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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

マンガが「スマホファースト」になると「コマ割り」は不要な技術になるのだろうか…それはいつ?

きのうの記事の続き…
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ではあるけど、ほぼ10年ぐらい、追いかけてきたテーマだから自分的にはお馴染み&今さら。だから、過去の記事を振り返りつつ、簡単におさらいしよう。

まず、
・韓国では「漫画=ウェブトゥーン」になっているらしい。新ブランドとか俗称というより、いまでは概念自体が変化している(らしい?)
・ウェブトーンとは、すごく単純に”翻訳”すると「スマホマンガ」
・基本無料で読めるとかビジネス的な違いもあるが、技法のいちばんの違いは「上から下にヒトこまずつ並べて、順番に読んでもらう=ページの見開きを「コマ割り」することは原則ないという点である(※例外はあります、後述)。
・この中のどれでもいいから、実際に読みゃあわかる。
www.comico.jp
manga.line.me
toomics.com


こういう動きはテン年代には韓国で始まっていて、それをみた実作者、編集者、研究者は「これで技法が変わるかも」と考える者もいた。

■「七月鏡一氏による韓国漫画市場の近況解説」


・・・韓国の漫画市場にはいま電子出版のおかげで転機が来ています。NAVERが進めているウェブトゥーンというサービスで、iPHONEで無料で読める電子コミックです。収入はすべて広告で、アクセス数に応じて原稿料が支払われるシステムですが、人気作家はなかなか高収入だそうです。
 
この韓国のウェブトゥーンは、画面に1コマずつ表示されるものを順繰りに読んでゆくスタイルで、例えるなら長いロール状の紙に描いてる感じです。従来の漫画のコマ割のスタイルに捕らわれていません。そのせいかどんどん新人が出現しているそうです。
togetter.com

◇コマ割りが変化

 漫画誌の電子化は、新たな漫画表現を広げる可能性を秘めている。京都精華大マンガ学科マンガプロデュースコースの浅井康特任講師は、一例としてコマ割りの変化に注目する。「紙の大きさの制限があったから漫画のコマ割りができたが、電子媒体ではその制限もなくなる」と話す。韓国発の漫画アプリ「WEBTOONS」で、すでに試されているように「1画面1コマで、画面をスクロールすることで読み進めていく新しい漫画が生まれる。昔の絵巻物がそのような読まれ方をしていて、漫画はそのルーツに戻るのでは」と…

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一方で、2012年に始まった「重版出来!」は、この1コマずつ携帯に表示する仕組みを
「1コマ1コマ”ぶったぎって”」
「描く側はたまったもんじゃねえよな」
「(コマ割りを1コマにするなんて)流れムシかよ!!」
と、すっごい辛口評価で…

電子書籍は、やっといま(2013年)は、見開きページがそのまま表示されて、ようやく読みやすくなったね!!
という、上から目線であったのだ。


そういうのを読んだ、自分は、こう感想をまとめていた。

どっちが先だあとだと拘ることはないが、やはりタイムマシン商法というか、国境ごえ商法はいまだ健在で、どこかの国で成功したシステムは自国でやってみたら成功する可能性はそれなりに高いんだろう。
今度、この「ウェブトーン」を日本でやってみたら成功するかもしれない。しないかもしれない。

ただ、広告の話とはべつに、気になるのは漫画をひとコマずつ画像に写す、というシステムで・・・(略)…1Pに漫画化がそれぞれコマを割っていた画像をばらして、順番に表示するだけでえんのかいな?と。
それは別物かもしれないと。

ただ、これはもともと「紙」である制約で”やむを得ず”そうなっただけかもしれない。画像を一枚ずつ表示できる仕組みがなかったからだけかもしれない
(紙でやったら紙芝居になってしまい、とてもメディアにはできないだろう)。

漫画が戦後、手塚治虫などによって「映画に負けないものを紙の上で見せる」というふうに進化したのなら、ひとコマずつ画像を”スクリーン”に映すというのはむしろ映画的なわけで・・・

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これは以前書いたけど、一種の先祖返りでもある。
手塚治虫からトキワ荘世代に至るまで、元々は
「映画の迫力を漫画で再現したかった」
「だが現実として、紙のページとスクリーンは物理的に違う」
「そこで、「コマ割り」に創意工夫を様々に詰め込んだ」

という流れであります。
この漫画(※重版出来!2018年のこと。後述)の中では電子書籍の一つの手法である「縦スクロール」に対応しているわけだけど、実は韓国の漫画サイトにそういうのがあるらしいんだが…
「一画面に1コマずつ表示していく」という形式の電子書籍、ネット漫画もあるらしいのね。
実はこの方が「同じ大きさのスクリーンにどんどん画面が変わっていく」 という映画のスタイルに似ているのである。というか同じである。
もしこの方式が今後使われるなら?今後の漫画は「コマ割り」に頭を使う必要がなくなり、映画やアニメと同じくコンテ、場面転換の撮影技術「のみ」が求められることになりますね。

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下の記事は2018年のもので、このとき「重版出来!」が、「これからは電子書籍の時代かもしれない」というテーマで、がっつり書いたんですよね。
そしてその時、「電子書籍ならではのコマ割り」について、ベテラン漫画家が「ハッとした」エピソードを入れているんだ。




ここではプロ作家も色々と語っている。↓
togetter.com



背景としては「漫画村」の騒動で、皮肉にも電子書籍の裾野が広がった?
blog.livedoor.jp


そーいや、大物といえば、いま作品の両さん、いや量産という点ではものすごいものがある東村アキコが、どこだっけかな…とにかくウェブトーン会社から正式にオファー貰って、正式に1コマずつの縦読み漫画「偽装不倫」とかいうの描いてた。
ウェブトーンがウェブトーンとして、これぐらいの大物にも声をかけられるぐらいの会社規模である、というのも非常に興味深い(たしか単行本のあとがきに、オファーの経緯がいろいろ書かれてたと思う)

ここ…ちゃんと個別のに飛んでると思うんだけど
https://manga.line.me/book/viewer?id=Z0010124
内容自体はnot for me 。お好きな人は好きでしょう。東村アキコは、少女漫画、レディス漫画は漫画でかいているので、そっちは「雪花の虎」や「ひまわりっ」が好きな人があまり好まなくてもしゃーないでしょ。

『偽装不倫』(ぎそうふりん)は、東村アキコによる日本のWeb漫画。2017年11月より「XOY」で連載していたが、2018年11月から「LINEマンガ」に移籍し[1][2]、2019年9月28日まで連載された。

2019年7月期に日本テレビ系の「水曜ドラマ」でテレビドラマ化[3]。


単行本の時…これは紙版ではどう編集したんだっけかな。


覚えてないけど、ひょっとしたら紙版は、通常の漫画風のコマ割りに戻しているのかもしれんな?パラ読みしただけなので忘れてしもうた。


実は自分、それがウェブトーンだと知らずに読んで、面白がった作品が一本だけあって
それはこの作品
www.comico.jp


内容はというと…かなりヒドいアレだ(笑)
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ただ、なぜ気づかなかったかというと、紙の本ではたしか、ちゃんと見開きの中にコマを置いた、普通の漫画構成になってたんだよ!!

今は、そういうやり方の人も多いんだろう。紙出版も視野に入れて、まず漫画自体は、見開き前提でコマ割りもやった上で描く。
それをバラして、上から下に順番に並べたウェブトーンにする。

この場合は「コマ割り」の技法は保たれる。


しかし・・・・・・・・・・・・・・・



上のほうで、そして過去記事であれこれ書いたように、スマホというかデバイスでマンガを読む機会は、これから増えることはあっても減ることはない。
自分なんかは完全に老害だから「見開き状態でコマが割られていてこそ本当の漫画」「おっ、この漫画家はコマ割りがうまいなあ」みたいに評価するけど、ウェブトーン生まれのウェブトーン育ち、な読み手は、そんなのを一向に気にしないだろうし、邪魔なことだと思うかもしれないわけでさ。


そして、それは既に書いたように「映画が、スクリーンの大きさは一定で、それが時間に応じてどんどん画面が変わっていく」のとむしろ似ている。
だから「カメラアングルをどこにして、どんなふうにカットを割っていくか」を選ぶ才能はもちろん、今以上に必要になる。見開きに十数コマを配置する技術、それのみが、いらなくなる…のだろうか??
鉄砲が普及すれば、弓刀槍をいくら鍛えに鍛えた新選組も、価値が無くなっていくように…


そうなったときは、ひたすら寂しい光景になるだろうか。
新しい風景が、見られるだろうか。

(了)