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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

人気ジャンルは『時代劇翻案』席もある―『イクサガミ』漫画化(デスゲーム)、「わが殿」文庫化(内政チート)

いま、漫画版は3、4話目ぐらいになったっけかな。

今村翔吾原作による立沢克美の新連載「イクサガミ」が、本日12月8日発売のモーニング2023年2・3合併号(講談社)でスタートした。

(略)……今村の同名時代小説を原作とした「イクサガミ」は、明治時代の日本を舞台に“金十万円”をかけたバトルを描く物語。明治11年2月、深夜の京都・天龍寺に「武技に優れたる者に金十万円を得る機会を与う」という怪文書を見た、腕に覚えがある侍たちが集められた。点数を集めながら東海道を辿って東京を目指す、「こどく」という“遊び”を行うという。金を必要としていた剣客・嵯峨愁二郎は「こどく」への参加を決めるが、点数を稼ぐためには、各自に配られた木札を互いに奪い合う必要があり…

natalie.mu

comic-days.com
イクサガミ
今村翔吾/ 立沢克美
直木賞作家・今村翔吾の歴史大作『イクサガミ』をコミカライズ! 圧倒的剣術と欲望を武器に繰り広げる、命と札を懸けた死闘、開始!!

元は小説で、かなり人気ですよね。


もう、書き手側も読み手側も、いわゆる”デスゲームもの”というジャンルがあり、そのジャンルの中で新作を描いている、ということを隠したり、それでプラスやマイナスの評価をすることもない。
それを大前提として楽しんでいる。これも「進化」だと思う次第です。

イクサガミ 漫画版

で、どんな人気ジャンルでも「時代劇に翻案」するという枠、席がひとつか二つは空いている、という仮説(笑)
だいたいコミック乱が埋めている、というさらなる仮説もあるが(笑)、その検証は置いておく。


そもそも黒澤明が世界的に大ヒットさせた時代劇「用心棒」だって、ハメットのハードボイルドの翻案なわけだからね。

あるいは股旅物と西部劇。

ja.wikipedia.org
…1969年に『小説現代』編集長となった大村彦次郎は、1960年代からの中間小説誌の競争激化に応じた新しい企画の一つに、股旅小説の見直しとして『俺たちに明日はない』などのアメリカン・ニューシネマのような「ハードタッチな手法や感覚」を持ち込むことを考え、何人かの作家に意図を説明し、「新・股旅小説」と銘打って、柴田錬三郎「本邦博徒伝」を皮切りに伊藤桂一多岐川恭結城昌治菊村到、三好徹、青山光二らの作品を掲載した。1970年4月号掲載の笹沢左保の初めての時代小説「見返り峠の落日」が「スピーディーな文体、ニヒルな主人公、どんでん返しのある推理仕立て」で読者から好評となり、第1回小説現代ゴールデン読者賞を受賞、大村が吉村昭宅に行った際には津村節子にも褒められたという。タイトルに「峠」のつく峠シリーズ5篇を書き、続いて同一主人公のシリーズとして、1971年3月号の「斜面花は散った」で渡世人の紋次郎が登場し、それ以降このシリーズを毎号掲載…


そして、たとえば異世界ファンタジーやSFと時代劇というのはとても共通点がある、というのは以前から書いてた話。
関川夏央
「時代小説、といっても、現代の作家が描くわけですから、基本的には現代の物語なのですが、現代を舞台にすれば、生々しすぎたり、そらぞらしくなったりしかねない物語が、江戸を舞台にすることで、根も葉もある大人のおとぎ話になる」

逆に、時代劇をSFや異世界にもっていく、というのも既に意識的にか無意識的にか行われている。

異世界もので「スローライフもの」…本当は実力ある勇者やら魔法使いが、本人は欲が無く田舎でひっそり安泰に暮らしたいと思ってるのだが…って、あれ実は将軍(旗本や殿様)ご落胤の昼行燈浪人、剣術は達人で忍びの技も使えるーーでしょ。


で、そんな折、この前久々にリアル書店を覗いたところ、これが文庫になっていた、畠中恵「わが殿」。


一度紹介記事を書きました。

m-dojo.hatenadiary.com
「幕末」が始まろうとしているとき、ちょっと小さめの藩が、若き君主のもとで改革を行おうとする。その藩主を、ひそかに「織田信長の再来ではないか」と見立てていた、その近習の侍。
殿は、この侍を抜擢し、借金の整理や新しい財源を作れ、と命じる。
いきなりそんな大役を任された彼は目を白黒させつつ、鉱山開発や新商品開発、それを大阪のような消費地で高く売れるシステムの構築…などに乗り出す。
そんな中で、彼は商人や技術者からも大いに学び、生きた「経済」の在り方を一から学ぶ。

しかし、急な改革には当然ながら守旧派、反対派が生まれ、彼の失脚どころか、暗殺まで狙う一派が現れる。
そして、えっちらおっちら彼が財政再建を進めても「わが殿」は突然、あらたな”浪費”を始める。学問所?最新の銃?なぜ、そんなものが必要なのだーーーーーーーーーー


おもしろいのは、「わが殿」は、―――これはひとつのパターンにもはやなっている、まあホームズ以来なんだけど、藩政改革の実行者・内山七郎右衛門良休は、有能で能動的な主人公なんだけど、一種の「ワトソン役」を兼ねているんだよね。
彼のような有能な人物から見ても、さらに「わが殿」・土井利忠はミステリアスな存在で、本音、何を考えているかはわからない。いろいろと先駆的な構想はあるようだがーーー。
そこを”忖度”しつつ、主人公が外からその謎の主君を眺める、そこが読ませどころ。

そして、次々と新事業や新財政に取り組み、成長発展しているところは確かに俺TUEEEE的な内政チートでもあるんです。


これ、一応核となる事実はあるらしくて

畠中 以前に「実在の人物を書いてみませんか」という提案を、編集さんからされたことがあって、そこで色んな新しいことをやっていきたいし、いつか史実に基づいたものも書いてみたいですね、とお答えしたんです。

 なかなか「この人を書けたら!」という方に出会えないまま、別の資料を読んでいたところ、江戸から明治への移行期に黒字だった藩が二つしかなかった? という記述に目が留まりました。気になって調べてみると、一つは塩田を持っていたことが黒字の理由で、もう片方が大野藩でした。たった四万石の小さな国にもかかわらず、いったいどんな人物がいて、どんな藩だったのだろうとすごく興味が湧いてきたのが『わが殿』の執筆のきっかけですね。


――大野藩を最初からよくご存じだったわけではなく、幕末に黒字だった藩、ということで興味を持たれたわけですね。

畠中 はい、その時に初めて大野の名前を知った、みたいな(笑)。そこからどういう人で、どういう藩だったんだろう、と……そこから資料を調べはじめて、莫大な赤字を抱えた幕末の大野藩の財政を立て直すため藩政改革を断行しようとする藩主・土井利忠と、その殿に登用されて財政改革の実務を担った内山七郎右衛門という名臣に辿り着き…
books.bunshun.jp

この辺の問題意識は、以下の記事でも書いています。

m-dojo.hatenadiary.com
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紹介した「イクサガミ」「わが殿」も単独で面白いですが、他に「これ以外にも、時代劇に持っていけるような”ジャンル”、お話のパターンは無いかな?」と考えると面白そうです。その逆もしかり……。