前作「テンプレラノベ伝奇考」は以下の通り。この流れから。
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続編であるので、作品の舞台と、登場人物二人の人物説明は大幅に(略)し、あるいはコピペする。
要は舞台はこの前と同じ、日本のどこか、人里はなれた山村……天婦礼羅野辺(てんぷれらのべ)村。
登場人物二人は…
一人は巨躯を黒いコートで包み、山高帽の下はスキンヘッド、豊かな口ひげを蓄えステッキをついた、なんともいかつい男。
もうひとりは細身の体に黒いスーツ、女性と見まごうようなロングヘアー。
「またここで、君と会うとはな。状況も変化したのに」
「ええ、第一作では、具体的に名前を挙げてはいませんが、漫画ファンなら誰でも想像する一種の”夢の競演”として私たちが同じ舞台に立ったのですが…」
「まさか公式が、本当に作者二人による共演の合作漫画を描かせるとはなあ…」

- 作者:星野之宣
- 発売日: 2020/05/22
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「しかもその公式の合作漫画の方が、よっぽど弾けた内容になってる。と言うか、2人の仲があんなに悪いという設定になるとは…(笑)」
「まあ、ビビッて実名を挙げなかったのが逆に幸いした。我々はあの二人そのものかもしれないし、そうではないかもしれない、というグレーな形で演じよう。ところで……そもそも作者は何でこれを書こうと思ったんだ?」
「ネタ自体はずっと前から温めてたんですけどね。第一作目が、出来自体は個人的には悪くない気がするんですけど、あまりにもテーマとして ば か ば か し い ことに気づきましてね。それでずっと形にはしてなかった」
「それがどうして今回復活したかなんだが…」
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「これが今回、思いの外、ブクマがついたりして受けたからですよ。それで調子にのってこのタイミングで書けば、ビッグウェーブに乗れる!と思ったみたいなんですが。」
「馬鹿な…。そもそもあれは『鬼滅の刃』人気に乗っかって読まれただけだし、一応内容的も真面目な路線だったんだぞ。はっきり言ってこれから披露するネタ第一作に輪をかけて、テーマとしては く だ ら な い ぞ……」
「でもまあ乗りかかった船だからやってみましょう。それに我々が解く謎としては、前作に負けないぐらい普遍的なものがありますよ」
「この前はこのテンプレラノベ=天婦礼羅野辺村に伝わる「超自然的な力を持つ女性の着替えに、さえない若い男が出くわし、それによって最初は憎まれるが、ついには恋人、夫婦になる」という説話と…」
「パンをくわえ、ちこくちこくと唱えて駆けた女性と男性が、道でぶつかってむすばれるという神話と…それらが、ひとつの源流となる、ということを発見できましたね。非常に有意義な研究でした。だが、一つの謎が解かれれば、また新しい一つの謎が生まれます。これらの話と、やはり最終的に『あの神話』も繋がっていくのではないでしょうか」
「あの神話とはやはり…」
「トラックに轢かれると、異世界に転生するという神話です」。

【単話売】32歳独身アニオタがトラック転生したらなぜか惑星探査機の相棒になってしまって天文学の発展に貢献しちゃったのだが
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「カトゆー家で研究されている説話だな。今の有力説ではどうなっているのかね?」
katoyuu.hatenablog.jp
「やはり、パンをくわえて十字路でぶつかる説話との類似が注目されているようです。理由としては、物理的にぶつかる衝突するというネガティブな事件が、新たな出会いや新たな世界に繋がると言う非常に奇妙な考え方。これが全く無関係であるとは考えにくいとされています」
「ふふふ、それも確かにあるだろう。だが私も、そして君も、もっと違ったアプローチを考えているようだね」
「するとやはり…その鍵は『トラック』にあると?」
「そうだな。ではここでどうだ、三国志の孔明と周を気取るわけではないが、互いに手のひらに文字を書いて、それを一斉に開いて見せ合わないかね」
三国志 火攻めの刑で手に「火」。周瑜と孔明が一致 孔明が周瑜に曹軍への攻撃はいつ始めるのかと聞くと、先日曹陣営の水上塞を偵察に行ったら実に合理的かつ厳重であり簡単には敗れそうもなかった、それで一計を考えたが自信がもてないので是非孔明先生に判断してもらいたい・・・と言います。
孔明はそれは軍の極秘事項だから口には出さず、お互い手の平に自分の計を書いて示しあうのはどうか・・・と持ちかけます。
そして孔明と周瑜はお互い手に何かを書き、見せ合います。
それを見た二人は一緒に笑います。
二人の手のひらには共に『火』と書かれていたのです。
http://acha22211.blog32.fc2.com/blog-entry-133.html
「面白い趣向です、それでは」
二人は手のひらにさらさらと文字を書いて、お互いパッと相手の面前に手を広げた。
そこにはこう書いてあった。
「虎喰う」。
二人は三国志の光景と同じように、しばし声を合わせて大笑いした。
「さて笑ったところで、語り合うことによってこの直感を理論としてまとめようではないか。君からちょっとまず語ってくれないか」
「いいでしょう、ただ本丸へ行く前に前提として…虎というのは大変に奇妙な生き物だと思いませんか?われらの先輩である、南方熊楠氏がすでに縦横に論じられていますが…」
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「そもそも『龍虎相打つ』ほどの存在だが、それ自体が奇妙だよ。何と言ってもトラは現実。リアルに存在するものだが、龍…ドラゴンは想像の中ファンタジーに属するもの…。いわば活躍するフィールドが違う。なのに龍と虎はライバルである、ということ。つまり言い方を変えれば、虎はリアルの住人でもあり、ファンタジーの民でもある。」
「つまり…現実世界とファンタジー、異世界を往復する存在…」
双方が、頷いた。
「虎は千里往って千里還る…これもまた、異世界にいき、帰ってくることを比喩している!わしはそう、睨んでおる!!」
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「「世に「ブクマ」という文献がありますが、ここで、このような資料もあります。話がメタになりますが」
【創作】「トラック転生」の謎を、2大民俗学者が追う~「テンプレラノベ伝奇考2」(※クロスオーバー) - INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-b.hatena.ne.jp
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なるほど、我が友、李徴子ではないか。
2020/10/25 08:51
「そうか…これは意外な視点だったが、まさにあれこそが異世界ものだな」
「転生したらトラだった件」
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「ならば…室町時代の”あの二人”の問答も、それを視野に入れて考えれば、まったく違う意味に受け取れますね。」
「それはそうさ、かたや、天皇の地位すら脅かし、まったく別の価値観たる中国大陸…いわばこれも”異世界”だ…の権威をわが手中に取り込んで、『日本国王』になった、つまり俺TUEEEな将軍だ。『おじいちゃんが後醍醐天皇追い出したて分裂させた皇室を一本化したんで、おれのほうは国王になっちゃいました、やれやれ』な足利義満。もう片方は「なんかうざいおっさんが天皇の隠し子の俺にしょっちゅうグイグイからんでくるので、頓智で無双した件」の作者、一休禅師だ」
「そのふたりが『屏風のトラを見事捕えてみよ』『では、その虎を屏風から追い出してみてください』とやり取りする…つまりこれは」

天皇になろうとした将軍(小学館文庫): それからの太平記 足利義満のミステリ
- 作者:元彦, 井沢
- 発売日: 1998/03/06
- メディア: 文庫

あっかんべェ一休 (第4巻) (アフタヌーンKCデラックス (666))
- 作者:坂口 尚
- メディア: コミック
「これもまた異世界転生…すなわち2次元と3次元の、境を乗り越える!!!!」
「今の腐女子らの先を行く発想だった、と…。」

Chapter.1 おそ松さん on STAGE ~SIX MEN'S SHOW TIME~ 配信版
- メディア: Prime Video
「そうだ、さらにいえば、腐女子なんぞよりさらに現実とファンタジーの世界の区別がつかない人々の間で、トラがまさに、2次元と3次元を行き来した例がある!!」
「そう、そしてそれは電波に乗り…何百万人もの人々が…金曜夜8時に熱狂した!!」

「あれこそがまさに、2.5次元と言うべき存在だった」
「ふふふ、そしてその彼が使ったのが『四次元殺法』…真に出来すぎた異世界ものです」
「さよう、そして映画館のスクリーンでは、いつもふらりと異世界に出かけて行っては、たまにこの現実世界に舞い戻ってくる『寅さん』が数十年にわたって人気者だった……日本人は意識的にか無意識的にかこのように虎を異世界と結び続けてきたのじゃ」
「ではそろそろ最後に、一番重要な証拠を語りましょうか。……つまり、そちらもトラック、すなわち『トラ喰う』で考えているのは、最大にして最古の異世界転生説話…捨身飼虎 ですね」
「そうだ、それこそが決定的な証拠と言っていい!! 」

法隆寺の玉虫厨子といえば、誰知らぬ者のいない当代随一の国宝である。そこに描かれている「捨身飼虎」図──飢えた虎にわが身を食わせて犠牲になる血腥い物語、それが本書の主題である。
「捨身」のモチーフがどこからきたのか、東西古今の資料を探り、説話の源流や伝承のあとをたずね、その核心に横たわる仏教の「菩薩本生譚」(ジャータカ)を、柔軟なタッチで読み解いていく。それが仏教の誕生とどうかかわるか、と。ちなみに「ジャータカ」とは、「ブッダが誕生する以前の修行中、すなわちその前世の話」のこと。それは「薩埵王子本生譚」とも称され、西域地方や中央アジアを舞台に流行し、千仏洞の石窟に描かれ、多くの仏教典籍で語られてきた。https://kadobun.jp/reviews/a1i224al734g.html
- 作者:君野 隆久
- 発売日: 2019/10/26
- メディア: 単行本
「虎に我が身を投げ出し、喰われて自らが命を落とすことによって、異なる世界に生まれ変わる。そこで、より良い生を送りたい……インドから日本に伝わり、法隆寺の壁画にまで描かれたこの教えが民俗の中で変容し、虎喰う=トラックによって命を奪われれば異世界に生まれ変わって俺TUEEEでハーレムになる、と変わっていった…この経過には、ほぼ間違いがないでしょう」
「ここにおいて、我々のささやかな、精神世界の旅も一段落となろう。しかし、こう語ってきて、あらためて思ったのだが」
「く だ ら ね え な あ !!!!」
(了)