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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

南野森氏「電話の集団的抗議は、民主主義社会に危険」~「表現の不自由展」論・後編

分量的に書ききれなかった「表現の不自由展」話つづき。こちらが本題。

本題に至る前の前編はこちら
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この記事内で、憲法学者の南野森氏がコメントを寄せている
www.asahi.com

表現の自由をめぐる問題に詳しい南野森(しげる)・九州大教授(憲法学)の話 

……主張に反対する「敵対的聴衆」が押しかけてくるというだけでは、施設の管理上支障が生じるとはいえず、それで表現や集会の自由を制限できるわけではない。電凸(でんとつ)と呼ばれる電話による集団的な抗議などで、気に入らない言論や表現活動を封じ込めようとする行為は、民主主義社会を極めて危険にする。行政のトップが威圧的な妨害活動には屈しないという毅然(きぜん)とした姿勢をとらなければ、そうした行為をする人たちに「成功体験」を与えてしまう。違法でなければどんな抗議も良いかのような吉村洋文大阪府知事の発言は、電凸を許容しているようなメッセージに受け取られるのではと危惧する。東京展のような民間ギャラリーの場合も、電凸などで抗議する人たちに成功体験を与えないために…(後略)

注目、ちゅうもーく。
電凸(でんとつ)と呼ばれる電話による集団的な抗議などで、気に入らない言論や表現活動を封じ込めようとする行為は、民主主義社会を極めて危険にする」

電凸」「電話による集団的な抗議」は「民主主義社会を極めて危険にする」のよ、紳士淑女諸君。
「今回の」話ではない、普遍的な話として。

こういう意見は、たとえばこういう主張と対立する。

このツイートは何に関してかというと、2018年に、いまだに名前を憶え難いあの…ああ「RADWIMPS」のHINOMARU という歌が物議を醸した時の話だ。「廃盤にして、二度と歌わないと表明を」とかなんとか。


togetter.com

というか、「抗議が殺到」したとかの話で言えば、最近のネット界隈をにぎわしたものを、ザーッと記憶をたどってランダムに…
・ろくでなし子講演
百田尚樹講演
竹田恒泰講演
香山リカ講演
会田誠アート
・「人工知能掃除ロボット表紙
ガルパン展示
・宇崎ちゃんポスター
キズナアイNHK登場
・駅の車いす問題
・呉座勇一発言
毎日新聞「万能川柳」
NIKEのCM
岡村隆史発言
あーめんどくせー
togetter.com
とかで。

で、これに関係する議論を2019年に、同じ憲法学者の木村草太氏が語っていた。どっちが学問的業績があるかとか、論文が引用されているかとか、知名度があるかとかは知らぬ。

その重要部分…というか「抗議と表現の自由」に関連した部分を当方が既に論評しているので、そこを再掲載しよう。もう元記事は、普通には読めない。当時注目して保存していた俺のセンスのよさよ。

・さて、今回の目玉はこれ。記号を便宜上ふっておく

A:電話での抗議についてはどうか。今回、多数の抗議電話により、事務局や愛知県の業務はパンク状態にあったという。通常、一人一人が電話で意見を伝えること自体は、脅迫などを伴わない限り、禁止されるべきものではない。
B:しかし、今回、抗議電話をした人たちは、抗議メッセージを伝えることを超え、不特定多数の力によって、展示会を中止させようとする意図があったのではないか。

まず、先に「B」だが……こりゃいわゆる「ゲスパー」論で、「…という意図が有ったのだろう」だったらねえ、たとえば上の100田さんの話でも『抗議メッセージを伝えることを超え、不特定多数の力によって、百田氏の講演会を中止させようとする意図があったのではないか』となりますしねえ。


そして「A」が今回、わざわざ記事を書いて紹介する理由である。こう、非常に重要な見解を述べている。

 ■抗議を拒否できる正当な理由とは

 法律家たちは、個人による意見表明の自由を確保しつつ、展示主催者や行政機関の業務遂行を妨げないようにするにはどうするべきかについて、新たな理論を提示せねばならない。例えば、抗議を受け付ける方法を手紙やメールに限定したり、匿名での抗議を拒否したりしても正当と言えるのはどのような場合なのかを、理論的に整理する必要があろう

そう、つまり、「抗議の電話、ファクス、メールがじゃんじゃか寄せられてくる」ことに関して、それが表現の自由を脅かすかどうか、どうも憲法の専門家の中でも、まだ未整備未議論の状態だ、と木村氏は認めたのだ。
ここが重要。頑張って論じてほしい。そして「憲法学」は、その結果をあなた方の上司である「法哲学に伝えて、法哲学の側もフィードバックしてほしい。

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ということで、木村氏が「新たな理論を提示せねば」「理論的に整理する必要」と慎重だった「抗議」についての問題を、ゴルディアスの結び目宜しく、まとめて「民主主義社会を極めて危険にする」と一刀両断したのが南野森氏。ここ覚えときましょう。

なお
「違法でなければどんな抗議も良いかのような吉村洋文大阪府知事の発言は、電凸を許容しているようなメッセージに受け取られるのではと危惧」というくだりだが、大阪で今回、会場を主催者に貸し出すように命じた(つまり表現の不自由展側に配慮した決定)地裁の判断では、抗議に関して

抗議活動も表現の自由の一環として保障されるべきで、一定の限度で受忍するしかない

としているそうだ。



しかし、実際、「電話などで抗議する行為」が危険……もう一度正確に引用しよう、【電凸(でんとつ)と呼ばれる電話による集団的な抗議などで、気に入らない言論や表現活動を封じ込めようとする行為は、民主主義社会を極めて危険にする。】という命題が真なら、これは以後、いろんなところに反響がいくわいな。

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この問題、自分ももう少し端的に考えたことがある
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厄介な部分は、幸福の科学朝鮮総連が組織的に行うもの…」たとえばこういう例…
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とは別に、「結果的に」驚異的な数の批判、抗議、異議申し立てが殺到したら…である。これについての考察は、以前これらを参考にした。

kensuu.com


上のCDB氏のツイートは、キズナアイに関するものだった。一応ツリー全体を紹介しようと思ったが、なんか途中で枝分かれしてしまって、どこが着地点で上のツイートにつながるのかわかんなくなった。
消すのも惜しいので、一応保存しておこう。

※このへんから、上のツイート(5RTと5万RTは違ってくる)に至るはずだったのに、遡っていたら途中で枝分かれが起きてしまい、なんか違うルートに入ってしまったようです(※twitterのツリー形式は、実はこの問題があるのです)


その他、ちょっと興味深い「表現の不自由展」に関する記事
news.yahoo.co.jp
news.yahoo.co.jp
www.sankei.com


※クリックすればツリー形式になってテキストが読めます