朝日新聞書評欄より
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013110300010.html
- 作者: 沢木耕太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/10/11
- メディア: 単行本
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との起こりは34年前。当時、人気の頂点を極めた歌手の藤圭子が28歳の若さで突如引退を表明。沢木氏はその真相を聞き出すため、ホテルニューオータニのバーで彼女にインタビューを試みる。まもなく原稿は書き上げられ、公刊の手筈(てはず)も整ったが、しかし沢木氏は直前になってこの作品を世に出さずに封印したという。
書き方はきわめて挑戦的だ。この本は沢木氏と藤圭子のカギかっこによる会話文だけが延々と続き、地の文による背景説明や情景描写が全然ない。しかしそれでいて500枚にも及ぶボリュームの原稿が……
(略)
……封印されたはずの作品がなぜ陽(ひ)の目を見ることになったのか。それはもちろん当の藤圭子が自殺したからだ。とりわけ実の娘である宇多田ヒカルの言葉が鍵となっている。藤圭子が亡くなった時、宇多田ヒカルは彼女が精神的に病んでいたこと、小さい頃からそれを見てきたことを明らかにした。その言葉に衝撃を受けた沢木氏は、自分の知る藤圭子の姿を伝えるため…
自分もなぜか、こういうインタビューがあることは知っていた。それは、沢木氏の作品のどこかに、このことが記述されていた、ということだが、氏のエッセイ・ノンフィクションの『どこに』これが書いてあったかとなるとチト失念している。
それに、そこでは匿名であったはずだ。 でも藤圭子らしい、という話も知っていて・・・…なんでかなー、と思ったら一度「噂の真相」が1999年に取り上げていたらしい。なら、読んでるはずだわ。
このことを紹介する記事も、いまやネット上にはこんなにあるわ。
藤圭子がニューヨークで待っていた作家・沢木耕太郎!引退インタビューきっかけに接近
http://www.j-cast.com/tv/2013/10/25187238.html?p=all
藤さん 作家との知られざる悲恋
http://news.livedoor.com/article/detail/7997420/
宇多田ヒカルのパパが、沢木耕太郎の「藤圭子」本に激怒しているワケ
http://www.cyzo.com/2013/11/post_15027.html
藤圭子と沢木耕太郎「宇多田ヒカルは知らない……“愛欲真実”をタブー発掘!」(1)インタビュー封印の“理由”
http://www.asagei.com/16657
沢木耕太郎の結婚て?家族は?子供は?藤圭子との過去は
http://entamesports.com/geinou/sawaki/
一寸おもしろい話があって、「噂の真相」は時々、沢木耕太郎もターゲットにしていて、「沢木耕太郎はペンネームだそうですが、なぜ本名は公開しないのか?」
「本名を公開したらペンネームの意味がないじゃない」
という、なんか面白いやりとりを覚えている。ただまあ、沢木氏の略歴はエッセイをつないでいけばある程度分かるんだけどね。長洲の門下生だったんですよタココラ。
いや、長州力じゃなくて長洲一二(マルクス経済学者から神奈川県知事になった人)の門下生ね。
その一環として、沢木―藤圭子のスキャンダルも報じたのだのかもだが…
http://eopera.cocolog-nifty.com/popsicles/2013/08/post-86e1.html
宇多田ヒカルのお父さんは西洋かぶれの"金髪パパ"宇多田照實さんではなく 全共闘世代の「噂の真相」好みの"文化人"沢木耕太郎さんであって欲しいという願望のみで 噂話を7頁にわたって延々と繰り広げています。大好きです。
この見立てはかなり合っていて、実は雑誌の休刊・解散を前に噂の真相はその編集、取材体制のバックステージもいろいろ報じられたが、たしかデスク2人のうち片方が「沢木耕太郎の心酔者」だったことが明かされた。
たしかに、取材が普通のよりかなり悪意が薄めだった気はするし(笑)、一時期は天下を取ったような昭和の歌姫、さらにはその生涯に暗い影があるようなミステリアスな女性歌手――と取材を通して互いに深い好意を抱いた、なんていうのは、それがセクシャルな関係であろうとなかろうとドラマチックすぎるな(笑)。
噂の真相以上の悪意をもってツッコめば
「島耕作かっ」
な感じ。名前に「耕」が入っているとそういう運命にあるのか(笑)
さらにいうと、噂の真相誌上で佐高信氏が沢木耕太郎”批判(ヒットーリョーダン)”をやっていたが、どれも丙丁つけがたい佐高氏のコラム(批判文)の低レベル差の中でも、佐高氏の沢木批判はトップレベルの支離滅裂と牽強付会と、自分に跳ね返るブーメランっぷり(二重基準)が展開されていた。立ち読みしていた同誌のそのコラムを見て「うわっ、何?このひっどい論理の文章書いてる人は?」とかなり強い印象で、当時はどんな人かよく知らない佐高氏のことを記憶した、いい文章だった(笑)。
で、いくらなんでもあんなにひどい文章を載せたのも、当時の「噂の真相」デスクは沢木氏の心酔者で、ひどい批判文によってマイナス×マイナスはプラス、すなわち沢木応援になるというものだったのではないかと(笑)。
だとしたら、それは佐高信氏にとってはいささかアンフェアだったなあ。
どんなふうに佐高氏の沢木氏批判がひどいかを論じるにはいささか時間が掛かるので略しておくが、文章が書籍に収録されている。
- 作者: 佐高信
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/11
- メディア: 文庫
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http://www.jade.dti.ne.jp/~aerie/sataka.html
そして実は・・・・・・彼も批判の対象ではあるが、それほどの批判ではないという柳田邦男氏を招いて対談をしたとき、沢木批判を持ち出した佐高氏を、沢木氏と同じノンフィクション作家である柳田氏がある一例を出してそれをたしなめ、対談史上まれに見るようなワンパンノックアウトを成し遂げたのである。佐高氏自身がその批判に対して、後日単行本にまとめたとき「私は答えを持ち合わせていない」と告白している(笑)。
(簡単に説明すると、佐高氏の沢木「テロルの決算」批判に対し『あんたのその理屈って、あんたが絶賛している松下竜一の「狼煙を見よ」にもあてはまるじゃん』。→この一撃でKO(笑))
- 作者: 沢木耕太郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/11/07
- メディア: 文庫
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- 作者: 松下竜一,『松下竜一その仕事』刊行委員会
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2000/08
- メディア: 単行本
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ああ、「噂の真相」から佐高信氏の話になって余談がすぎてしまった(笑)。
話をもとの「流星ひとつ」に戻すと・・・個人的には藤圭子にも宇多田ヒカルにも、あんまり興味ないなあ。両者の歌とも、手当たり次第にCDから落とした音源はHDDに入ってるけど、殆ど聞かない。
昔、高校で歴史を教えてた名物先生が
「歴史はシュメールに始まる」という箴言から
↓
「歴史は 夜つくられる」
↓
「圭子の夢は夜開く」
↓
「それは藤圭子」
というネタをずっとやっていて、成人したあと用事があってその先生を学校で表敬訪問したあと「悪い、これから授業だ」「じゃあここで」と分かれたあと、教室からほぼ同じ内容の授業が聴こえてきて・・・そして最後に「宇多田ヒカルのお母さん」とバージョンアップしていた、という思い出があるくらいだ(笑)。
それよか沢木氏は年齢のわりに作品発表ペースが速い。
だもんで、(自分は)ゼロ年代以降に出した、まだ未読の本のなかから、テーマごとに興味のある作品を読んだほうがいいような気がするな。
【メモ・沢木耕太郎がここ5年で出した、文庫化した本】
- 作者: 沢木耕太郎
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- 作者: 沢木耕太郎
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「愛」という言葉を口にできなかった二人のために (幻冬舎文庫)
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- 作者: 沢木耕太郎
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いや、ほんとに多いよ!!粗製乱造というわけでもなく、そもそも未発表原稿、未単行本原稿が1万枚を超えている、らしい。
沢木耕太郎のタイトル付けは上手い。あと、公式の生涯がドラマ化しやすい。
【沢木氏の書名について】
今回の「流星ひとつ」もたいしたものだが、上の紹介も含め、これまでの著作一覧を見るだけで「タイトル付け上手いなあ」と感嘆せずにはいられない。
http://www.amazon.co.jp/%E6%B2%A2%E6%9C%A8-%E8%80%95%E5%A4%AA%E9%83%8E/e/B001I7T15E
「一瞬の夏」
「水は囁き 月は眠る」
「紙のライオン」
「人の砂漠」
「路上の視野」
・・・・・・・・「内容が分からん」という問題を置けば、やはり上手いではないか。
しかし、「厨二病」の解説には、『沢木耕太郎の著書のタイトルみたいな感じ』というのを盛り込んでおくと、よっぽど説明が早いんじゃないだろうかな(笑)。
【沢木氏の公式的な経歴について】
自身がインタビューや本の中で書いた、ある意味自画像的な説明
・大学の卒論は、研究というよりルポまがい?のものを書き、毛色が変わったものということで長洲教授のお情け?で卒業
・大企業に入社したが、1日で「ここは自分のいるところではない」と感じ、ほんとうに即日退職に近い感じで辞める
・心配した長洲教授に「なにかしたいこと、やれることはないのか?」沢木「ルポならできるかもしれません」長洲氏「そういえばキミの論文は・・・ちょっとまってくれ、編集者を紹介する」→ルポライターデビュー
・まだ筆一本で生活できないころは、パチンコで生計を立てていた。景品を、TBSが投じだしていたノンフィクション雑誌「調査報道」に持ち込むと、沢木に目を掛けていた、これも大宅賞作家の鈴木明編集長らがそれを買ってくれた。鈴木は沢木の才能を見い出し、どんどん仕事を頼んで鍛えた。
(※このへんから前後関係は曖昧です)
・そういう仕事をほとんど一時中断し、ユーラシア大陸をバスや公共交通を乗り継いで横断する「深夜特急」の旅に出発。体験記はのちに若者のバイブルに。(この期間中、アリvsフォアマンを外国の街頭で見たというから1974年ごろか?)
・「テロルの決算」で大宅壮一ノンフィクションを受賞。
・ボクシング興行を実際に手がけ、そこでの見聞をノンフィクションにする「一瞬の夏」を執筆。
・【受賞】大宅壮一ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、講談社エッセイ賞、JTB紀行文学賞、菊池寛賞、講談社ノンフィクション賞
・三浦和義逮捕の場に居合わせる(密着ルポをしていたので)
・井上陽水、高倉健、その他多くの非文壇有名人と親しい。
・セスナ飛行機の墜落事故を経験
・世界的な謎とされたロバート・キャパの一枚の写真について、(真相とは断言しないが)有力仮説を提示。
・有名歌手との秘められた恋の話が判明(←New!!)
ドラマ化か!!!
ある種の自己劇化や、取捨選択してのかっこよさの演出(佐高氏がこれを嫌いだ、というのも、その非論理さを抜けば1/100ほどは理解できる(笑))はあるが、ノンフィクション作家の文章としてまあ、根も葉もない箇所は余りないだろう。
ま、並べてみて毒気を抜かれたこともあり、こんなところでおしまい。