INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

一晩20億円を稼ぐ”闘鶏”、されど…NHKスペシャル「パッキャオ特集」

放送されました。
NHKスペシャルでは、前も書いたけどフォアマンの再戴冠を描いた「奪還」という名作があったのだが、それは語り手に沢木耕太郎氏を得てのものだった(沢木氏が来週のNスペに出るのは皮肉だ)。
Nスペでボクシング、しかも日本における知名度という点では正直それほどでもないパッキャオを語るとなると、60分の大半を「前提条件の説明」にしなければいけないという制約がある。
個人的な希望としては、例えばまさにUFC解説のように、パンチの種類やスピードなどを数字で分析するような場面なんかがほしかったし、パッキャオのフィリピン政界進出の話も描いて欲しかったが、そのへんはまあ好みの差であろう。

そもそもNHKスペシャルではこのテーマを「取り上げる」ことこそが最大の功績なのだ。
いい機会なので、NHKスペシャルの作り方を紹介しよう

・・・日曜九時の「NHKスペシャル」はこれは全国の局でも本部でも、あらゆるセクションから、誰が企画提案しても良いということになっているんです。その提案募集が全国に対して年一回あります。応募された分厚い企画書の束から選ばれると聞きました。
(「ノンフィクション新世紀」高木徹インタビュー ※高木氏は「戦争広告代理店」「大仏破壊」の著者、番組制作者)

はげしい競争の中で、よくパッキャオ特集をできたものだ。
前の週はダイオウイカ、そして来週は沢木耕太郎、再来週は人型ロボットの特集!!!もうNスペが、俺のしもべになったような気がする(笑)。
http://www.nhk.or.jp/special/


さてマニー・パッキャオの番組は、フィリピンでの幼なじみでもあるトレーナーが自分たちを、死ぬまで殺し合いをする闘鶏に・・・彼らの地元では盛んらしい・・・たとえるシーンがある。
「ヒューマン・コックファイト」という言葉は、MMAをののしったり、規制しようとする側がよく言う蔑視の用語だ。実はこれ、ボクシング関係者がMMAに投げつける言葉でもあった(笑)。『うちは整備された「スポーツ」。お前らと一緒にすんな』、というわけだ。
だが、そのボクシングの歴史で頂点に立つパッキャオがなおも「自分のやっていることは闘鶏と同じだ」という。それは自嘲や皮肉だけでなく、たしかに一面の真実なのだろう。

山本夏彦はかつて日本で言われた「千両とっても、役者は乞食」という言葉をかつてよく紹介していた。
「錦着て布団の上の乞食かな」ともいう。

http://nitemare.jp/?p=1115
山本夏彦の『誰か「戦前」を知らないか』(1999.10.20.文春文庫)にあった一節です。

このフレーズは地方の相撲甚句にもありますね。
「もと大道の芸人、アウトローだから、人倫五常の道にはずれたことをしても許された。その差別があるために芸人は一所懸命芸にはげむ、人気者に金はいくらでもはいる〜」
山本夏彦は解説しています。

誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答 (文春新書)

誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答 (文春新書)

なかなかこの意味合いは伝わらないように見えて・・・実は多くの人が、直感でわかるたぐいのものかもしれない。

フィリピン国民が熱烈に応援するなか、彼がKO負けされるところが最後のシーンとなる。いくら英雄でも、あれだけ完敗したときにどう人気は変わるか・・・しかしミンダナオに戻ったパッキャオを迎えたのは、無敵の王者だったときと変わらぬ・・・いやそれ以上の大観衆だった。

パッキャオはこういう。

「負けたのに、こんなに多くの人が出迎えてくれるとは思わなかった。…自分が国を支えている、と思っていた。だけど、国が俺を支えてくれたんだ」 

パッキャオのトレーナーはいう。

「パッキャオは言った。負けて初めて分かることもあるって…。確かに俺たちは闘鶏の鶏と同じだ。だけど俺たちがその鶏と違うのは、負けても何度でも立ち上がるってことだ

果たして近代ボクシングの歴史が結実した生ける闘神の、再起はあるのか。

【追記】はてブではプロモーターのボブ・アラムに注目する声が多かった

自分もtwitterではちょっと触れていたけど、記事ではうっかり書き忘れてしまった。

id:FUKAMACHI
酸いも甘いも知り尽くした大プロモーターが入ったことで、格調高い男たちの物語に仕上がっていたと思う。フィリピンとメキシコの英雄を戦わせたユダヤ人興行師が「次は中国人だ」とマーケットを見据えるところなど。 2013/01/2898 clicks
1 RT
@nakaei39 にしてもボブアラムの豪邸物凄かった http://t.co/vKeufwfU
 
id:Dersu fight
英雄に熱狂する少年と札束を数える狡猾な大人、相反する人格が同居するボブ・アラムの佇まいが印象的だった

プロモーターは英雄に仕える祭司か、
英雄の上に位置する神か、
それともその敵である「魔王」か・・・