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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

60年安保秘話。自衛隊出動阻止の「ハト派」政治家は「警官は死ぬ、それはしょうがない」と思っていた。銀英伝のレべロ的に…

本日安保関連法制の施行日…ということも意識しつつ、整理したら出てきた古本からひとつばなしを。
田原総一朗責任編集で2006円に出た「オフレコ!」という雑誌の3号より。

オフレコ Vol.3 (AC mook)

オフレコ Vol.3 (AC mook)

ここのトップ記事が「政界最後のフィクサー 福本邦雄」。2010年に逝去した。
wikipedia:福本邦雄

この前、政界周辺に漂う、さまよう「怪しげな人脈や儲け話」について書いたけど、そのシリーズといってもいい。

『書き屋』『先生にXX円さしあげろ』…「政治家と付き合うこと」を赤裸々に書いた西部邁の本が異様に面白い。 - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160324/p1
 

こういう職業の人が語る「秘話」というのは内容的に「盛られる」のが性格や趣味を通り越して必然レベルになってしまう、ということはあるのだが…しかし、だからといってこういう証言をゼロにはできないからまた困りものである。
そういう前提を置いて、60年安保の時代に関する福本証言を紹介する。

安保の話を福本氏がし始めたのは、「池田内閣になぜ椎名悦三郎は入閣しなかったのか」みたいなちーさい話だ。
岸信介は椎名を池田内閣に推薦しなかった
・それは安保のときに岸を裏切ったからだ。
・「裏切った」とは何か?椎名と赤城宗徳防衛庁長官は、安保でデモ隊が国会を取り囲んだとき、自衛隊の治安出勤に反対した。
・その反対のときに、俺もいたんだ


おー、これでやっと小さな人脈の話から戦後史の証言になる。ちなみにこの場には、wikipedia:水野成夫という、これまた怪しげなフィクサーがいた。福本も水野も、元共産党である。戦後政治で「元共産党フィクサー伝」を作ったら膨大になりすぎる。ピストル田中こと田中清玄、そしてナベツネも……


さて、ここからキモだ。

椎名悦三郎と、赤城宗徳は集まって相談し、「自衛隊の治安出勤は見送る」という決定をし、それを岸に突き付け、岸は安保成立と引き換えに退陣した…とされる。
これは未来というカンニングペーパーを手にしてみれば、実に妥当な判断だったと思うのである。
(結果的に、警官側に多数の死者が出ることはなかった。まあ自衛隊が出たときに死者が出たか…も歴史のIfだが)


だが、、この決定を支えたのは、上の画像にあるように
『ともかく巡査は何人殺されても殺されたで済む。それは我慢してもらう』
という、とんでもなく血も涙もない決断、切り捨てによって選ばれた決断であったのだ。




で、また「なんどめだ」なアレですが、銀英伝を持ち出す。
広く言えばこれも「ジェシカ論法」なのだが、もっと適切に当てはまるのはレべロ議長をシェーンコップが論難したところだろう。

…あなたは良心的でいられる範囲では良心的な政治家らしい。だが結局のところ、あなたがた権力者はいつでも切り捨てる側に立つ!
手足を切り取るのは確かに痛いでしょう。ですが、切り捨てられた手足からみれば、結局のところどんな涙も自己陶酔に過ぎませんよ。
自分は国のために私情を殺して筋を通した、自分はなんと可哀相で、しかも立派な男なんだ、という訳ですな。
『泣いて馬謖を切る』か。ふん!自分が犠牲にならずに済むなら、いくらでもうれし涙が出ようってものでしょうな!

道原かつみ版は、ここの場面まで行ってたかな…

赤城氏は、この「自衛隊出動せず」という決断によって、今でも「ハト派政治家」という冠を付けられ、好意的に書かれることが多い。
しかし、その「ハト派」の決断をするためには(福本証言によるなら)「警官は、何人殺されてもまあしょうがない。それはなんとか我慢しよう」という非情の発想があった、ということだ(結果的な警官の犠牲の有無はこの場合、無関係である)。もちろん警官一人ひとりに人生も、夢も希望もあり、家族がいることは言うまでもない。


政治が本質的にいやなところは、そういう形の犠牲も間違いなく強いていて、手を汚さないでいることが不可能だからだ(といって、誰もやらないわけにいかないのもまた事実)。

なんかいまだに時々リツイートされるのだが

【悲報】北岡伸一氏がTBS金平茂紀氏のインタビューに答えたら容赦なさすぎて、ひいた。無編集だとこうなるのか…。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150406/p3

で紹介した、こういう議論があった。

金平キャスター
いや例えば、自衛隊員に死者が出るとか、血を流すみたいなことがあり得ますよね。少なくとも日本の戦後の歴史の中で、これまでの歴史の中で自衛隊が海外へ出かけていって血を流したり、相手を殺傷したりということはないですよね。そういう意味では質的に物凄く変わるんじゃないですか?
北岡氏
これはですね、勿論そういうことはあって欲しくないし、ないようにできるだけの努力はすべきですよ、だけども今の法制度でもありえないことはないですよ。今のPKOでもあり得る話ですね。
金平キャスター
しかし今までなかったことが、これによってなお可能性が増すという、もっと大きくなるということはありませんか?
北岡氏
それはどうでしょうか。それはそうかもしれないし、そうでないかもしれません。というのはですね、"何々の恐れ"ということを皆さんよくいうんだけれど、"恐れ"の中には、"不作為の恐れ"というものもあるんですよね。
今の例えばPKOに限って言えば、南スーダンで絶対、死者を出さないようにしようと思えば、これは引き上げるのが一番でしょう。するとそこで、結果的に、かつてのルワンダの虐殺のようなことがあっていいのかということを、日本が"不作為"によって引き起こされる。日本人の自衛隊はセーフだったけども、そこでより多くの現地の人が傷ついたり怪我したり死んだりしたということが起こっていのかと。両方考えなくちゃいけないということでしょうね。


実はこれ、銀英伝でいうと(またか)、上の話の少し前、バーミリオンでヤン艦隊が政府命令に従って停戦した時のユリアンとシェーンコップの会話のほうにひきつけると、より興味深くなるのだが、量が多くなるのでまたの機会に。




そして、ごく最近の例でいえば、「ハト派」(?)安倍晋三首相が、「タカ派の戦争狂」(?)オバマ大統領のシリア(政府軍)空爆にブレーキをかけた2013年は、安倍政府か、日本政府か、あるいは選挙を通じてそれを選んだ日本人が………「不作為の死者を出した」一例であったろう。

日米関係を大きく狂わせた「シリア空爆」問題。あの時安倍が「空爆支持」だったら? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140226/p2

あの時、何度もいうけど「暴支膺懲」ならぬ「暴シ膺懲」、「アサド政府を相手にせず」、ダマスカスに爆弾の雨を降らせて石器時代に戻せ…とは言ってないか。
ただシリア(アサド政府)への武力行使大賛成!な人たちが日本にも、内藤正典氏をはじめとしてこんなにいた。

■「シリア討つべし!」論に立つ日本知識人続々。?
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130920/p2
そこからのリンク。
同志社大大学院・内藤正典教授が語るシリア情勢〜氏が武力行使を支持する理由
http://togetter.com/li/556645
■「シリア撃つべし!」主要な内戦介入賛成論のまとめ
http://togetter.com/li/561760


もちろん、あそこでシリアでアサド政権軍を、米軍中心の空爆隊が破壊していたら、その後の犠牲が今より少なかったか、多かったか…は当然わからない。



と、こんな話を、「オフレコ!」とう古い雑誌が、蔵書の山から出てきたことをきっかけ(それが一番の理由だ(笑))に記録しておく次第。



あと、まったく余談ですけど、銀河英雄伝説のアニメが「Gyao」で現在、無料配信されているそうで。

http://gyao.yahoo.co.jp/p/01018/v00013/
銀河英雄伝説 本伝new
銀河英雄伝説 本伝
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数千年後の未来、不毛な戦いを続ける人類の間に彗星のように現れた二人の英雄を中心に銀河の歴史を描く、SF大河アニメシリーズ!