どちらもパワーワードだなあ。
全国の書店員が一番売りたい本を投票で選ぶ第17回本屋大賞が7日、凪良(なぎら)ゆうさん(47)の小説「流浪の月」(東京創元社)に決まったと発表された。凪良さんはボーイズラブ(BL)小説のジャンルで10年以上のキャリアを持つ。BLより広い読者に向けて書いたのは受賞作が3冊目。小説に踏み出したきっかけは、「銀河英雄伝説」の二次創作に30代ではまったことだ。作家としては異色のキャリアだが、人と人が理解し合えない生きづらさを、一貫して書き続けてきた。
――本屋大賞の受賞が決まりました。
「ありがたいなと思います。ずっとBLでやってきて、一般文芸で、(文庫ではなく)単行本を出すのは初めて。いうなれば、ど新人じゃないですか。それなのに、東京創元社さんがすごく破格に期待をかけて、力を入れてくださった。ほんとうに書店員さんの口コミで少しずつ広がっていって、一個ずつ力をいただけて応援してもらえたことが、ここにつながったので、ほんとうに奇跡だなと思っています」
――受賞作「流浪の月」は、9歳の女の子を大学生が誘拐するという刺激の強い設定です。これほど世間に受け入れられたのはなぜ…(後略)
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
- 作者:凪良 ゆう
- 発売日: 2019/08/29
- メディア: 単行本
著者について
2007年、長編『花嫁はマリッジブルー』で本格的デビュー。以降、各社でBL作品を精力的に刊行し、デビュー10周年を迎えた17年には初の非BL作品『神さまのビオトープ』を発表、作風を広げた。巧みな人物造形や展開の妙、そして心の動きを描く丁寧な筆致が印象的な実力派である。おもな著作に『未完成』『真夜中クロニクル』『365+1』『美しい彼』『わたしの美しい庭』などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
凪良/ゆう
滋賀県生まれ。“小説花丸”2006年冬の号に中編「恋するエゴイスト」が掲載される。翌年、長編『花嫁はマリッジブルー』で本格的にデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
たぶん、ご経歴も受賞作の内容も、こう、伝聞で聞く限りでは少なくとも「not for me」なんですけどね。
それでも「二次創作」からこういう大きな賞をとる作家が現れるというのは、まるでジ・アウトサイダーから日本のトップ級の総合格闘家が登場するようなもので面白い。ただ、そうなってもおかしくないことも事実だ。
もう漫画界では「きのう何食べた?」のよしながふみ、「昭和元禄落語心中」の雲田はるこしか自分のアンテナではキャッチできないけど、たぶん、もっとたくさんいるでしょう。
以前かいたことあるけど、まず二次創作をしてみて、最後に主人公と相手の名前を一括変換でオリジナルの名前に変えれば、それで創作小説になるようなものもあるらしい(笑)
これだな。
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実例としては
福音の少年 Good News Boy―闇の王子 (徳間デュアル文庫)
- 作者:加地 尚武
- メディア: 単行本
ちなみに、上の記事のブクマに、「著作権侵害の銀英伝二次創作を称揚していいのか」みたいな議論がありましたが、これ、私が調べた限りでは、専門家の意見でも「違法ではない」らしいんです(小説は。絵が付く漫画では「キャラクターデザイン」を必然的にマネするので異なるようだ)
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「少女の誘拐がテーマ」???第二の「幸色のワンルーム」になるか、どうか
アマゾンの紹介文をもう一回見直そう。
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
三浦英之 「南三陸日記」にPCJF奨励賞 @miura_hideyuki
この記事を読んで驚愕した。新潟や岡山で女児惨殺事件が次々と報じられる中、「女児誘拐」を肯定するかのようなドラマを本当に放映するのか。あり得ない。遺族の痛みは? 模倣犯のリスクは? テレビ局は決定責任者を明示し、公共電波を使って放送する意義をまず説明すべきだmainichi.jp/articles/20180…
2018-06-02 17:41:13
三浦英之 「南三陸日記」にPCJF奨励賞 @miura_hideyuki
僕が間違ってるのかな? 表現の自由は絶対に守られるべきだ。でもそこには責任が伴う。2人の娘を持つ父親として、この記事に記されているドラマの内容とその無批判性は危険すぎる。どんな「誘拐」も絶対に肯定されない。それこそが今メディアが絶対的に発しなければならないメッセージなのに twitter.com/miura_hideyuki…
2018-06-02 17:46:42※上の2ツイートは埋め込みをしようとするとできないので、削除されたかもしれない。以下のまとめで読むことができる
togetter.com
このドラマに関しての「誘拐を肯定するのか、あるいはそういう雰囲気をつくるんじゃないか」的な議論はこちらで。
togetter.com
太田啓子弁護士を呼び覚ませ!!
「現実の殺人事件、強盗事件の犯人は『これは人を殺す行為だ』『これは強盗だ』ということを通常は認識しているでしょう。その上で『こんなひどいやつは殺されて当然なんだ』『金に困っていたんだから仕方なかったんだ』『あいつは金持ちなんだから、これくらいとられてもどうってことないはずだ』などと、その行為を正当化したり軽く考えようとするようなことはあるかもしれませんが、行為そのものが『人を殺す行為だ』とか『無理矢理財産を奪う行為だ』という認識は普通はしているはずです」
しかし一方で、誘拐犯はというと、「例えば、朝霞市での事件や新潟で女児を9年監禁していた事件などでは、犯人は『仲の良い友達として暮らしていた』『自分と一緒にいることを嫌がっていたはずはない』などという趣旨の供述をします。罪を軽くしたくて嘘を強弁しているというより、行為自体への認知が歪んでおり、本気でそのように思い込んでいるのではないでしょうか。強盗や殺人と違い、そもそも自分の行為が、被害者の意思に反する誘拐であること自体、認識していないことが往々にあります。行為自体への認知に歪みがあることが、よく見られるという点……それが、『殺人や強盗』と『誘拐』の重要な違いです」。
例えば『名探偵コナン』や『ルパン三世』の中で描かれる殺人や強盗は、「殺人、強盗として描かれており『人を殺したけれど実は殺人じゃない』というような歪んだ認知に基づく描写はされません。ところが『幸色のワンルーム』では、幸が『お兄さんがしたことは誘拐だ』と言いつつも、それが幸の意思に反することだとは描かれていないのです。幸は、お兄さんと一緒にいることを喜び、肯定しているという描写になっています。これは、実際の女児誘拐犯が『こうであってほしい』と勝手に思い込んでいる歪んだ認知そのものの描写です」と、太田氏は述べる。
太田氏いわく、『幸色のワンルーム』は、加害者や一部の人が事件に抱いたであろう妄想を作品にしたものであり、「実在の被害者に対する中傷そのものだと思う」という。
話の内容を知りたくて検索してみた。こんなレビューが
www.bookbang.jp誘拐された少女と誘拐した青年が十五年の時を経て再びめぐり会う。しかも青年――三十四歳になった文は、昔とほとんど変わらない。職業はカフェのマスターで、手足は長く、〈甘くて冷たい。半透明の磨りガラスのような声〉をしている。大人の女性が好きじゃないという危うさはありつつ、見た目に不潔感はなく優しい。いかにも家庭に事情を抱えている孤独な少女が攫ってほしいと夢見るような、現実味の薄いヒーローに思える。ふたりが恋に落ちたとしたら、ありきたりで幼稚な話になっただろう。しかし文と更紗は恋人でも友達でも敵味方でもない。本書は一対一の人間関係に新たな可能性を切り開いているのだ。
更紗は文が好きだけれども、彼に対する気持ちは〈恋とか愛とか、そういう名前をつけられる場所にはない。どうしてもなにかに喩えるならば、聖域、という言葉が一番近い〉と考えている。同時に、文のそばにいることを強く望む。生きるために彼が必要だからだ。更紗の感情は恋愛とどう違うのか。
さて、凪良(なぎら)ゆうさん(47)の小説「流浪の月」も、9歳の女の子を誘拐というテーマだが……なにせ未読なので、話の展開的に、”幸色のワンルームのように肯定的(その前提が正しいかもわからんが)”ではない描写やストーリーなのかもしれない。そうでないかもしれない。
ただまあ、議論が沸き起こるかもしれないですねー。
ただし!!そもそも「誘拐」をテーマにしたもので「その結果、誘拐犯と被害者が仲良くなっちゃった」とか「実は世間では誘拐犯と思われてるけど、あの人は自分を守ってくれていたんだ。そのことはわたしだけが解ってる」みたいなのは、ひとつの創作系譜論として、ずっと続いていたのですね。というか「犯罪者だけど善人もの」という大きなジャンルのひとつにすぎない(※元祖はアルセーヌ・ルパンではないか、という仮説もあるが、ご検証ください)
そのジャンル自体が、どうなっていくことでしょうか。
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