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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

日米関係を大きく狂わせた「シリア空爆」問題。あの時安倍が「空爆支持」だったら?

第二次安倍内閣以降の日米外交を、船橋洋一ハルバースタムばりに再現できれば面白かろう、やるとしたら読売新聞か朝日新聞の政治部か…と思っていて、実際いくつか面白い記事を読んだ記憶もあるが、意外なことにTBSの記事が話題になった。

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2135660.html
シリアの市民が化学兵器に苦しむ衝撃の映像が明らかになって10日後の、去年8月31日。

 「慎重に検討した結果、アメリカはアサド政権を標的にした軍事攻撃を行う決意をしました」(オバマ大統領〔去年8月31日〕)

 オバマ大統領は、シリアへの軍事行動を行うと発表。日本にも外交ルートを通じて「空爆したら即座に支持表明して欲しい」と強い要請が来ていました。しかし、安倍総理の姿勢は慎重でした。
 「この状態では支持できないね」
(略)
 その1日半後の9月3日、オバマ大統領から安倍総理に電話がかかってきました。

 「アサド側が化学兵器を使った明確な証拠がある」(オバマ大統領)
 「化学兵器を使用した主体については、いろいろな情報があると承知している」(安倍首相)

 しかし、オバマ大統領はあきらめませんでした。2日後、アメリカ側の要請で開かれた安倍総理との直接会談で、改めて支持を求めます。会談は非常に緊迫したものになったといいます。
(略)
 「明確な証拠があると大統領自ら言っているのだから、同盟国の日本は支持表明してくれるものと信じている」(ライス大統領補佐官

 ここで、麻生副総理が割って入りました。
 「イラク戦争の例がある。明確な証拠開示が支持の条件だ」(麻生副総理)

 その後、アメリカ側は日本に対する情報開示に踏み切りました。安倍総理は…(略)「アサド政権側が化学兵器を使用した」と断定した共同声明への署名をようやく許可しました。

 「こちらが困っているのに、証拠を出さないと安倍は信じてくれなかった」

 ホワイトハウスと官邸の関係が、「亀裂」へと悪化したのはこの時期だと関係者は見ています。

この話を自分が聞いたのは、これが最初ではない。東京新聞の寄稿コラムで読んだ。
描いたのは佐藤優氏だ。

■シリア問題 米ロ合意に安倍外交が一役 〈本音のコラム〉佐藤優 
http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/b2f1e9767daf527cefb0de916c7dd95f
スイスのジュネーブで14日、米国とロシアがシリアの化学兵器を国際管理下に置く枠組みについて合意した。これで米国によるシリアに対する一方的攻撃は当面回避される。
 本件は、東西冷戦終結後の米国によるレッドライン外交の終焉を示すものだ。
(略)
 外交的には、ロシアの対米包囲網づくりが成功した。この過程で当事者がどこまで意識しているかわからないが、日本が少なからぬ役割を果たした。安倍晋三首相は、オバマ大統領から米国のシリア攻撃を支持するように要請されたが、言質を与えなかった…安倍首相の平和外交がジュネーブの合意を後押しした。
 (作家・元外務省主任分析官)

佐藤優の眼光紙背】シリア危機をめぐる安倍政権の独自外交
http://blogos.com/article/70203/
9月3日の電話会談でも安倍首相はオバマ大統領に<「国連安全保障理事会の決議を得る努力も継続してほしい」とクギも刺した。外務省はロシアが賛同しないため安保理決議に触れるのに反対したが、首相が押し切った。>(9月6日『朝日新聞デジタル』)ということなので、安倍首相にはシリア問題で独自外交を……
(略)
…外交的には、ロシアの対米包囲網作りが成功した。この過程で、日本が少なからぬ役割を果たした。安倍首相の平和外交がジュネーブ合意を後押ししたのである。問題は、日本の独自外交が戦略的に行われたのではなく、2020年五輪東京招致を目指す場当たり的対応が、結果として独自外交となったという現実だ。(2013年9月18日脱稿)

ラスプーチン氏は、「平和外交」と言った一方で「場当たり的対応」というなど、微妙に表現を変えている感もある(笑)。まあ、字数の問題があるからね……。

というか、シリア空爆に際して日本のスタンスがこういう感じであったことは、首脳会談の具体的やり取りはともかく、日々のニュースでも当時報道されていたので既出といやあ既出である。

この時、結果として空爆があったかどうかはともかく、シリアに米軍が爆弾の雨を降らせることに真っ先に同意していたらオバマへの”貸し”となり、日米関係は違っていたかもしれない。
「いよっシンちゃん、心のブラザー、話が分かるねっ!じゃあお返しにニンジャ?ジンジャだっけ?そこに行ってきなよ。イルカもぶっ殺しまくってOKさ!」となってた筈(推測)

(出典 http://www.hatosan.com/ensoku/2011/05/post-37.html )

だが、そんな国益だとか、安倍政権の安定論とは別の大きな”責任”を日本は負うことになったかもしれない。

以前、ここでも紹介した。
■「シリア討つべし!」論に立つ日本知識人続々。?
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130920/p2
そこからのリンク。

同志社大大学院・内藤正典教授が語るシリア情勢〜氏が武力行使を支持する理由
http://togetter.com/li/556645
「シリア撃つべし!」主要な内戦介入賛成論のまとめ
http://togetter.com/li/561760

日本の主なシリア武力介入賛成者
 ・内藤正典 ・中田考 ・常岡浩介 ・黒井文太郎 ・藤原帰一 ・高世仁 ・福田充
 
「介入以外にもっといい策があるというなら別だが、実際のところ、2年間に11万人という虐殺をそのまま続けさせろということにしかならない。中立は虐殺の荷担に等しい。」
 
「残忍なものは残忍なのであって、残忍な性格の政権に猶予を与えたら優しくなることなどあり得ない。アサド政権を叩く必要があるのは、残忍な攻撃性に多少の歯止めをかけるために過ぎない」
 
「外交や議論で解決できない場合、「人道的介入」の名の軍事介入が選択されます。その軍事介入が否定され、外交も破綻すれば殺戮は放置されます」


2013年の「シリア空爆、するかしないか」は、文字通り進むも地獄、退くも地獄。
空爆すれば当然、多くのシリア国民の命を奪うことにはなる。同時に空爆を見送れば…要は今の通り、だ。


こんな決断の場を極東の島国に持ってこられてもこまる、というのが本音だが、事実として日本は、日本国民は選挙による指導者の選出を通じ、シリア空爆へのブレーキをかける役割を果たした。そして、アサド政権が直接打撃を受けることを免れ「たる爆弾」でのアレッポ空爆にも、結果的にいささかの役割を果たしている。



いやなもんだね。