INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

【メモ】世界初の軍歌はフス戦争時の「汝ら神の戦士」…でいいのかな?(「乙女戦争」シリーズ完結)



ところで…今現在ネットで公開されているこの回でも、フス派「我らは神の戦士」とうたっている。本編「乙女戦争」でも、第一巻から何度も登場した。

f:id:gryphon:20210425024206j:plain
火を継ぐ者たち フス派の軍歌


comic-action.com


これはスメタナ「わが祖国」にも引用された歌なんだそうだ。

第1曲:ヴィシェフラド「高い城」
 吟遊詩人のハープで始まり、詩人が古の王国の栄枯盛衰を歌うというもの。
第2曲:ヴルタヴァ「モルダウ
 この曲は、ヴルタヴァ川の流れを描写しています。
第3曲:シャールカ
 シャールカとは、プラハの北東にある谷の名であり、チェコの伝説に登場する勇女の名だそうです。
第4曲:ボヘミアの森と草原から
 チェコの田舎の美しさを描写しており、後半は、国民的舞踊でもあるポルカが盛大に続けられます。
第5曲:ターボル
 この曲と次の「ブラニーク」は、15世紀のフス戦争におけるフス派信徒たちの英雄的な戦いを讃えたもので、ターボルとは、南ボヘミア州の古い町で、フス派の重要な拠点であったそうです。ボヘミアにおける宗教改革の先駆者ヤン・フスは、堕落した教会を烈しく非難して破門され、コンスタンツ公会議の決定で焚刑に処せられますが、その信奉者たちが、フス戦争を起こします。
第6曲:ブラニーク
 ブラニークは中央ボヘミア州にある山で、フス派の戦士たちが眠っており、また讃美歌に歌われる聖ヴァーツラフの率いる戦士が眠るという伝説もあります。「ターボル」にも使われたフス教徒の讃美歌「汝ら神の戦士」が高らかに響き連作の最後を飾ります。
www3.kcn.ne.jp

www.youtube.com



そもそも、この時代の「歌」が曲調も含め残っているというのも大したものではあるのだが、考えてみればこれが世界の「軍歌」のはじめてなんじゃないかしらね。

これも「乙女戦争」からの知識だが、フス戦争のフス派を率いたヤン・ジシュカは銃やワゴンブルクのほか「軍律」を徹底させた軍律の父でもあったそうです。
あの当時、通信も発達してないから、そうそう手足のように軍隊を自由自在に指揮すること自体がむつかしい。鎌倉武士から西洋騎士からヴァイキングまで、個々の勇士が”名誉”をかけて勇敢に、そしててんでばらばらに敵と対峙する…のを認める方が、結果的に効率が良かったらしい。
(しかし三国志やローマ軍はそうとも思えないので、進化してるのか退化してるのか……)

しかし宗教で結束し、一方で「騎士」と対峙する農民上がりの軍であるフス派は、一糸乱れぬ統率をも武器にして、その名誉をかけて突撃する「個」の騎士たちを圧倒したと。

おそらく、その結束の原因でもあり、結果でもあるのが、フス派のこういう歌だったのではないかな。

そして、そういう「軍歌」としてはかなり古い方(最古)なんじゃないかなあ、と。


もちろん、英雄をたたえる詩自体ははるか人類史の黎明と共に登場した。
ハンムラビ王が現代によみがえる、という設定の漫画「異法人」より

「私はマルドゥク神の
戦意を満足させる王
彼の敵の手足を萎えさせる王
敵意あるものを追放し
悪をひきちぎり
恐怖を吹き込む者は
ひとりも残さない」

ただ、戦場で歌うとなるとね。





その後も戦場では、兵士たちの行軍や行進で歩調を合わせるために「軍楽」が増え、正規の部隊となった。そしてトルコの軍楽隊の音楽は、その敵たる西洋キリスト教国にもすごく強い印象を与え、さまざまなモチーフとなった。
正式な軍楽隊は、やはりトルコを元祖とするらしい
ja.wikipedia.org

そして日本でも戊辰戦争の時に、西洋からの概念を輸入してついに宣伝(プロパガンダ)を兼ねた軍歌「宮さん宮さん」が完成した。


www.youtube.com



火を継ぐ者あり、歌を継ぐ者あり。
(了)

追記 なんと作者さんからリプいただく。「1872 年に、この聖歌集が発見された」「歌詞が途中から『軍規』そのものになっていく」