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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

日本中に散らばる「漫画が描ける中間層」が、自分の得意分野の啓蒙を漫画でしまくって知が集積し過ぎる。こういうののアンソロジーをつくれ。

#樹木擬人化 が素敵。「クロマツ」について書いた漫画と解説がわかりやすすぎる。「泣ける」「これは、樹木擬人化が来るかもしれない…」 - Togetterまとめ
togetter.com

というtogetterから、そのメインになる冒頭の漫画をダイレクトに埋め込んでみよう。




この話自体のテーマ、クロマツ植林の是非については多くの人が語ってくれるだろうし、擬人化されたこの作品が、星新一ショートショートのような味わいがあることも言うまでもないだろう。

自分はまったく別の話からする。

それも唐突に「四角いジャングル」の引用だ(爆笑)



四角いジャングル 1

四角いジャングル 1

四角いジャングル 5

四角いジャングル 5

こんな軍事脅威論を言われていたと知ったらタイのほうが面食らうだろうが(笑)、武器なしでの戦争シミュレーション論は馬場康誌の漫画や小松左京「明日泥棒」にでも任せておいて(こっちもロマンあふれるが)、今回つなげるのは後半部「ムエタイ人口全体を考えろ、裾野に十万人もいるからこそ最強国家なのだ」という話。

日本の漫画を夜郎自大に語る必要もないし、販売数やハリウッド映画を通じた知名度、経済力を考えたら「最強漫画国家はアメリカだよ」という結論を言われても別に納得するんだけど、なんつうかやはり、例の同人誌文化、即売会文化…が花開いた日本の漫画の「裾野力」はとんでもないと思うわけです……

そしてさらに…こういう方々が職業漫画家としてではなく、個々人がさまざまな生業についたり、どこぞの学校で学問を専門的に学んでいたり、よき家庭人として子育てや日常生活をしていくなかで、その知識や見たこと聞いたことを、上のクロマツ話の様に漫画として世界中に還元してくれているのだ。

上のクロマツ擬人化漫画のひとは、プロフィールが詳しくないけど
参考文献にしれっと

茂木透・石井英美・崎尾均・吉山寛ほか(2000) 『山渓ハンディ図鑑3 樹に咲く花 離弁花1』山と渓谷社

茂木透・太田和夫・勝山輝夫・高橋秀男ほか(2000) 『山渓ハンディ図鑑4 樹に咲く花 離弁花2』山と渓谷社

茂木透・城川四郎・高橋秀男・中川重年ほか(2001) 『山渓ハンディ図鑑5 樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物山と渓谷社

辻井達一(1995) 『日本の樹木 都市化社会の生態誌』(中公新書 1238) 中公新書

辻井達一(2006) 『続・日本の樹木 山の木、里の木、都会の木』(中公新書 1834) 中公新書

伊藤隆夫・佐野雄三・安部久・内海泰弘・山口和穂(2011) 『カラー版 日本有用樹木誌』 海青社

渡辺一夫(2009) 『イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか 樹木の個性と生き残り戦略』 築地書館

渡辺一夫(2010) 『アセビは羊を中毒死させる 樹木の個性と生き残り戦略』 築地書館

樹木医学会(2014) 『樹木医学の基礎講座』 海青社

を挙げるぐらいには知識豊かな人だ。
そんな人が、こんなふうにそれを「擬人化」「漫画化」という形で啓蒙してくれる…ということのすごさ、ありがたさはなんというべきか分からない。
それが「ムエタイ10万人」、のような、「漫画が描ける人 XX万人」、の成果なのだ。


あー、この話、「レジより愛を込めて」紹介で過去に書いたのだっけ。
ほぼ上と同じ記述や喩えが出てきますが、気にしないで(笑)

曽根富美子「レジより愛をこめて」 〜レジノ星子〜
http://morning.moae.jp/lineup/413


日本の漫画の強みは、層の厚さ、予備軍の多さだと思ってきた。ムエタイ最強は、なにより層の厚さゆえなのと同じだ(分からん比喩使うな)。
そしておそるべきは、この予備軍が…あらゆる分野に社会人・学生として潜入し、バックステージを「エッセイ漫画」として発表してしまうことだ。シーボルトの日本研究は、医学を学ぶために入門してきた各地の弟子たちに、どんどんオランダ語で論文を書かせたことで圧倒的なものとなった。それとほんまにおんなじ
 
(※画像はみなもと太郎風雲児たち」より。現在流通しているリイド社のワイド版では13、14巻です。別に「幕末編」もあるので注意を)

風雲児たち 13巻 (SPコミックス)

風雲児たち 13巻 (SPコミックス)

風雲児たち 14巻 (SPコミックス)

風雲児たち 14巻 (SPコミックス)

 
そんな「予備軍」の一人が生活のためにスーパーでレジ打ちを始め…そして優れた画力と観察力でその裏側を語るとまあ面白い。いつも客として見ている「職場」なのに、知らないことばかりだ。皆が興味を持ち、皆が知らないというバランスがいい。
そして、やっぱりおばちゃんたち、働くわ!
パートとは言い条、彼らのプロフェッショナリズムと技術や創意工夫、何より責任感はすさまじい。
日本SUGEEをやるつもりもないが、諸外国のレジでもこれぐらい皆一生懸命なのでしょうか…そもそも待遇を考えれば、これだけのレジ仕事をさせるのがどうよ、てな視点からの話も聞いたことがある。
 
それでも、やっぱり彼女らの奮闘ぶりと「名人芸」は、感動させられてしまう、というのが率直なところだ。
漫画家としての意識もある作者がそこにいたからこそ、観察できたという点では「いちえふ」にも負けぬ価値がある。
原発の現場にもレジの現場にもかくのごとき漫画家がいた、というすごさ。

(追記:「レジより…」の作者は本職の漫画家では、との声をブクマでいただきまして、そうではあろうけど、いちえふ作者と同様に漫画で十分生計が立つ「頂点」の人ならやはりレジの現場にはいくことがなかったわけで、裾野の広さや、広い現場の体験や各分野の知を漫画の世界に持ち帰る、という例には含まれるし、「予備軍」と表記しようと考えました)




これはプロ漫画家のベストセラーの話だけど、最初にこの「漫画という才能を持った人の各分野への散らばり方」「そこからの報告」がすごいなぁと思ったのは「トルコで私も考えた」でした

外務大臣麻生太郎閣下にお願いする。
国際的な「漫画のノーベル賞」もよろしいが、日本の情報機関がエッセイ漫画家を組織的に養成、世界各国に送り込んでレポートを漫画で描かせる・・・というのはいかがでしょうか(笑)

トルコで私も考えた 成長編 (愛蔵版コミックス)

トルコで私も考えた 成長編 (愛蔵版コミックス)

でもマジ、こういう人が一人いるといないで大違い


要は彼女は落合信彦ばりに言えば
イスタンブールに置かれた日本の目」(※今は帰国してるけどさ)
なのである。もう少し分かりやすく言えば、
トルコに送り込んだ最大の日本スパイ
なのである…


外務省機密費が出たかどうかは知らないけど(笑)、
その後も「XXX国人と結婚した。そのパートナーを観察して感じた事」
「XX国で生活してみた」というエッセイ漫画はひきもきらず増え続け…あるいは日本に来たXX国人が直接書いた漫画、はほぼ全世界をカバーしつつある、ような気がする(笑)
ほんとにシーボルトが弟子に描かせた日本調査論文集みたいな感じだぞ…。

togetterだけでも多数あるこういう作品を、どこかでまとめておく(一覧化する)べきだと思う。

まとめるべきだも何も、togetterがそもそもまとめなんだけど、さらに保存というかインデックスというかリストというかね。

そういうものをだ、作っておく必要があるのではという気がするなりよ。
まあ、いいものは目をつけられるわけで、この樹木擬人化も、出版社から声がかかる率85%ぐらいでしょうか。

「知の還元と連鎖」

この前「京大出て専業主婦」という記事が話題になりました。元記事はあまりの反響ゆえにか、消されてしまったそうで、その名残を…検索結果から


時期を逸してしまったが、その時に、一枚だけ貼りたいと思っていたものを、いま貼ろう。
高学歴難民が主人公でもある(笑)「高杉さん家のおべんとう」より。

(追記 3巻です http://d.hatena.ne.jp/rain202/20110126/p1

上のマツ、植物擬人化の人が専門的高等教育を受けたのか、それとも独学で知識を身に着けたのかは当方知らないですが、ネットというツールを活用し、まさに「知の還元」をしてくれているということに、あらためて感謝したい話。京大卒業の主婦氏も、かならずしもネットでなくても擬人化漫画でなくても(あたりまえだ)その知を還元する場所は、どこかにあるのではないかと思う。

そしてこういう偉大な「知の巨人」に、故内山安二氏がいる。

こういった啓蒙漫画を対象とした「内山安二啓蒙漫画賞」というのでもつくるべきではないか、と真面目に考えているのです。

この記事から発展した続報。

「知の巨人」内山安二氏賛歌。そして第1回「内山安二賞」受賞作が決定!(※俺の心の中で) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160706/p1

追記 ときどき、思い出したようにこの話題(マンガが描ける中間層が各分野にいること)に感嘆し、記事にしている。

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