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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

アイルランドの同性婚国民投票、憲法改正が必要なの?と同国憲法を読んだら…めっちゃ興味深い

アイルランド 世界初の国民投票同性婚認める
5月24日 13時17分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150524/k10010090011000.html
アイルランド 世界初の国民投票同性婚認める
カトリックが多数派を占めるアイルランドで、同性どうしの結婚を認める憲法改正の是非を問う世界で初めての国民投票が行われ、その結果、賛成多数で改正案が承認されました。
アイルランドでは、同性のカップルにも異性のカップルと同等の法的権利を認める制度が導入されていますが、さらに、憲法を改正して同性どうしの結婚を認めるかどうかを問う、世界で初めての国民投票が22日、行われました。
23日、発表された結果によりますと、「認める」に賛成が62.1%、反対が37.9%となり、改正案が承認されました。

こうやって示された国民の、住民の意思は尊い

だが、ところで…そもそもアイルランド憲法は、修正しないと同性婚が認められないのだろうか。というのは、日本国憲法は修正しないと同性婚を認めることができないのか、それともこのままでも認められるのか、がちょっとした議論であるからで。

憲法24条(”両性の合意”)と同性婚の整合性〜大屋雄裕氏、木村草太氏 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/531566
  
憲法同性婚を禁止? 憲法学者・木村草太さん「そんな説はお笑い。今日でおしまい」|弁護士ドットコムニュース http://www.bengo4.com/topics/3017/ #bengo4topics
 
同性婚憲法の関係 http://blog.goo.ne.jp/kimkimlr/e/6f997602541ba03928e7e79f1171d0a3


じゃあ、まずアイルランド憲法を読んでみようじゃないか…このへんは英語を読むのもやむを得ず、と覚悟を決めていたのですが、ありがたいことに国会図書館が訳をしていた。税金払ってた甲斐があったよ。
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3487278_po_201101b.pdf?contentNo=1
だが、PDFなので使い勝手が悪い…

そこで該当する、結婚に関して定めた同国憲法の41条をここに転載しておいた。

住民投票で話題になった、アイルランドの家族制度を規定した憲法条項を写しておく - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150523/p1

読んでびっくりしたのは、結婚というより「家族」についてあーだコーダと規定しているんだよ!!!
なんかへんだなあと思ったら君、要はアイルランドは、カソリックを国教として正式に定めた神聖国家だったのだよ。たしかに聞いたことはあったが、憲法規定でもそれがここまで、がっちり含まれていたとは。

総論 ―国民と国家
憲法エートス
憲法が立脚する倫理的価値は、もちろん時とともに変わるとはいえ、その前文によれば、キリスト教の神に感謝を捧げ、思慮と正義と博愛を正しく遵奉し、共通善を促進することにあるとされている。
 
憲法によれば、政府の権限は全て、神の下に人民に由来するものであって、人民は国家の指導者を選任する権利を有し、最終的に国家政策のあらゆる問題を決定する権利を有している(第 6 条第 1 項)。理論上、人民は神の下にすべての権能を有する唯一の政府機関であって、国家、政府機関を創設し、基本的権利を宣言する第一の根本的権威ということになる。

第 44 条
1 .国は、公の信仰の誓いが全能の神に捧げられるべきものであることを承認する。国は、神の御名を崇敬し、かつ、宗教を尊重し、及びこれに敬意を払わなければならない。
2 .1 °良心の自由並びに信仰及び宗教活動の自由は、公共の秩序及び道徳に服することを条件に、全ての市民に保障される。


こういう環境下で、同性婚が圧倒的多数によって賛成された、というのも興味深いが、前述のNHKニュースによると

アイルランドでは保守派のカトリックが多数派を占めますが、ここ数年、聖職者による性的虐待の事実が次々と明るみになり、カトリック教会への信頼は大きく揺らいでいて、こうしたことが投票結果に影響を及ぼしたという見方も…

だという。


しかし、アイルランド憲法における「カソリック」の位置付けや「家族」の位置づけを読んで、かなりの異文化っぽさに驚いた驚いた。同性婚より、こちらのほうが興味深くなってしまった。



政教分離」「国家と宗教」が、かなりその歴史によってさまざまに違うことは知っているが、上のように.
『国は、公の信仰の誓いが全能の神に捧げられるべきものであることを承認する』
『国は、神の御名を崇敬し、かつ、宗教を尊重し、及びこれに敬意を払わなければならない』

なんて定めていても、アイルランドが高度な民主主義国家であることは誰も疑っていないので、こういう「国のかたち」もあるもんなんだな。

憲法に「家族はすべての実定法に先立ち、かつ優位する」と定めてるって…

あと、
「国は、家族が、社会の自然な第一次的かつ基本的な単位集団であること、及び不可譲かつ時の経過により変わることのない権利を有し、全ての実定法に先立ち、かつ、優位する道徳的制度であることを承認する。」

憲法に「XXXはすべての実定法に先立つ」とかいてあるというのは、まぁ、日本国憲法11条の「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」と同じなのだろうけど、憲法に「すべての実定法に先立つもの」を認めるというのはなんかへんだなあ、という気がするのであります。ただ、「家族というのは実定法の前に存在した、というのは歴史的な事実だろうな」、とも。


アイルランド憲法を読むと、そんなところがいろいろと面白うございました。