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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「殺してほしいのよ」「添野の価値は500万ですか」…大木金太郎が挑戦した時の、大山倍達の台詞が生々しすぎる(添野義二 極真鎮魂歌)

GW「STAY HOME」企画。休日のひと時を楽しんでいただければ。

添野義二 極真鎮魂歌: 大山倍達外伝

添野義二 極真鎮魂歌: 大山倍達外伝

“極真の猛虎”が死ぬまでにどうしても書き残しておきたかったこと――。師・大山倍達の素顔から、第一回全日本選手権梶原一騎極真空手の真の関係、そして熊殺しウィリー・ウイリアムスの世界大会暴走反則やアントニオ猪木との格闘技戦まで。大山倍達の「鉄砲玉」として極真空手のさまざまな事件で体を張り続けた歴史の生き証人が、すべてを明かした! 驚愕の回顧録完成、ついに封印は解かれた!

以前、同書における登場人物の「相互の悪口」を紹介させていただきました。

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最初の記事の時

後半を彩る 「大山総裁、国会議員になりたかった話(選挙出馬寸前の話)」大木金太郎大山倍達に挑戦した時の話」「世界大会、ウイリー・ウイリアムス反則暴走の真実」「アントニオ猪木対ウィリー・ウィリアムスの真実」など はどのエピソードも極めて興味深いのだが、体系立てて紹介するにはこちらもちょっと体力や準備時間が必要だ。

と書いたのだけど、約1年後に、やっと第二弾だけお届けする。選んだのは「大木金太郎大山倍達に挑戦した時の話」。

まず、大前提となる騒動の概要を…

昭和50年6月9日付けの毎日新聞極真空手の大山館長のコラムが掲載されました。

大山倍達 わが人生のとき(昭和50年6月9日付)

日本プロレス界の王者といわれた力道山さえも勝てなかったアメリカ実力ナンバーワンのタム・ライスを含めて270回戦って連勝しましたが
~中略~

(略)
その後の6月17日に今度は大木さんが緊急会見を開き、大山館長のコラム「日本プロレス界の王者といわれた力道山さえも勝てなかった」という部分に猛クレーム。

大山館長に挑戦状を出すと宣言しました。

大木さんのコメント
「これを読んだ時、私は顔を逆なでされたような気分になりましたよ。そうじゃないですか、力道山先生はタム・ライスにちゃーんと勝ってますよ。それなのに、こんな形で力道山先生の名前を利用するなんてけしからんです。恩師力道山を侮辱するとは許せん、空手の大山、俺と戦え」

この会見に返答する形で、極真会側が会見。大山館長、弁護士の館氏、極真評議員梶原一騎先生が同席しました。

大山館長のコメント
「私は力道山を侮辱する気持ちなんかもうとう持っていない。だいいち力道山に空手を教えたのは私であり、彼とは友人だ。それに、大木君に対してもこれまで影ではいろいろと応援もしてきたぐらいで、なぜ挑戦などされるのか、まったくその真意がわからない。感情だけで人を批判するのは好ましい態度ではないし、大木君の発言によると、空手が強いかプロレスが強いか比べようじゃないか、という風にもとれる。これは私に言わせればナンセンス、やれるもんじゃない。大木君は正式な挑戦状を出すという発言をしていますが、あれから二週間以上たった現在、まだ私の手元には届いておりません。これは一体どういうことですか?大木君がどうしてもというなら受けざるを得ないでしょう。降りかかってくる火の粉は振り払わなければならないですからね」

猪木さんとの対戦は拒否した大山館長ですが、記者会見まで開いた大木さんに対しては「極真は後ろを見せられない」と戦う意思を表明しました。
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「極真鎮魂歌」では、この舞台裏を、こう描写している。以下、人物の「発言」を基本的にピックアップして、つなげていきたい。

添野義二

三流レスラーの分際で何が「挑戦」だ?大山倍達をバカにすることは、我々極真会館全体を愚弄することを意味している。
「ならば俺が大木とやってやる。大木と猪木が繋がっているならば、ついでに猪木の長い顎を粉々に砕いてやる」-私は独り、いきり立った。

大山倍達(※同書では、大山氏の「訛り」を表記的にも再現しています)

「私が大木などに負けるはずはない。いつたって勝負してやるよ、あんなプロレスラーの成りそこないに天下の大山が負けるはずないじゃないのよ。猪木と互角にプロレスやって母国に凱旋したつもりが飯が食えず、今度は私に挑戦して名を上げようとしたに違いない。ひょっとしたら後ろに猪木が絡んでいるかもしれんが、猪木も大木も私に言わせれば半人前の小僧にすぎないよ。小僧連中にバカにされて黙っている大山じゃないよ。ヤツら、まとめて大恥をかかせてやるよ」

「うーん、許せん。だが、私が直接戦うわけにはいかないのよ。分かるかね、いまの私は何万人もの会員やファンが極真会館を支えているんだから。組織の長である私には責任があるんた。昔の私ならばとっくにいま頃、大木の首をへし折っているよ。でも私は昔の私じゃないんたよ、分かるかね。立場というものがあるのよ。戦いたくても戦うわけにはいかないのよ。第一、私は力道山を貶したこともないし彼とは古い親友たったんたから。大木は勘違いしてるのよ。いわれのない中傷を私は大木から受けているんた。戦うにしても、まずは大木の誤解を解いてからにしないと仇討ちの敵にされてしまうじゃないの。タム・ライスのことだって力道山が勝ったことは知っているよ。ただ梶原先生が「空手バカ一代」で大袈裟に描いたものだから誤解が大きくなった。それは梶原先生も認めているんた、梶原先生にも責任があるんたよ」

添野義二

「館長,いかなる理由があれ、大木は館長と戦うといっているんですから、大木の挑戦理由などに答える前にまず『喜んで挑戦を受ける』と突っ張るのが先じゃないでしょうか。どうせ、自分はあんな大木相手に館長を煩わせることなどしません。弟子である自分らが潰してやりますから」

大山倍達

「添野、私は被害者たよ。たからね、ここは極真の名誉のために、私ではなく極真会の若手が挑戦を受けるという宣言をしたいと考えていたのよ。となれば頼れるのは芦原か添野しかいない。芦原は言うことを聞かないから......、添野、君はさすがに極真の虎たよ。ならばどうだね、添野が自分の言葉で大木と戦うと記者会見で言ってもらえないか? 分かるね? 本当はこの大山が戦いたいのよ、完勝する自信はあるんたから」

添野義二

「館長、当然です。自分が大木とやりますし、もし大木と猪木がツルんでいるなら、ついでに猪木とも戦ってきますから、任せてください。大丈夫です、ヤツらはこれで金儲けでもしたいのでしょう。プロレス流にリングに上るなど、ヤツらの引き立て役などしませんから。リングではなく公園でも道路でも、あくまで実戦で片をつけます

大山倍達

「添野、なにも大木を殺すことはないが、ヤツの右腕たけは確実に折って欲しいのよ、肘も肩も手首も使えなくしてくれ。そうすれば、もう大木はプロレスが出来なくなるからね。どうせヤツは朝鮮人だから、日本のプロレス界にとってはどうでもいい人間だからね」

※(『えっ?館長だって大木と同胞じゃないですか......。そう言いかけて、私は口をつぐんだ。一瞬、どうしようもない失望感を館長に覚えた』と、添野氏は心境を語っている)

「イヤー、添野。どうせならば大木を殺してくれないか。プロレスのリングに上がったら周りの連中に止められる。腕を折るのがせいぜいだ。たから別のどこかで乱闘に持ち込んで正当防衛って感じで絞め殺すなりしてくれんか。なまじ半殺し程度で生かしておいたら、いつ私の命を狙いにくるか分からないからね。殺しておくのが一番いい。とにかく手段は選ばない。師である私は、いわば君の親たよ。親が公衆の前で侮辱されたんたから、殺してくれ。後の面倒はこの大山が約束する」

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大木金太郎 に挑戦された時の大山倍達(添野義二「極真鎮魂歌」)

添野義二

「大木を殺せと言われれば自分はノーとは言えません。しかし自分にも親はいるし家族もある身です。たとえ師匠の誇りを守るためといっても、自分の家族を犠牲には出来ませんよ。せめて自分が刑務所に入っている間の生活くらいは面倒見てもらえないと受けられる話じゃありません。どうですか、館長」

大山倍達

「五百、五百万でどうかな?

添野義二

「館長、今の話は聞かなかったことにさせて頂きます。自分はヤクザじゃないし、殺し屋でもありません。武道の世界で心身を磨く生活をしている身です。そんな自分に館長は身も心も汚せという。添野には五百万円程度の価値しかないと言っているようなものです。これ以上話をしたら自分は館長の弟子ではいられなくなります。いずれにせよ、大木の件では館長を煩わせません。自分がリングでも街中でも大木を半殺しにしますから、それで抑えてください」

「もうすでに『東京スポーツ』の記事は全国の道場生が目にしていると思います。自分以外、他の支部長や選手からは連絡ないんですか?誰も自分が館長の代わりに大木を潰すと言ってこないんですか?自分以外に適任者はいないとでも思ってるんですかね、芦原先輩も逃げ口上だったし」

大山倍達

「梶原先生がね、弟(真樹)がやると言ってくれたようだが、わざわざ真樹先生に迷惑をかけたくない。郷田も盧山も(佐藤)勝昭も何も言ってこないのよ」

梶原一騎

「(略)…とにかく真樹が大木を潰すと騒いでいるが、俺は真樹に手は出させねえ。何の得もねえんだから。添野もそうだよ、早まって大木はもちろん猪木に挑戦宣言などしない方がいい。やる気になればいつでもやれるんだから。大山さんは表面は強がっているけれど、明らかにビビっているし、半年トレーニングすれば勝てると言いながら本心はもう逃げているのがありありでね。あんな大山倍達を見たのは初めてだよ、『昭和の武蔵』はどこに行った?そんな感じだよ。俺だって大山さんを戦わせるわけにはいかねえくらい分かっている。ただ、まんざら俺も第三者ではいられねえから困っている」

ちなみに、この騒動の最終決着的には…同書では『結局、あれは大木の一人芝居。大阪の柳川次郎さんにずいぶん説教され、腕を骨折して韓国に帰ったと聞いています』という、桜井康雄氏の言葉を引用している。梶原一騎氏も「何もかも最後のケジメをつけてくれたのが柳川先生」と話したそうだ。

柳川次郎とは、「男の星座」でも有名な「殺しの柳川」。

男の星座7

男の星座7

殺しの柳川 日韓戦後秘史

殺しの柳川 日韓戦後秘史


感想

今回、引用・内容を大幅に省略して、いわば「会話劇」に再構成したわけだけど、ただそもそも論で言えば、会話の趣旨は取材の成果だとして、テープレコーダーで録音したわけでもないこの長文の会話は、さすがに細部までの正確性は保証できないと思う(笑)
でもまあ、趣旨が大きくかけ離れている、ともそれは言えまい。
さすがに中国史書ほどでもないんじゃないかと。
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にしても、これは本の中でも語られているが、大山倍達がカネに汚いとか、嫉妬深いとか、そういう部分ではなく
「プロレスラーにケンカを売られて、どう対処(しようと)したか?」という「武道家大山倍達」の評価に関わる部分なのである。

梶原一騎自身も、これ以前に何度も経営や金銭面の部分での怒りや失望はあったが、「情けねぇなあ」と、武道家としての大山に決定的に失望したという。こと強さに関しては、かなり純粋で少年的な英雄崇拝があったというのだ。
「あんな大山倍達を見たのは初めてだよ、『昭和の武蔵』はどこに行った?そんな感じだよ」
は、重い。


時に、この会話劇、腕利きの声優でも呼んでラジオドラマにでもできないだろうか。
へたなやくざ映画よりスリリングだぜ。前の記事ではタイトルに、映画「アウトレイジ」のキャッチコピー「全員、悪人。」を借りたが…ほんとに大山倍達が、体型も含め「仁義なき戦い」の金子信夫にダブって見える。