twitterで書いたものをもとに。
あと、このまとめを推奨します
togetter.com
1:報道されている通り、矢口高雄先生が亡くなられました。スピンオフ「vs魚神さん」が最近まで連載されていたり、twitterを始めたり、むしろ「これからいろんなことができそうなポジション」の足固めをされていたように思えたのに。80を越したとはいえ「早すぎて」「惜しまれる」逝去でした。
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) 2020年11月25日

- 作者:立沢 克美
- 発売日: 2020/08/20
- メディア: コミック
2:個人的にも、つい最近、加入していたキンドルunlimitedに「釣りキチ三平」とはまた別の、矢口高雄先生の多くの作品が読み放題で読める状態になっていて、私的なリバイバルでした。「おらが村」や「ボクの手塚治虫」はブログで紹介しましたが、今後も紹介する予定でした…https://t.co/bBKg8dqrPE
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) 2020年11月25日
m-dojo.hatenadiary.com
※もう一つ矢口漫画紹介ではこれをかいていた。
m-dojo.hatenadiary.com
※アマゾン・キンドルアンリミテッドで2020年現在、読み放題に入っています3:追悼の形になってしまいましたが、本命的に紹介したかった「9で割れ!」をここで再読したいと思います。時期的には90年代半ばに文芸誌に連載されたもので、少年期、学校時代を経て、地銀に就職し銀行マンとして駆け抜けた時代を描くものです。 pic.twitter.com/uGCpjvehoW
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) 2020年11月25日
4:奇妙な題「9で割れ!」は時々ネットでも見かけるライフハックで、要は桁を間違うというよくある、そして結果が深刻な間違いを、これをすると発見しやすくなる訳(なぜかって?…エート…)。
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) 2020年11月25日
この時代と仕事を回想するこの作品が面白いのは、当時の「アナログさ」を振り返るいい機会になるから。 pic.twitter.com/8T0i4eu5ca
5:描かれた90年代からでも、そして今見たら、とにかく何から何までアナログ。硬貨を100枚ごとに包むのも、現金と帳面の数字が一致するかの確認も、札びらを瞬時に計算するのも手作業…しんどくて大変だなあ、と思うけど、その一方でそれだけ「人手」が必要な時代。いろいろ今と比較すると感慨が。 pic.twitter.com/egihopaAcd
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) 2020年11月25日
6:己を韜晦し道化的に描く手法が漫画家自伝に多いけど、矢口氏は山深い田舎から地銀に入った時点で、超優秀なのは隠しようがない(笑)。そんな頭のいい若者が、抜群の記憶力…各種エピソードの説明もそうだが、まずは映像的記憶力だ。それで、高度成長真っただ中の時代を描くのだから面白い筈だ。
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) 2020年11月25日
7:勿論その時代がバラ色であるわけもなく、今以上にしんどく、殺伐とした面もあった。銀行はまだ、行員が「宿直」をしている時代だったが、強盗に直面して惨殺されることもある。矢口高雄先生の母親は、農作業で無理に無理を重ねて足に大きな病を負う。そんな時代の暗部も描かれる。 pic.twitter.com/XUpme4QVJ4
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) 2020年11月25日
8:しかしそれでも、ようやく普及しようかというテレビを「積立預金をすれば最初の段階でテレビが家に来る!」と地銀がキャンペーンに利用する。「ひょっとして、テレビが一家に一台置かれる時代も来るんじゃ?」「まさか!」みたいな会話を、今の世の中から「答え合わせ」すると思わず笑顔。 pic.twitter.com/S4sdSWkCDM
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) 2020年11月25日
9:そんな中、仕事に慣れ始めた新人・矢口高雄行員は、ある出来事を生かして、下火になりかけた地銀の「テレビ積立」を再度ブームにしよう!と発案。同時代を生きた、矢口氏から見ると少し「お兄さん/お姉さん」なあの方々のご成婚を…。もちろん絵の才能も生かしポスターは自作(笑)、大ヒット。 pic.twitter.com/GF1Yy6lFL6
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) 2020年11月25日
10:こんな、昭和がそのままタイムスリップしてくるような珠玉の挿話を挟みつつ、ここまででようやく1巻が終わる(笑)。全4巻だが、故人と、故人が生きた昭和を偲んで再読をお勧めします。これも勿論キンドル読み放題あり
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) 2020年11月25日
(ひとまず了)。https://t.co/alwOrP6h1c
twitterでかいたのはここまで。そう、全体を紹介したかったんだけど、1巻だけで濃すぎるぐらい濃いので、ここまでだ(笑)。
可能なら、ここからラノベかって感じで面白くなっていく2巻以降も紹介書きます。
副題「下宿先の大家が超金持ちの山林地主で、おれに絵の才能があることを気に入られて超レアな体験した件」
※ほんとにそんなふうな感じになるんだよ!!
twitterで書ききれなかった話を『ボーナストラック』でつけておこう。
ほぼ最初に、矢口先生がこの作品で紹介するエピソードは、まさに1円のずれも許されない銀行で数百万円単位で足りなくなる事件が発生した話。しかもタイトル通り「9で割る」と割り切れる…しかししかし、それだと数百円出金すべきところに、数百万円を「間違って」出金したことになる……
こんな「日常の謎」的ミステリー(実体験だろうけど)をぶちこんできたのです。
その理由がいかにも昭和で「手書きの小切手」が頻繁につかわれていたこと(それは今でもそうだろうけど、より多かったであろう)、そして数百万円単位の金銭を通常は取引するような会社が「ふらりと現れた」得体のしれない男に・・・・・・・・・、というね。

にしても、たしかに銀行がそろばんひとつで膨大な手書き伝票を計算、1円でも違っていたら真夜中まで徹底調査…という話は聞いていたし、それゆえに午後3時で閉めているのでありましょうが、これって日本以外の諸外国でもそうだったんでしょうか。銀行制度は海外からそもそも輸入されたから、そうかとも思うが、この1円でも違っていたら…というのはいかにも”日本的”で、たとえば〇〇〇や▲▲▲(自主規制)の銀行がそうやってるんだろうか?とは思うのである。いや実際「銀行はこの調査を真夜中までやると、支払う時間外手当がそのずれの何倍にもなるのが普通。だけどそれを信用のためにやっている」とか明言してるんですよ。
とすると「員数」が徹底的にあっているか、いまだに薬莢ひとつを回収するために匍匐前進するという、そのへんの旧軍文化の名残とかもあるんじゃないかなあ……ってのは根拠なき陰謀論。
もうひとつ、ここは矢口高雄の中学校時代の回想(そのときの校長先生に、退職金を預金してもらうよう営業に行ったのだ)なんだけど、「校門」をめぐる、とあるエピソードがなかなかに感動的だ。

矢口の中学校は新規に建てられたものなのはいいとして、校門までは作る余裕がなかった。きちんと校門をくぐってわが母校に入りたい!との要望が出て、まわりはまっ平で、どこから入ってもいいのに、わざわざ校門を立てる。それも杉板で作って中は空洞、そこに石製に見える色を塗ったという校門だ(笑)。
しかし、こんなことに村の予算なんてついたのか?実はその費用は……そして、そんなテンプラ校門を、学生たちはとても神聖に、誇らしく思っており、ある豪雪の日に・・・・・・・・・と続く。
いまウィキペディアや訃報を伝える地方紙記事を読んだけど、残念なことに名前は見つからなかった。
www.kahoku.co.jp
当然ながら、この「テンプラ校門」の実物も残っていないだろうし、これの建築やその維持にかかわった先生も生徒も、亡くなったか相当のご高齢になっているだろう。
しかし、矢口高雄という鬼才が圧倒的な画力で描くことで、この歴史は、逆に永遠の命を得たのである。

※あっ、いま書いてて思いついたんだけど、校長先生はこれを文集に残していたようだ。文集とかは性格上長く残るものだから、秋田の図書館や、矢口高雄との関係で作られた横手市のまんが美術館などは資料が残っているんじゃないかな?たぶん、ある程度の労力をかければ、このテンプラ校門に関する歴史の詳細はわかるだろう。興味ある、地元の方などは調査を……
矢口高雄が、まんがで書いた自伝シリーズは
「オーイ!やまびこ」
「ボクの手塚治虫」
「ボクの学校は山と川」※文章が主で、マンガがいくつか挟まる感じ
「ボクの先生は山と川」※文章が主で、マンガがいくつか挟まる感じ
「ニッポン博物誌」の中のいくつか
「蛍雪時代」
「9で割れ!」
「LOVE FISH 三平クラブ」
・・・という流れでいいんですかね?

- 作者:矢口 高雄
- 発売日: 1993/10/06
- メディア: 文庫

LOVE FISH三平クラブ―その後の「釣りキチ三平」 (1) (MF文庫)
- 作者:矢口 高雄
- メディア: 文庫

LOVE FISH三平クラブ―その後の「釣りキチ三平」 (2) (MF文庫)
- 作者:矢口 高雄
- メディア: 文庫
余談 この作品を15年前にも紹介していると、はてなが紹介機能で教えてくれた。正直覚えてなかった(笑)
m-dojo.hatenadiary.com
余談2 リンク張られてた。これはまだ未紹介の後半部分だね