お馴染み、カスガさんのツイートから。
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※「創作系譜論」は一種の準タグです。この言葉で検索すると関連の記事が見つかります
#無料で読める小説
— カスガ (@kasuga391) April 21, 2020
『ミッチェル短篇集』https://t.co/bdF2CxTrwZ
H・G・ウェルズ以前にタイムトラベル、透明人間、冷凍睡眠、人工知能等のアイデアを描いた19世紀SFの失われた巨人、E・P・ミッチェル短篇の日本語訳。
特に以下の三作品は、現代のSFアンソロジーに載っていても違和感のない作品です。 pic.twitter.com/U555WngK3u
『逆回りした時計』https://t.co/5LRU3Yyaob
— カスガ (@kasuga391) April 21, 2020
19世紀のアメリカ人青年ふたりが、「時間を逆行する時計」によって先祖の住む16世紀のオランダを訪れ、ライデン包囲戦に立ち会う話。
明示されてはいないけれど、“タイムトラベルによる因果のループ”を扱った最初の創作ではないかと思う。
『水晶人間』https://t.co/y3M9bMyjuk
— カスガ (@kasuga391) April 21, 2020
透明人間になる方法を発見した科学者の実験台となった青年が、科学者の死により元の姿に戻る手段も失われてしまい――という話。
「体内の色素を破壊することで透明人間になる」というアイデアはウェルズと同じだけど、こっちの方が早い。
『世界一有能な男』https://t.co/IroOEnhLgL
— カスガ (@kasuga391) April 21, 2020
時計技師の老人が発明した推論機械の脳を持つ絶対無謬の人造人間が、世界の支配者となるべく革命前のロシアでのし上がっていく話。
作中の人造人間のモデルはナポレオンだと思うが、舞台が舞台だけにスターリンの方を連想してしまう。
自分のSF史的な知識(というかSFへの興味そのもの)は筒井康隆が書いた永遠の名著「SF教室」によるものが多い。
- 作者:筒井康隆
- 発売日: 2014/11/30
- メディア: 単行本
だが、その本でもはっきり「タイムマシン、透明人間、マッドサイエンティスト、反重力物質、星と星の衝突など、今に受け継がれるアイデアをH・G・ウエルズは次々と創案した功労者」みたいな話を描いていた。
実際、タイムマシンも宇宙戦争も、今読んでも面白い作品だから文句ない。宇宙戦争、映画にもなったし、いまコミック化の真っ最中だし。
- 作者:H.G. ウェルズ
- 発売日: 2005/06/01
- メディア: 文庫
- 作者:H.G. ウェルズ
- 発売日: 2003/06/19
- メディア: 新書
で、あったとしても。
それより先に、そういうアイデアで小説を書いた人がいた、というのは、あまりにもすごいことだ。
アイデア自身は、別に権利で保護されるわけではないのです。そしてすぐれたアイデアやガジェットは、そもそも追随者がいたからこそ「ジャンル」になるのです(これがとり・みき先生が提唱した「ジャングル大帝ものの法則」だ。)
それでも、先に考えた人が報われないのはちょっとつらい。
「ゾンビを捕獲する公務員がいる」というアイデアを先に漫画に描いていたのに、原作扱いされずにアイデア拝借のドラマがつくられた、とかどころではないのだ。
m-dojo.hatenadiary.com
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しかし、昔だったらこの人について調べることも不可能だったろうけど、いまはすごい。ウィキペディアの日本語項目はないみたい(英語は存在)だけど、いくつかのページがある。
dic.pixiv.net
彼は1927年に亡くなり、長らく存在すら知られていなかった作家でしたが、それから半世紀近くを経た1973年に『The Sun』紙に掲載された彼の作品が一冊の本にまとめられました。埋もれていた彼の業績はそこでようやく人々の知るところになり、今日ではSF小説の先駆者の一人として知られています。
E・P・ミッチェルの作品について
彼の作品に際立つものは、その卓抜した先見性です。1881年に発表した『The Clock that Went Backward』では、H.G.ウェルズの『タイムマシン』に先んじてタイムスリップをする機械について書いている上に、同じく1881年に発表された『The Crystal Man』では、これまたH.G.ウェルズの『透明人間』よりも先に、科学の力で透明になる人間の話が書かれています。H.G.ウェルズが、『The Sun』誌の彼の作品を見て着想したと言われても誰も疑いはしないでしょう。他にも1879年の『The Ablest Man in the World』ではサイボーグを、1877年の『The Man without a Body』ではテレポーテーションを扱っています。1879年に発表した作品『The Senator’s Daughter』で、彼は1937年の60年後の未来を描き、作中では電気ヒーター、FAX、コールドスリープ、国際放送などの登場が予言されており、彼が如何に先進的なSF作家であったかが理解できます。
読み捨てられたり、無署名記事だったり、本人が作家としてではなく、編集者としてその後を歩み、自分の作品の再評価に恐らく興味がなかった……という事情があるらしく、別にウエルズがパクったわけでもないらしい。
H・G・ウェルズが各種の「元祖」扱いされるのは、第二世代の有力者が彼を「開祖・神様」扱いしたから??
なぜに、ウエルズが透明人間や時間旅行の「創始者」あつかいなのかといえば
手塚治虫が漫画の神様と言われるのは、藤子不二雄がリスペクトし「まんが道」を書いたから、というのと似た構図があるらしい。
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これも「すごく先進的に、未来の科学技術を予測した(かなり多くが現実に登場した)」ことで知られる(作品自体はあまり評価されてないかも…)ガーンズパックというひとが、とくにウエルズ愛好者で、その時点でひと昔前の作品だったウェルズSFを再録した、ということもあるようだ。
この手の刷り込み現象は今に始まった話じゃなくて、「タイムマシンや反重力や冷凍睡眠や透明人間などSFガジェットの大半はH・G・ウェルズが発明した」という誤った“神話”が生まれたのも、ガーンズバックが黎明期のアメージング・ストーリーズ誌にウェルズのSFを再録しまくったせいだと思う。
— カスガ (@kasuga391) July 28, 2019
少年時代のアシモフやクラークやブラッドベリは、アメージング・ストーリーズ誌に掲載されたウェルズの作品を胸を躍らせながら読んだことであろう。
— カスガ (@kasuga391) July 28, 2019
ウェルズが30年前にそれらの作品を書いた時点で、既に反重力もタイムトラベルも透明人間も既出のアイデアだったことなど知らないままに。
そして彼ら自身がSF界の大御所になったとき、エッセイやインタビューでこう答えたのだ。
— カスガ (@kasuga391) July 28, 2019
「私のSF作品のアイデアが素晴らしいって? 違うよ、あれは全部ウェルズが発明したんだよ」と。
ではあるが、けっきょく評価とか顕彰とかは他人が、自己満足でやるものだ。
これだけの業績をあげた、「栄光なき天才」であるE・P・ミッチェル、皆さん覚えて持ち帰ってください。
余談 はてなはtwitterを埋め込むと、リプ形式の場合リプ元が「必ず」表示される形式をなんとかしておくれ。
並べると、連続して読むのが妨害されるんじゃー。
自分は、…複数にわたるツイートを埋め込んで、連続して読ませたいんですよ。だが、リプ形式のツイートはリプ元を表示する親切設計のせいで、かえって連ツイを読ませにくくなっているんです。
決して、元の形式がダメなんじゃなくて、それが便利の時もある。できれば、「リプ先を表示しますか?」を選択できればと思う。
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