【創作系譜論】白土三平氏訃報が伝わり、しばらくたつ。
追悼の意味を込めて、「カムイ伝」を再読し、面白いところをピックアップして追悼としたいという意志はあって、実家から二十数巻の文庫本も持参した(結構場所とるねえ、おい)んだけど、まだ果たしていないので、先にこのこと書いちゃおう
白土三平は、「抜け忍もの」というジャンルを開始した人間(※かどうか要検証?)、少なくとも確立させた大功労者で(これは当然の事実)、その後、忍者そのものでなくても、趣向を変えての『抜け忍もの』というジャンルが確立された……との言説があります。
忍が通る 獣道(けものみち) 風がカムイの 影を斬る孤(ひと)り 孤り カムイ孤り 孤り カムイ風の中を 抜けて行く
少し、訃報関連だけでなく、この言葉で検索してみると結構面白かった。
…※その前に皆さん、当然なのか不備なのか、IMEでは「抜け忍」という単語はありません(笑)事前に登録をお勧めします。
まず、訃報に際しての話では、町山智浩氏がこの言葉を使っていたな
『忍風カムイ外伝』(69年)を観て育った自分にとって『仮面ライダー』(71年)は一種の「抜け忍もの」でした。その2つの原点『カムイ伝』と『サイボーグ009』が始まったのは同じ64年ですが、「抜け忍もの」の原点『忍びの者』60年がベストセラーになり、62年に映画化されたので、影響があるかと思います。
— 町山智浩 (@TomoMachi) 2021年10月26日
横山光輝の「マーズ(76)」、タツノコプロの「新造人間キャシャーン(73)」、梶原一騎の「タイガーマスク(68)」も抜け忍モノの影響下ですかね。文脈が違うかもですが「デビルマン(72)」も。年代順にみると密集してますね。
— 田村ヨリアキ (@BelkaStrelka99) 2021年10月26日
村山知義の「忍びの者」の連載開始が60年11月。
— kizitora (@anyatoraneko) 2021年10月26日
白土三平の「忍者旋風」(主人公が裏切られて抜け忍になる)の1巻が刊行されたのが59年11月。自分のため、自由のために忍術を使う「忍者武芸帳・影丸伝」1巻が59年12月。
「抜け忍」という概念が貸本で流行ったのはもっと昔からではないでしょうか。
すると「ジャイアントロボ」も同じ系譜でしょうか?
— 迷譚亭小南・怠惰な偶像 (@thor_delta_1) 2021年10月26日
▼マヴォやプロレタリア文学で活躍した作家によって、『赤旗』日曜版に連載された小説が、日本のオタク文化の底流のひとつとなるという胸熱展開
— 九郎政宗 🕊️【∃】🌈🚩🖖 (@claw2003) 2021年10月27日
(@∀@)つ pic.twitter.com/aTBwxeFs1t
すまん、URLでいちいち埋め込む方式は大変なので、以後コピペさせて!!
NAL / ナルサワトモアキ
@wastedays
2010年7月18日レポゼッション・メン>“抜け忍もの”の後の終盤は手段が目的の前提をぶっ壊す滅茶滅茶な展開になるんだけど前述の通り有無を言わせぬ壮絶な血みどろの戦闘とこれをエロと思えるのはどんなド変態だレベルの一種のラブシーンで押し切った後で、ああやっぱりねというというオチが待つ。力業、参りました
高岡ゴンザレス
@kiyotek
2011年2月11日
「ザ・タウン」観終わった。面白い抜け忍もの!インセプションでキリアン・マーフィーの父親役も演じたピート・ポスルスウェイトが出てたんだ!凄味のある強盗の元締め役が素晴らしい。ジェレミー・レナーも良かったけど、個人的助演俳優賞はピート氏かな。ご冥福をお祈りいたします。
#twcn田川 滋 TAGAWA Shigeru 타가와 시게루
@kakitama
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2012年10月25日『サイボーグ009』は隠密剣士や白土三平と言った忍者物ブームの最中に生まれた作品で、話の基本構造は「抜け忍もの」であり、分身の術の様な忍術アクションを最新科学ネタ仕込みのSFに置き換えたもの、とも言えそう。基本的には「活劇」と「抜け忍の悲哀」で出来ている。
田川 滋 TAGAWA Shigeru 타가와 시게루
@kakitama
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4月4日仮面ライダーは公の組織の助けを一切借りず、自力だけで自分が捕まり改造され脱出した組織(ここは009と共通する”抜け忍”もの要素)と戦う。それを社会から賞賛される様子も無い。
悪の組織も世界制覇と言いつつ、その遂行能力はテロ組織かカルト団体レベル。戦いは”人知れぬ”ものになっている。
このスレッドを表示藤津亮太(連絡先はプロフィール欄に)
@fujitsuryota
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2016年7月4日昨日は大阪でアニメレビュー勉強会in大阪を。その前に時間があったので、梅田のTOHOシネマズで『名探偵コナン 漆黒の悪夢(ナイトメア)』をようやく。推理ものというより、スパイ映画(かつ抜け忍もの)に振っていて、過去最大のヒットもわかるサービス満点の内容でした。
遠藤正二朗
@Shoujirou_Endo
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2012年12月12日マスターロムをSEGAさんに提出すると、評価報告書がFAXされてきたんだけど、シルキーリップの時は、『今後、ヒーローものとか巨大ロボットものとか抜け忍ものにも期待しています』とのコメントが。『抜け忍もの』だけ妙に個人の趣味っぽくて笑った気が。 #メガCDの誕生日だし思い出語れよ
身崎洋二郎(日々鬱鬱)
@msky2r
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10月27日その後デビルマン(マンガの前半とアニメ)やタイガーマスクに受け継がれた抜け忍もの。石森章太郎は仮面ライダー以降もキカイダーやアクマイザー3など抜け忍もの設定を好んで使用。
前Q(前田久)
@maeQ
2018年3月18日そういや吉田秋生先生がたびたび「『BANANA FISH』は『カムイ外伝』っぽいことがやりたかった」みたいな発言をされていて、以前はピンと来てなかったんだけど、読み返すとたしかに『カムイ外伝』つうか「抜け忍」ものメソッドだった。刺客を倒すと、もっと強い次の刺客がやってくる……みたいな。
このスレッドを表示
白土三平以前の貸本劇画、とかの話も出てきて…ここでみなもと太郎氏ご健在なら、一刀両断なんだろうけど!!…本当に惜しい人材、知的遺産を失った。
ただ、起源探索論は、少なくとも自分はどう知恵を絞っても、結局たどり着けないだろうという自信があるので(笑)、そういう「お題」だけ問うて、識者の発言を待つ。
ちなみに初出調べ・参の型「国会図書館デジタルコレクション」内を検索しても0件でした。
dl.ndl.go.jp
案外、外国映画の「いまは静かに暮らす元ギャングor元傭兵」とかがあるかもしれんしね。組織から追われることも含めて。
アルプスの少女ハイジの「おんじ」が、「抜け忍」ってこともないだろうけどさ!!
togetter.com
ただ……白土三平オリジナルの設定にしては、作品の中で、「皆さんは知らないだろうが、抜け忍という存在があって…」という説明というより「説明不要、おなじみの抜け忍ですが…」というテイストのほうが強い気もするんだよな。
ただ、自分が読んだ白土三平漫画って、しょせん氏が大物になってからの代表作の一部にすぎず、「もともとも自分で作って、自分で『説明不要』のお馴染みコンセプトまでにした」というだけかもしれんしな……。
抜け忍概念の、拡大と拡散
このブログでは散々書いた話だけど、ジャンルは「…というジャンルがある」と誰かが言った時に初めて成立する、という面がある。
だから仮面ライダーやタイガーマスクその他に「抜け忍」の影を見るのは大したものだけれども、上に書いたように、「組織に追われる」という点では海外のマフィア・ギャングものとかも関係しているのかな。
と同時に、「主人公は、超人的な力をなぜ持っているの?」の説明に「主人公は、戦っている悪の組織から抜けた人間。だから両方ともそういう力を持つのです」は、とりあえず説明が簡単(一回で済む)だから、という点もあるのだろう。
裏切り者の 名を受けて
すべてを捨てて たたかう男
デビルアローは 超音波
デビルイヤーは 地獄耳
デビルウィングは 空をとび
デビルビームは 熱光線
悪魔の力 身につけた・・・・・・・(後略)
一方で追われるというサスペンス、孤独感、その中で作られる安らげる人間関係、そかし秘密がバレたらそれも終わるだろうという寂寥感……いろいろ発展し得る。
ところで、実際にこの世の果てまで抜け忍を追いかける忍者集団なんかいねえよな??
忍者関連の研究はここ数年で、飛躍的に進んだそうだが
m-dojo.hatenadiary.com
m-dojo.hatenadiary.com
m-dojo.hatenadiary.com
そんなのは調べないでいう!!調べるまでもない!
コストとベネフィットが見合わない!!
だから仮にそういう慣習がブラック忍者集団であっても(たいていそうだろ)上忍が、「働き方改革」や「事業仕分け」して、そんな抜け忍追跡部門なんて、不採算事業から秒で撤退する筈!!
だからこそ、たぶんフィクションであり、それを創始した?か、或いは間違いなくジャンルにまで高めた功績者のひとりであろう白土三平はリスペクトされるべきなのだが。
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コメント欄にて討議・検討(重要情報あり!)
流転
「抜け忍」というネーミングは小島剛夕によると自分の発案とのこと、小島剛夕と白土三平は互いに了解のうえで設定などを共有する仲であったとのこと、小島剛夕の作品にも忍法オボロ影を使うくノ一が登場するも作品があります
あと、白土三平の「抜け忍」のイメージには司馬遼太郎の短編「下請け忍者」が影響を与へているのでは?想像してしまいます
gryphon
コメントすべて参考になりますが、
・小島剛夕が名称ふくめ発案者
・白土三平と「設定共有」していたとか、あまりに重要情報過ぎて、逆にソースが無いと広めにくいほど。どこかで、そういうテキストを確認できませんかねえ…?
新撰組は「裏切者・脱走者の粛清」のほか「容疑者を拷問のすえ、大規模テロの計画を寸前で察知して襲撃、平定」とか、たしかにそのままフィクションじゃないか、って感じの事柄が多いのう。そして司馬遼太郎の忍術もの。そもそも昭和30年代の忍者ブームは彼の主導だ、とも言われてるしなあ。そして氏を通すと、「司馬の独創か典拠があるのか不明」になってしまう、もしそうんら相当厄介だ…
そして江戸時代や戦国時代に「〇〇という言葉/概念 があった」と書くと、そうとうバレにくい(笑) ないことを証明しづらいし、辞書になくて当然だし…
そんなコメント欄をすべて記事の末尾に。
tennteke
別件で「忍者キャプター」1976年4月7日から1977年1月26日までを調べていたら、主人公火忍・出雲大介も風魔忍軍からの抜け忍でした。
流転
どうも、小島剛夕の発言は70年代に出版された、活字本の回想記(?)にあったものです(題名失念・・・これ持っていたのですが、引っ越しの時に紛失してしまいました・・・)この本イロイロ面白い情報が満載で、梶原一騎原作の「惨殺者」の宮本武蔵のビジュアルイメージは白土三平だとか「子連れ狼」が最初に小島剛夕のところにハナシがきたときは現代物(!)で少女を連れたフリーランスの暗殺者のハナシだったとか・・・(これは小島剛夕以外の「関係者」のハナシと大きく異なっていますが・・・)
「子連れ狼」の連載前に小島剛夕自身が出していた企画は「甲賀忍法帖」の劇画化であったとか・・・あと、1963年のボーイズライフ創刊号に発表された白土三平の「ざしきわらし」現在複数の文庫版アンソロジーなどに収録される白土の代表作の一つといえる短編でまさに老いた「抜け忍」を主人公としたものですが、作中「さがせ、おきてじゃ!!」「たとえどこへ隠れようと、見つけ出して切れ!!」という頭領(作中では殿とよばれています)のセリフはありますが主人公ダンズリ(兎の山言葉)の小助は抜け忍とも抜けたとも呼ばれていません、おそらくこの段階では白土三平の中では概念としての「抜け忍」は確固としあったけれども名称としての「抜け忍」はまだなかったのでは?と想像されます
**gryphon
ダンズリ!! 自分は「忍法秘話」収録で読んだ!! 皆にバカにされる、身分の低い忍術だが、ひとつだけオリジナルの術を持っている。その秘密を教えると、いよいよ用済みとして生活もままならなくなるので、その秘密だけ後生大事に抱え込んで下っ端として「生き残り」続ける…相原コージの「ムジナ」って、むしろこのダンズリの話がモチーフのはず!!
…と、本題の、小島剛夕情報が実に貴重。いつかウィキペディアなどにもこれらが記載されるべきです。資料を探していこう。(これらも記事に転載)