INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

書評「プレジデント・クラブ」〜合衆国の頂点に立った者たちの、複雑な連帯感と緊張感

過去にtwitterに書いたものの再構成。

gryphonjapan@gryphonjapan
Twitterで本を紹介。
「プレジデント・クラブ 元大統領だけの秘密組織」柏書房

プレジデント・クラブ―元大統領だけの秘密組織

プレジデント・クラブ―元大統領だけの秘密組織

偉大なる経験者と、未熟な最高権力者の友情、駆け引き、争い、罠。プライドを捨てて国を守るか、あくまで名誉にこだわるか―様々な思惑が渦巻くなか、党派を越えてつながる大統領たちを描くノンフィクション。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ギブス,ナンシー
「タイム」誌・副編集長。「シカゴ・トリビューン」紙の選ぶ全米10人の雑誌記者のひとりに選ばれる。アメリ同時多発テロについての特集記事で全米雑誌賞を受賞、その他にも大統領選挙など様々な事件についての記事を執筆

ダフィー,マイケル
「タイム」誌・ワシントン支局長。ホワイトハウスについての報道(1994年)と国防・国家安全保障に関する報道(2003年)でジェラルド・R・フォード賞を受賞。1998年にはハーヴァード大学ケネディスクールのジョーン・ショレンスタイン・センターより調査報道賞を受賞。米PBS「Washington Week」には15年に渡って出演している

横山/啓明
1956年生まれ。早稲田大学第一文学部演劇学科卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

退任した大統領がどんな仕事に取り組んでいるのか、相互の評価や友情、人間関係は、現職大統領とどんな関係があるのか…などなどを語った本。
注釈も含めると800Pを越える大著だ。だから自分の興味ある人物だけ、歴史でなく同時代体験として知っている人だけつまみ食いのようにして読んでもいいと思う。実際にこの本の白眉は、断片的な逸話集と、政治家たちの「レトリック集」だから。
で、クラブの本質だが、意外かやはりか、基本的に党派を越えて元大統領の繋がりは深い。


それは苦悩や決断の重みを分かち合っているとか 、国家への忠誠とかもあるんだろうけど、大統領の権威を相互にアゲると自分もアガル、という意味もが大きいと思う(笑)
でも、日本の総理大臣はそうなってないんだから(笑)、やっぱり政治文化の違いも政権交代の経験の差もあるのだろう。

「私はアイゼンハワーに「何なりと命令してほしい」と言われた。私も今、貴方に同じことを言う」(ニクソン
「大統領を評点する権利は誰にもない。この椅子に座り、決断の理由を知った者でない限り」(ケネディ
「経験者は知っている。この職務の前では個人など消し飛ぶ」(ブッシュJr)

…とまあ、かっこいい台詞が並ぶのだが、退任が迫るクリントンにカーターが挨拶した、こんな言葉も。

「これからはTVカメラも望遠レンズも気にせずゴルフができます。ただし大統領を辞めると誰もマリガン(第一打を打ち直せる、ズルつうかハンデ)を認めてくれません」

正直だな周囲も(笑)。

ルーズベルトにだいぶ貶められたフーバーからトルーマンがWW2後の復興に知恵を借りたことや、ニクソンやカーターなど評判の悪い元大統領がどう復活のため動いたかという執念の物語なども興味深いが、やはり一番面白いのはかつての政敵同士の和解。
一番象徴的な2人に多くのページが割かれる。

時々、日本のメディアに伝わることもあったかと思うとけど、実は現在、クリントン夫とブッシュ父が、歴代元大統領 の間でも群をぬいて親密なのだ。(もちろんブッシュ親子の関係は例外として。この父子の、政治スタイル自体は多いに違いながらも親密である関係も、章を割いて書かれている。「言葉では言い表せないほど愛している」とメールで伝えるシーンは、子ブッシュの選択がおそらく歴史的に大いなる過ち―イラク戦争開戦―だったことを超えて、不思議な感慨と感動を抱かせる)


この二人は1992年、選挙で直接対決している。
しかし、この表情を見たまへ。


几帳面で冷静な旧世代の父ブッシュと、陽気で無頓着なクリントンは個々の個性は対照的で、とあるコンビ映画になぞらえ「おかしな二人」と呼ばれているそうな。
この関係を通じ息子ブッシュクリントンも良好で、それは少々政治的に問題視されたりもした。
それはともかく、ブッシュ父は、クリントン本人が留守なのに事務所に乗り込み、机に足を乗せて本人に電話し「ハロー、いいオフィスじゃないか。ところで今どこだい?」とやるぐらい親密らしい(笑)。クリントンの手術にもヒラリーらと共に立ち会ったり。
その息子も加わった会話はこんなふうになる。

2004年11月、昼食の場に行く途中、話し込んで動くのが遅れた父ブッシュとクリントンを見て、当時現職だった子ブッシュは伝言を伝える。

「41代、42代大統領に伝えてほしい。43代大統領は腹ペコだ、と」。

もっとも、ブッシュ父とクリントン夫の「おかしな二人」が称賛されるのは、一方で現在の米国の”左右対決”が激しく、それゆえ稀少例、イコンとなっている…ということもあるらしい。

しかしそれでも…将来日本で菅直人鳩山由紀夫安倍晋三麻生太郎氏…各氏が一卓で談笑する日はくるだろうか?

追記 「元大統領」の話題2題

この記事の元の文章を10月末ぐらいにかいたと記憶しているが、その後、こういう話題がアメリカから伝わった。

ブッシュ元大統領:息子の前大統領側近ら「傲慢」 伝記に - 毎日新聞 http://mainichi.jp/select/news/20151106k0000e030152000c.html


 ブッシュ元米大統領(91)=【註、父ブッシュ】が、来週発売される伝記で息子の前大統領の側近らについて「傲慢」などと不満を明かしていることが分かった。5日付の米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。

 伝記は、元大統領のインタビューや日記の内容から構成。この中で、元大統領は息子の政権下でイラク戦争を主導した保守強硬派のチェイニー副大統領(当時)、ラムズフェルド国防長官(同)を辛辣(しんらつ)に批判…(略)

52%がブッシュ前大統領=【註、子ブッシュ】を好感、評価逆転 米世論調査 http://www.cnn.co.jp/usa/35065549.html @cnn_co_jpさんから


ワシントン(CNN) 米国の成人の52%がジョージ・W・ブッシュ前大統領を好感し、逆の見方は43%だったことが最新世論調査で7日までにわかった。前大統領に対する評価で「好ましい」が「好ましくない」を上回ったのは過去10年で初めて…(略)