これも、今書くとタイムリーになる話だな。この画像を保存したのは…昨年の晩秋当たりだったはずだ。
その頃のビッグコミックスピリッツに載ってた「結婚するって本当ですか」の話。
非常に有益かつ、ダイレクトに話が進んでいるので、画面を多めに引用することお許しいただきたい。
紆余曲折あって…かいつまんで話すと、会社の中で転勤をしないために偽装結婚(婚約)をしていたら、本当の恋愛感情が芽生えて結婚を決めた二人……という話である。
※よく考えれば、このパターンもかなり巨大な「創作系譜論」の流れがあるよね。元は戦前ハリウッド映画にもあったそうで、あとで整理したいところ。
なんだけど、そんな経緯があったこともあって、
・本当の結婚と、「結婚のフリ」って何が違うの?
・両家を訪問する、親の許しを得る、式を挙げる……別に必要なくない?
・でもまあ、人間社会でずーっと続いている以上、そういうものなのかしら?
・動物も家族をつくるけど…「結婚」はしないよねえ?
などと、友人知人も巻き込んで、うっかり法哲学の沼に足を踏み入れたわけです。
それがこんな展開です。
↓
まずこの話は、同性婚や近親婚や複婚(ポリガミー)の前に、「事実婚」があることで考察しやすい。
基本的には、婚姻を国家に届けることと、届けないで事実婚をしていることに、違いは何もないし、何も違いはないようにすべきである…といいたいところだが、
ここで以前から当ブログで言っている「結婚はパッケージ契約」という話が生きてくる。結婚(の国家への届け出)がパッケージ契約であるなら、逆に言えば結婚しない2人(以上の複数?)は、そのパッケージ契約を結びたくても結べない、という話が出てくるのです。
を経由して、その考察アイデアの元になった
Dropbox - SHIMIZU_LegalConstruction.pdf - Simplify your life
を再度紹介、その部分を抜き出そう。
このなかにはぶっちゃけ、要らないとか積極的に持ちたくない、というものもあろう。
同じ姓にする、とか相互に貞操義務を持つ、とか相互扶養義務とか。
それを拒否するために事実婚をしている、と言う人もいるわけでな。
あと、いま現在は妻・夫であることは親族の中でもファーストに権利を持つことになる。その優先順位変更という点も重要。
「近親はもともと、上のパッケージ契約の一部は持っているから、近親婚にメリットはない」という論は、その点で事実ではない。
あと、リンクを張ったブログ記事にも書いてるけど、医療の治療方針決定とかに関して「妻は愛してるけど、へんな自然信仰に凝っちゃって、現代医療を拒否してる…あいつに決められたら困るよ、その点だけは妹のお前に権限を委任したいんだが…」みたいな「個別契約」をしたいというニーズもあるんじゃないかなぁ。
さらに言えば、ここに、また思考の補助線として「夫婦(夫夫、婦婦ふくむ)だけでなく、『仲良し』だって、合意すれば、そんな権利を分かち合ってもいいんじゃね?」という仮説を提示してみよう。ここ、実の所、非常に重要になると思うのです。ただ長文&いろんな例をあげての文章になりそうなので、今回はそれを提示だけして本題はあとで。
最後に、ではなぜ届け先は「国家」なのか、である。
それはもちろん、我らはすべて国家あっての存在であり、国家こそがすべての忠誠をささげる場所であり、我らの血の最後の一滴まで祖国にささげられているからであり、我々の神聖なる愛も、国家によって認証されなければならない…と皆が思っているからでしょうね。
んなばかな。
そもそも、国家も苦労して、「結婚の登録・認証はうちでやります、やらせてください」と必死に営業かけて、業界に浸透していったのだった。
いったい「結婚」とは何なのか。その2人が何によって「夫婦関係」として認証されれば、「結婚」の成立とされるのか。歴史的にさかのぼれば、それは宗教的権威にその認証権限があるとされてきた。しかし、それは宗教が人権や社会のありようを規定できる権限の源とも化していた。
— OGAWA Kandai (@grossherzigkeit) March 17, 2015
フランスの有名な政教分離概念「ライシテ」の成立過程において、結婚の認証権限を教会から民法に移すという戦い、交渉は、かなり重要なウェイトを占める。ビスマルクが行ったプロイセンの諸改革の中の一つにも、結婚は教会ではなく法が認めるものとした、というものがある。
— OGAWA Kandai (@grossherzigkeit) March 17, 2015
つまり「結婚は法によって裏打ちされるもので、宗教権威の出てくるものではない」という考え方は、政教分離の基本の一つであり、さらに進んで言えば、近代社会を近代的たらしめている要素の一つとでさえあるかもしれないのだ。宗教の婚礼儀式は、今日では悪いが「刺身のツマ」みたいなものなんですよ。
— OGAWA Kandai (@grossherzigkeit) March 17, 2015
こんな問題を、ふらっと提示した「結婚するって本当ですか」。Amazonでドラマにもなったね。
・・・・・・・・作品としては微妙に not for me なんですけどね(笑)。ちなみにこのあと、別に「結婚っていったい何だろう」話は深まらずに、次のエピソードに行って終わった、と記憶している。
おまけとして、アイルランド憲法のラディカルな文面を紹介したい。「家族は実定法に先立ち、かつ優位する道徳的制度」
第 41 条
1 .1 °国は、家族が、社会の自然な第一次的かつ基本的な単位集団であること、及び不可譲かつ時の経過により変わることのない権利を有し、全ての実定法に先立ち、かつ、優位する道徳的制度であることを承認する。
2 °したがって、国は、社会秩序の必要な基礎並びに国民及び国家の福祉に欠くことができないものとして、家族の構成及び権能を保護することを保障する。
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3487278_po_201101b.pdf?contentNo=1