月刊アクション6月号は4月24日発売!欧州歴史戦記「乙女戦争」ついに完結です!外伝II「火を継ぐ者たち」(大西巷一)10話掲載。感動のフィナーレを見届けて下さい。確実に泣けます……!https://t.co/IsSyFm9Vne pic.twitter.com/lFwqBAhOFC
— 月刊アクション編集部 (@gekkanaction) 2021年4月23日
月刊アクション創刊号から続いた『乙女戦争』シリーズもこれで完結です。長い間ありがとうございました🙇
— 大西巷一🏠『乙女戦争外伝Ⅱ 火を継ぐ者たち』下巻7/12発売 (@kouichi_ohnishi) April 23, 2021
突然ですがここでクイズです。
ラストシーンはボヘミアやハンガリーから遠く離れた場所になりますが、それはどこでしょう?
①日本 ②中国 ③インド ④ペルー https://t.co/jGXEJWVfRg pic.twitter.com/88LmzOwad1
ところで…今現在ネットで公開されているこの回でも、フス派「我らは神の戦士」とうたっている。本編「乙女戦争」でも、第一巻から何度も登場した。

これはスメタナ「わが祖国」にも引用された歌なんだそうだ。
フス教徒のコラール「汝ら神の戦士たち」。スメタナの「我が祖国」を始め多くの作品に引用されているチェコ音楽の定番。この旋律に萌える方は、魂がチェコ人だ。https://t.co/nvLJJcUGIr
— 日本ヤナーチェク友の会の人 (@janacekjapan) 2020年5月13日
第1曲:ヴィシェフラド「高い城」
吟遊詩人のハープで始まり、詩人が古の王国の栄枯盛衰を歌うというもの。
第2曲:ヴルタヴァ「モルダウ」
この曲は、ヴルタヴァ川の流れを描写しています。
第3曲:シャールカ
シャールカとは、プラハの北東にある谷の名であり、チェコの伝説に登場する勇女の名だそうです。
第4曲:ボヘミアの森と草原から
チェコの田舎の美しさを描写しており、後半は、国民的舞踊でもあるポルカが盛大に続けられます。
第5曲:ターボル
この曲と次の「ブラニーク」は、15世紀のフス戦争におけるフス派信徒たちの英雄的な戦いを讃えたもので、ターボルとは、南ボヘミア州の古い町で、フス派の重要な拠点であったそうです。ボヘミアにおける宗教改革の先駆者ヤン・フスは、堕落した教会を烈しく非難して破門され、コンスタンツ公会議の決定で焚刑に処せられますが、その信奉者たちが、フス戦争を起こします。
第6曲:ブラニーク
ブラニークは中央ボヘミア州にある山で、フス派の戦士たちが眠っており、また讃美歌に歌われる聖ヴァーツラフの率いる戦士が眠るという伝説もあります。「ターボル」にも使われたフス教徒の讃美歌「汝ら神の戦士」が高らかに響き連作の最後を飾ります。
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そもそも、この時代の「歌」が曲調も含め残っているというのも大したものではあるのだが、考えてみればこれが世界の「軍歌」のはじめてなんじゃないかしらね。
これも「乙女戦争」からの知識だが、フス戦争のフス派を率いたヤン・ジシュカは銃やワゴンブルクのほか「軍律」を徹底させた軍律の父でもあったそうです。
あの当時、通信も発達してないから、そうそう手足のように軍隊を自由自在に指揮すること自体がむつかしい。鎌倉武士から西洋騎士からヴァイキングまで、個々の勇士が”名誉”をかけて勇敢に、そしててんでばらばらに敵と対峙する…のを認める方が、結果的に効率が良かったらしい。
(しかし三国志やローマ軍はそうとも思えないので、進化してるのか退化してるのか……)
しかし宗教で結束し、一方で「騎士」と対峙する農民上がりの軍であるフス派は、一糸乱れぬ統率をも武器にして、その名誉をかけて突撃する「個」の騎士たちを圧倒したと。
おそらく、その結束の原因でもあり、結果でもあるのが、フス派のこういう歌だったのではないかな。
そして、そういう「軍歌」としてはかなり古い方(最古)なんじゃないかなあ、と。
もちろん、英雄をたたえる詩自体ははるか人類史の黎明と共に登場した。
ハンムラビ王が現代によみがえる、という設定の漫画「異法人」より
「私はマルドゥク神の
戦意を満足させる王
彼の敵の手足を萎えさせる王
敵意あるものを追放し
悪をひきちぎり
恐怖を吹き込む者は
ひとりも残さない」この絵の軍歌?を文字起こししておこう。
— gryphon(まとめ用RT多) (@gryphonjapan) 2013年12月19日
「私はマルドゥク神の
戦意を満足させるもの
彼の敵の手足を萎えさせる王
敵意あるものを追放し
悪をひきちぎり
恐怖を吹き込む者は
ひとりも残さない」
(週刊モーニング 漫画「異法人」より)pic.twitter.com/mmdh3Qo3uv
ただ、戦場で歌うとなるとね。
その後も戦場では、兵士たちの行軍や行進で歩調を合わせるために「軍楽」が増え、正規の部隊となった。そしてトルコの軍楽隊の音楽は、その敵たる西洋キリスト教国にもすごく強い印象を与え、さまざまなモチーフとなった。
正式な軍楽隊は、やはりトルコを元祖とするらしい
ja.wikipedia.org
そして日本でも戊辰戦争の時に、西洋からの概念を輸入してついに宣伝(プロパガンダ)を兼ねた軍歌「宮さん宮さん」が完成した。
火を継ぐ者あり、歌を継ぐ者あり。
(了)
追記 なんと作者さんからリプいただく。「1872 年に、この聖歌集が発見された」「歌詞が途中から『軍規』そのものになっていく」
レビューありがとうございます。
— 大西巷一🏠『乙女戦争外伝Ⅱ 火を継ぐ者たち』下巻7/12発売 (@kouichi_ohnishi) April 25, 2021
軍歌の歴史というのも調べると面白そうですね。兵士の戦意を高める歌というのはかなり古くからあったのではと想像しますが。 https://t.co/bfjBC9bHUR
フス派の聖歌については4巻の巻末にも少し解説しましたが、1872年に発見されたフス派の聖歌集によって歌詞や旋律が明らかになり、スメタナやドヴォルザークやヤナーチェクなどがチェコ民族の誇りを込めて楽曲に取り入れています。
— 大西巷一🏠『乙女戦争外伝Ⅱ 火を継ぐ者たち』下巻7/12発売 (@kouichi_ohnishi) 2021年4月25日
フス派の聖歌の中でも特に有名なのが『乙女戦争』作中でも何度も登場した「汝ら神の戦士」です。10巻のドマジュリツェの戦いの場面でその全歌詞を載せていますが、序盤は宗教的な内容で、途中からは戦列を離れるなとか指揮官の命令に従えとか軍規そのものの内容になってます。
— 大西巷一🏠『乙女戦争外伝Ⅱ 火を継ぐ者たち』下巻7/12発売 (@kouichi_ohnishi) 2021年4月25日
戦意高揚に加えて、軍律を宗教的戒律のように絶対的な規範として認識させる効果を狙ったのではと想像します。
— 大西巷一🏠『乙女戦争外伝Ⅱ 火を継ぐ者たち』下巻7/12発売 (@kouichi_ohnishi) 2021年4月25日
なお、『乙女戦争』作中ではガブリエラがこの歌詞を作ったことになってますが、実際はヤン・チャペクというターボル派の説教師(武将のヤン・チャペクとは同名の別人)が作詞者のようです。