――私は普段、怪獣プロレスの歴史を探るインタビュー(怪獣インタビュー・リンク集 - INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-)を主にしておりますが、今回は珍しく「よつばと!」主演を18年間務めている 〇〇さんにお話を聞く仕事をいただきました。不慣れなもので、変な事をお聞きすることも多いかと思いますがよろしくお願いします。
「今18年と聞いて、そんなにか!と実感しましたよ(笑)。それだけ多くの人が愛してくれるこの作品で、主役を演じられて幸運ですよね」
- 作者:あずま きよひこ
- 発売日: 2021/02/27
- メディア: コミック
ーー最初の頃の演技と、今の演技で自らここが変わったなというところはありますか?
「もちろん誰でも、最初は手探りで 役を掴むんだと思うんですよ。ただ、よつばは最初の頃は設定も小出しで、ミステリアスな雰囲気を漂わせていましたよね。演じてる私も周りの俳優さんも、実のところ分からないことが多かったんですよ。
だから最初は、素の部分も多かったような気がします。その頃は実年齢も役柄とほぼ同じだったしね(笑)」
ーーははあ、なるほど。今でも、よつばちゃんとその家族の関係性には少し語られていない部分もありますけど、おばあちゃんが登場するなど 徐々に人間関係が豊かになっていますよね。そういうことを踏まえて演技が変わった?
「一番大きいのは、『目の演技』を加えていったことですね。何と言っても、18年15巻…巻数の方を言うと少ないですね(笑) その中においては、いくら皆に親しまれている『よつば』というキャラクターであっても、徐々に成長し変化していくと思うんです。そうなんだとすると、ボキャブラリー面でもそうですが、感情表現もバリエーションが出てくる。だから目、瞳の表情を今回は敢えて、意図的にいろんなふうにチャレンジしました。特に『パイの実の目』とか『パンが空洞だったの目』は、自分でも気に入っています(笑)」
今月の『よつばと!』。風香、しまうーと一緒に、試験勉強をすることにしたよつば。風香お手製の試験に全問正解したよつばがもらったのは……?(MI) #よつばと #電撃大王 pic.twitter.com/0RMIpkVX7Y
— 月刊コミック電撃大王【公式】 (@Dengeki_Daioh) August 26, 2019――あれはすごかった(笑)。ほかにも焦りとか、驚きとか、色々出てきますね。
「このシリーズの脚本でも重視されてる部分ですけど、私の演じるよつばちゃんは、徐々に嘘が上手くなってきますよね。実際子供の発達段階において『嘘』という高度な概念を、どのように習得し、実際に使うようになるかというのは一つのメルクマールなんだそうです。よつばの嘘は、あれでも徐々に高度になっていってますよね。何かやらかした時、あまり怒られないように先回りして謝罪したりね。」
――今回の「ジュラルミンチャレンジ」とかですね。
「嘘とにせの謝罪をセットになってマスターしたから、よつばちゃんも、政治家になる資格を満たしたんじゃないかな。成長したよつばちゃんが、総理大臣になるところが最終回とかね(笑)」
ーー手厳しい話ですね(笑)一方で、石拾いの回は、海岸ロケの風景も美しく、またみんなで一緒に熱中するところがまさにご存知よつばと!という、神回でした。
今月の『よつばと!』は、前回に引き続き石拾いにやってきたよつばたち。ついに石がいっぱい落ちてる場所を発見。「ここの石はよいですか?」「よいです」理想の石は見つかるのか?(MI) #よつばと #電撃大王 pic.twitter.com/fDP9a5WO7T
— 月刊コミック電撃大王【公式】 (@Dengeki_Daioh) April 26, 2019「でもよつばと!で神回って言われるエピソードは、なぜかよつばが前面に立たず、狂言回し的な演技をすることが多いんですよね(笑)今回の石の回も、とーちゃん役さんと、えな役さんがフルに私を食いに来ましたから。
恵那役さんは、いつも「年齢の割には大人びてる」役柄を演じているから、こういう時に意外な一面として、年相応の子供らしさを出すとそれだけで場を支配しますよね。とーちゃん役さんは、全く同じトーンで演じてるのに、その同じトーンの中で「頼れる大人」と「コドモそのもの」という全く別のキャラクターをシームレスに行き来するんです。ああいう演技を目の前で見られるんだから、まったくこの「よつばと!」は役者冥利に尽きる場所です。まあ、18年やっても勉強勉強です。で、今回の話にもあったように『べんきょうだから、おかしがひつよう』になるんです(笑)」
ーー「車を1時間半運転して、石を拾いに行く。それにみんながついていく」という設定自体が、子供の世界でしか通用しない世界観ですよね。あれはもちろん、脚本に沿った石が用意してあったとかじゃないですよね?
「この作品も大概カロリーが高い撮影してますけど、そこまで凝ってはいないですよ。どの石を拾ってどんな演技をするかはもちろんフリースタイルです。『たついしとだい』を拾ってああいう演技ができたのは、自分でも満足でした……あー、でも!! でも!! それも、とーちゃんも恵那も、結局あの『へんなおっちゃん』、XXさんに持ってかれたなー!もー!!」
ーーあそこでおっちゃんを特別出演で演じたのはXXさんですよね。サプライズな2Pの出演でしたが。
「あの超大物が特別出演する、というから何の役かと思ったら…もうね、あのおっちゃんでスピンオフ作れますよ。石材店がスポンサーになってですね(笑)」
――ランドセルを買う回では、おばーちゃんが2コマほどデジタルな出演で。
今月の『よつばと!』。ランドセルを買いにきたものの、想像以上の種類の多さにどれにしたらいいのかまったくわからないとーちゃん。だがよつばはすぐに「これにする!」と決めてしまい……?(MI) #よつばと #電撃大王 pic.twitter.com/iqgOQO4FyH
— 月刊コミック電撃大王【公式】 (@Dengeki_Daioh) 2020年12月25日
「あの回もよかったですね。とーちゃん役、演技忘れて泣いてましたよ(笑)……けど、よつばもついに小学生になるんですかね?どうなの?」
ーー演じておられる方に、インタビュアーが尋ねられても(笑)。…そこでこの重要なことをお伺いしたいのです…、ご自身としては、設定が小学生になってもよつばと!を続けたいと思いますか?それとも…?
「ここは重要な話ですね…自分も真剣に考えて答えると、この18年のうちには…何度か、ここで一区切りつけるべきなのかな、と思ったこともありました。制作の在り方が特殊で、必ず毎回雑誌に載ると言った形式でないですからね。だから一回一回、この回が最終回である、という覚悟は持ちながら演じているつもりなんです。と同時に、この物語は常に、未来へ続いていくという、反対の意識も持っています。何年か前に、キャンプ場の回を演じたと思いますけど、あの時のラストシーンのせりふ『きょうは なにしてあそぶ?』なんかは、そのニュアンスをうまく込められたと自分では思っていますね」
――ファンにとっても、これまで通りの、いつも元気なよつばちゃんであり続けて欲しい、と言う意識と、少しずつ変わって、成長していくよつばちゃんを見たいという思いと、裏腹であるんじゃないかと思います
「自分も、よつばというキャラクターだけに絡め取られると、女優としての幅が狭まってしまうのではないか、という贅沢な悩みを持ったことがありましたけど……今はね、よつばと”心中”する、そんな覚悟を固めました。だからおちおち、老けてもいられないですね。よつばと!ファミリーは全員、ファンの許可がなければ老け込み禁止です(笑)…結局、だれもが子供を経験しているから、こどもを演じるというのはあんがいにごまかしが効かないものですよ。宇宙パイロットや殺し屋より難しい(笑)。だからこそ、やりがいがあると思います。そして、こどもらしさってのは、結局は『自分らしさ』なんじゃないかしら」
――深い言葉です……ファンから「よつば」として声をかけられることも多いんでしょうね。
「あのね、たい焼き食べたことないんでしょう?と差し入れをありがたくもくださることが何度あったことか(笑)たい焼きも大好きなので毎回美味しく頂いていますが。最近よつばが成長して『ほうせき』とか『ドレス』とか言い出したでしょ。この辺の差し入れもこのあとあるかなー、って(笑)」
ーーいや、「よつばと!」は世界中にファンがいますからね。産油国やダイヤ産出国ののお金持ちから、”ほうせき”が届いてもおかしくないでしょう
「あ、そうかも!!大変だ、さっきの話は無し無しで!!!」
(了)
注釈
これは、パロディの一形式 である「実はこの話、お芝居なんです」という形で物語を再構成する試みです。
このブログでは過去、こういうパターンのパロディーをコレクションした、自作を試みています。