上に敬語が発達していて、喋り方で親疎の別や 上下関係がわかるそうです。
全の喋り方…少なくとも 主人公 イ・テシンへの呼びかけ方は、字幕でも、画面の声のニュアンス的にもかなり丁寧なものだった。これは全が、比較的紳士的な振る舞いをする大物なのか、イ・テシンは全も一目おく実力者ということなのか、それとも両者が「よそよそしい関係」というだけなのか、このへんはよくわからんかった(たぶん3番目のニュアンスかと思うが)
・その一方で、これもあれっと思ったのは、史実では全斗煥のあとの大統領になった盧泰愚、彼は全の「忠実な部下、手下」であり、だから大統領を後継できたのかと思ったのだけど、映画の会話を見る限り「 俺 お前」の同期?の 親友、って感じだったのね。なんか曖昧なイメージが修正された。
・ただ全斗煥、クーデターの緊迫した場面で、たとえばうるさ型の先輩も仲間にいるからそれを立てたり、逆に「間抜けな臆病ものばかりが上にいる」と威圧したり、重要な命令を出す部下を親しげに抱きしめるなど、千変万化の顔を見せる所も見どころだ。
・あ、そうだ!これに先立つ連続ドラマ「第五共和国」があるのは周知の事実だけど、あそこでネットジャーゴン的に使われて自分も目にしていた「戦車でお前らの 首 を吹っ飛ばしてやる」 というセリフ、 悪役の暴言 じゃなくて、 今回 主人公となった、まあ”正義”側(クーデター 反対側)の台詞だったんだよ!!!!
いや、 見ないとわかんないじゃん!あのドラマの役者と、今回の映画の主人公の顔つき全く違うじゃん! 原哲夫が同一人物のキャラを作品ごとに違う造形にするのよりひどいよ!(笑)
いまXでも広めておいた(広まらないけど)【役立ちミニ情報】伝説の韓国ドラマ「第五共和国」からネットジャーゴンになってるこの画像、実は悪者でなく、クーデターから民主政治を守ろうとして最後まで抵抗する首都防衛の責任者、ええもんだったんです。…というか公開中の映画「ソウルの春」の主人公とモデルは同一人物です!顔以外同一人物! pic.twitter.com/iG5DCobDWe
— Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) (@gryphonjapan) September 8, 2024
・どこだったか忘れたけど、誰かのやり取りの中で、段ボール箱にカットが切り替わる場面があったけど、あれってその商品名か、書いてあった文字に意味があるんじゃないかな?韓国の観客だと説明不要なのかな?ちょっと気になったのでまさにメモだけしておく
・クーデター ものの宿命としてどっちも同じ 軍服 だから、どっちがどっちがわかる 途中でよくわかんなくなる部分もある。バカ客用に試験的に、「クーデター側」「鎮圧側」とか赤青のテロップとかあったら 便利なのにな、とか思った(笑) もちろん 途中で 裏切り者が出るからそういうのは テロップの色が途中で変わる(笑)
・ これも クーデター ものの特徴だが、だいたい 首都などの狭い範囲で、 しかも おなじみの地名で話が展開される…… これ 地図があると理解が進むんだよなー。 もちろん 映画の中で地図が出すというのも ちょいとダサいから…配信などのおまけ 機能ではそういうのが映るというのもありかなとか。ちなみに パンフに 地図があるかと思ったらなかった。
・クーデターというのは、 当然 通常の指揮命令系統をぶち壊して行われるものだけど、同時にどこかで法的な正当性 、いや正統性というものを持つことが圧倒的な強みになる。
・指揮命令系統的に、 俺はどこの命令に従うべきなんだ?というの早押しクイズ、 早指し将棋のように、 瞬間的に決めなければいけない。
・そういえば韓国軍は米軍の影響下のもとにも造られたから「海兵隊」がいて、彼らが大統領を警護する仕組みっぽいね?陸軍じゃないから、おそらくクーデターに対峙しやすかったのだろうか。韓国の海兵隊…どんな組織なのかね。案外、米国流の独立したものではないのか?(未確認)
・クーデターに従った将官たち、 鎮圧側に立ち続けた 将官たち、歴史的には(この映画的には)正義/悪に分かれたわけだが… それぞれ バックグラウンド、 思想的な背景も そちらに一致していた可能性もある一方で、 ごく真面目な軍人として「 私が従うべきなのはAです」「私はBの 指揮命令系統に入るべきだと思います」と(かなりとっさに)判断し、 結果的にそのA,Bがどっち側なのかに左右される…という面もあったんじゃなかろうかね。
琴となり 下駄となるのも桐の運。
・コミュニケーション手段が「その「部屋」にある有線電話(個人の携帯電話なんかなかった)」しかなかった時代也の制約も興味深い。
・全斗煥が、まさにクーデター直前も直前に、拉致目標にしていた参謀総長に呼ばれて「ヤバイ、バレたか?…でもワンチャンある、一か八か!」と徒手空拳で参謀総長室に呼ばれたが、それは「(噂になっているように)君を左遷するが、理解してくれ」という根回しで、首脳部が全然気づいてないことを知って内心で快哉、しかも「夜に、報告があるのでご自宅に部下を向かわせますので」とスムーズな侵入のきっかけまで作れてしまう場面とかも、成功と失敗の紙一重さを描き印象的だった。
・そういう点でクライマックスは、結局主人公を飛び越えた国防委員長が・・・・・(ネタバレ自粛)なために・・・となるんだが、そのとき国防委員長が「お前を・・・・(自粛)!」といったことに・・・・が・・・・のは、「間違っていた」と言えるのか?
この辺はぶっちゃけ 銀河英雄伝説 でも クライマックスで描かれたわけだ。
・ ただ国防委員長が完全に一時期 所在不明となり、 どこにいたかといえば 在韓米軍のところに身を寄せていた(米軍から、うちで面倒を見切れないからと 追っ払われる)話も 、映画では国防委員長の保身、 臆病さという風な 書かれ方をしてたけど、結果的にはクーデター 軍に正統性を与えることを かなりの時間にわたって遅延させたわけで、 こうやって見ると本当に、クーデター においては 擬似的でも「指揮系統の正統性」みたいなものが大きな意味を持つ。 野蛮人と野蛮人だったらいきなり殴り合って「 俺の方が強い ウホ」で済むが、「軍」はやはり法的な何かを求める怪物なのだ。
・実際、同胞相撃つ クーデターだから「撃つのはしばし待て! おれが何とか説得してみる!」という立場に立つのは「ウ~~ヌ、ダラ幹め」(※プロレススーパースター列伝調)、とか「このオデン上官(※プロレス地獄変調)め!」とも言い切れず、成功さえすれば救国の英雄、過激な鎮圧者は「あいつも正義漢なんだけどねー、視野が狭かったよね」と、道化の脇役となってたかもなのだ。ただ「俺が説得する!→だまされた」じゃ、それ以前の問題なわけで……
・こうやって見ると、韓国の数回のクーデターと比べて、その先祖?である旧軍のクーデターのグダグダさと、結局、結果を得てなさっぷりはすごいな。
まあ今回の映画を見てると、クーデターとはまさに、「はじめの一歩」の青木勝のようにぐぐだぐだ…「泥仕合」がデフォルトであって、その試合で泥水をとことんまで飲み干す覚悟がある方が勝利するのだろう。
・空挺旅団が橋を引き返すか 、 宿所に戻って、そこからまた戻るか…なんて、確かに生きるか死ぬかの息詰まる駆引きの結果なんだけど、そこに所属する 1 兵士にしてみたら、 寒い 12月の夜にとんでもない コントをやらされてるようなもんなのだし……
・しかし、 クーデターの先輩 たるナポレオンが 出世の階段を上る きっかけだった「ロディ橋」のように、やっぱり橋をどちらが把握するかが 戦闘の勝敗を左右するんだな。
・ロシア ウクライナ 戦争でも、橋の確保をめぐる 攻防は凄まじいものだったから。
・一方で だからあの橋を爆破しろ! なんて 命令は精神的にも物理的にも そう簡単に出せるもんじゃないんだよな。 実際 今の 車が往復できるレベルの鉄骨の橋って、どれだけの兵器を使うと 完全破壊できるんだろう?
・またさらにその一方で「○○橋は 民衆の車が大渋滞して通れません!」 という展開もあったけど、 民間車両が500台とか600台とか、ずらっと並んだ 渋滞状態って、それだけで戦車や 装甲車も通れない ナチュラルなバリケードになりえるのかね?
・あと普通に治安部隊などが建物や橋の入り口に展開するバリケードって、どのぐらいの侵入 抑止効果があるんだろうか… この辺を専門家が解説してくれたら興味深いものになると思いました。
とりあえず 思いつくままの雑談、 これにて
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