…イスラエル支持者として数的にはユダヤ人よりも重要なのが、キリスト教福音派である。アメリカ人の4人に1人は福音派に属している。実数にして8千万人強である。その多くが、イスラエルの成立を古代のイスラエル王国の再生と見なしている。そして、聖地パレスチナ全体のユダヤ化がイエスの再臨の準備となる、と信じている。それゆえ熱烈にイスラエルの占領地への入植を支持している、とされてきた。
ところが、アメリカの福音派に関する最新の世論調査の結果が公表され、注目を集めている。それによれば、18~29歳の層では、イスラエル支持が33パーセントなのに対して、パレスチナ支持が24パーセントであった。3年前の調査ではイスラエル支持が69 パーセントで、パレスチナ支持はわずか5・6パーセントだった。なにが、この驚くほどの変化をもたらしたのだろう。
SNSなどを通じて現地から提供される映像の量が爆発的に増えているのが大きな要因ではないかと想像される。しかも、この年代層の45パーセントがパレスチナ人国家の樹立を支持している。ということは全パレスチナのユダヤ化に反対なわけだ。イエスの再来の準備としての聖地全体のユダヤ化という神学を信じていないわけだ。
全く持って驚く構図である。米国の福音派がイスラエル支持であり、それゆえに巨大な票田である以上、米国の政治家はイスラエルに配慮せざるを得ない……というのは、米国から始まり、世界につながる大前提だった。
しかし、もともと福音派が政治の中で、大きなひと塊の政治勢力となるの自体、ある種の”努力”によってなされた人工物であった。モラル・マジョリティなどの圧力団体を設置し、それが拡大するようになってからの話だし、対中絶闘争によってそれが戦闘的になり、権力奪取は、他の保守勢力と手を組んだ「レーガン連合」によってはじめて成功した、みたいに言われる。
また、「福音派だから地球環境の維持を意識する」といった派も現れている、という……にしても、上の意識調査、また「理由」については推測の域を出ていない気もする。SNSで現地情報が発信されたから変化があった、でいいのだろうか。
また、この意識が政治勢力を変えるには、日本ほどじゃないにしても「若者は高齢者に比べて政治にかかわらない」という問題もある。
であっても、
覚えておくべき議論。