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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

天龍離脱の裏にあった、鶴田との「すれ違い」。秘密だった肝炎のことが、もしわかっていたら…

なんどか語ってきた、ジャンボ鶴田本の紹介、おそらく最後に。

永遠の最強王者 ジャンボ鶴田

永遠の最強王者 ジャンボ鶴田

  • 作者:小佐野 景浩
  • 発売日: 2020/05/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
ジャンボ鶴田伝説 DVD-BOX

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  • 発売日: 2017/11/22
  • メディア: DVD

※この前の紹介記事は
m-dojo.hatenadiary.com

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若くして”怪物”の命を奪った肝炎は、天龍源一郎の全日本離脱、SWSの旗揚げにも大きく関係したという。
そんな裏話です。

……あの日は入りきれないお客さんもいたって聞いたから、レフェリーの京平が「調子はどうですか?」って控室に来た時に、「今日もガンガンいって、それこそイスでカチ食らわしてでもジャンボをやっつけてやるよ!」って言ったんだよ。
その後、京平はジャンボの控室にも調子を聞きに行って、他の言葉を伝えたらしいんだよね。で、また 他の控室に来た京平に「ジャンボはイスを使ったりとかは一切ノーだから。そんなのには付き合っていられないという感じのことを言ってましたよ。」って言われて、闘志が萎んじゃったんだよね。それに天龍同盟を解散して、今後のことを馬場さんと話した時に、馬場さんに事もなげに「また正規軍に戻ってジャンボ、天龍で組んでやればいいじゃないか」って言われたんだよ。
そんな話があったあとに横浜でジャンボに負けて......改めて考えると、「それはできないな!」と思ったね。今まで、ジャンボをやっつけろ!って一生懸命に応援してくれていた人がいるのに、あの状況で組んだとしたら絶対に、「天龍&ジャンボ」じゃなくて「ジャンボ&天龍、になるからね」というのは最近になって聞いた天龍の言葉である。

……横浜の試合前の状況は和田もよく憶えていた。 「ジャンボに『天龍さんは流血戦も辞さないぐらいに気合が入ってますよ』って言ったら ”流血戦になるようなことには付き合えないから”って言ったんだよね。あの時に「肝炎 だから、流血戦になるようなことは絶対に駄目だ」っていう言い方をしてくれればよかっ たんだけど、当時、俺はもちろん天龍さんもジャンボが肝炎のキャリアだとは知らないか ら、「源ちゃんにテイク・イット・イージーって言っといて」っていうジャンボの言葉に 天龍さんは『やってらんねぇー』ってなっちゃったんですよ。ジャンボが亡くなったあと、 天龍さんは「京平ちゃん、あの時、ジャンボがひとことでも言ってくれればよかったんだよな。(全日本を退団したのは)あれがきっかけなんだよ。って言ってましたよ」
天龍もこう打ち明ける。
「当時、すでにジャンボはB型肝炎のキャリアだったけど、それはジャンボ本人以外には馬場さんしか知らなかったんだよね。よくよく聞いたらジャンボは「流血戦になるようなことには付き合えないから」。って言ったらしいんだよね。でも京平が、「流血戦」を省いて「そういうことには付き合えない。やめてくれ」っていう言い方をしたから、俺は水をぶっかけられたような気持ちになっちゃったんだよ。たぶん、ジャンボには流血戦にエスカレートして、天龍に感染させちゃいけない。っていう気持ちがあったんだと思う。自分はそんなこと全然知らないから、そこでふたりの間に気持ちの乖離があったよ。
もしジャンボが、「源ちゃん、俺は肝炎で、いらんことしたら感染する危険性があるから」って伝えてくれれば、俺も違うプロレスのやり方があったんだけど、あの頃の全日本は、鶴田vs天龍が売りだったから、前回より内容を落としたくない。っていう俺のレスラーとしてのブライドがあった。俺とジャンボが戦えば、そこそこのアベレージになるけど、それじゃな嫌んだよね。そこに何かがないと。
それだけにジャンボの反応に失望しちゃったんだよね、だから試合終わったあとに投げやりな気持ちになって、カブキさんを誘って飲みに行って、俺はもう辞めますよ!って」


まず根本的な部分として、いやそりゃまずいでしょ、というのが「ジャンボ鶴田は、鶴龍対決の後半ぐらいからすでに、肝炎であることを自覚した上で、周囲に隠して試合をしてきた」ということである。
ブッチャーはそれをして莫大な賠償請求をされたのに……ただ思えば、全日本から流血試合がなくなっていったのが確かにこのころであり、それはクリーンファイトや透明決着を望むファンの声をジャイアント馬場が受け入れた、と言われていたけど、こういう一面もあったのだ。

そしてジャンボ鶴田としての試合の”傑作”は、鶴龍対決を上回る形で『超世代軍の巨大な壁』となった数々の試合--そこには30分時間切れや60分時間切れのタッグ戦まであったー…それが要は、肝炎と闘いつつのコンディションだったというわけだから驚く。



ただ、遡って天龍革命後半、それでも天龍は状況をしらないから「変化球、スパイスとしての椅子乱闘や流血はアリ」と思って軽く京平をメッセンジャーに”打診”したが、それを鶴田がNO。それによって、天龍のやる気が超萎えになる・・・・・・というのは、いかにもありそうな話であったと思う。もし鶴田が肝炎を率直に天龍につたえ、それを前提に全日本のメインストーリーが回っていたら、義理と人情の天龍もいろいろ動きにくかったのではないだろうか。


あとひとつ言っておきたいのは、ジャイアント馬場はたしかに「軍団抗争」をリング上でマネージメントするセンスが、本当に古いというか…むしろそういうのを忌避していた忌避していた。
Aというレスラーが、別のポジションに代わって新たな抗争を始める、いわゆるヒールターンを含めたアングルはまさに見せ所だし、全日本でも恩知らずのキラーカーンや国際血盟軍旗揚げ、グレート・カブキの反乱など、それなりにはいろいろあったけど。

でも馬場は基本的に、それをプロ野球のチーム移籍のように…上の天龍の回想のように「いままで反乱していた選手が、普通に正規軍に戻る」とか「決起軍は決起しておらんので解散させた」とかやっちゃうんだよね。カブキもいつのまにか、正規軍に「話し合い」で戻ったりしたし。
あれはなんだったんだろうな…



しかし、「現実は正解」であり、天龍はSWS設立を含め、ご存じの通りの軌跡を描き、そして去られた全日本も三沢光晴が虎の仮面を脱ぎ捨て、ご存じの歴史を刻んだ。それが、正しかったと思うほかはない。
そして肝炎対策、衛生管理は今後のプロレス・格闘技でも重要課題として、最強の王者・ジャンボ鶴田を思い浮かべながら強化されていくべきだろう。(了)