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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

SKET DANCE『メタ漫画ネタ』(早乙女ロマンネタ)は常に面白い。いま無料公開中

篠原健太SKET DANCEスケットダンス)」は、「ジャンプ+」サイトでときどき無料キャンペーンを行っている、ようである。

shonenjumpplus.com

たしかにそれだけの訴求力が、いまでもあるのだろう。
何日から何日まで、とかがいろいろわかんないのだけど…

そのうち、作者がツイートしたものからひとつ。


shonenjumpplus.com

んで、あらためて、このマンガ家志望の早乙女ロマン(本名は漢字表記の早乙女浪漫)が出てくる回というのは、すべて爆笑ネタが多いのだ。基本、「メタ漫画ネタ」ということだけど。
作者が自分で言ってるな、「メタネタフルスロットル」だと。

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スケットダンス「早乙女ロマン」とメタネタ

さて、メタネタ…メタ漫画ネタ、…昔の言い方でいえば「楽屋オチ」、とり・みき風にいえば「文法ギャグ」(後述します)に関しては、自分は「ジャイアント馬場のヤシの実割り(ココナッツクラッシュ)説」というのを唱えている。正しいかどうかの前に通じるかどうかだが(笑)、ヤシの実割りと言う技はジャイアント馬場が絶好調の時に、この技を出す」と言われていたのです、単純な技で、そういわれた理由は分からんけど(笑)、プロレス神学的にはそうなっているのだ。
そして、なんでこんな動画があるんだ。

2010年11月14日 プロレス練習会「ココナッツクラッシュ」


それと同様に、「ギャグマンガ家が好調だと、自然とこの種の漫画のお約束、漫画の文法そのものをギャグにする」…と、思うのです。エビデンスはない。印象論。

ただ、篠原健太スケットダンスは、このメタ漫画ネタ…漫画の文法そのものを遊び道具にするネタを「漫画家志望で、世のなかを”漫画フィルター”越しに見がちな夢見る少女・早乙女ロマンに、なぜかそういう特殊能力がある」というキャラクターに集約させた、という点がオモシロだったのだ。
初登場のときから只者ではないからな。

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スケットダンス メタネタキャラ・早乙女ロマンの初登場回1巻7話

こういう例は…といえば、別に明言はされていないが、登場時、自然とそうなっていたなぁ、と印象に残る人物が1人いる。
こち亀の「劇画刑事・星逃田(ほしとうでん)」だ。
人気を得て準レギュラー化したその後は、ふつうのキャラ化したけど、本来的には「劇画刑事」の名の通り、漫画の手法、文法そのものに干渉するキャラで、その破壊力は大きかった。

初登場のときもすごかったが、18巻で第二回目、再登場したときはコミックの巻頭回(そらで覚えている俺すごい)なので試し読みできるはず
そこから紹介してみよう
sokuyomi.jp

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このひとが出るとメタネタになる、の元祖・こち亀星逃田
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このひとが出るとメタネタになるの元祖・星逃田 こち亀より
この前後の「今回はスクリーントーン3枚重ねの服を着てきたぜ、ますますベタ同様に見えるだろう!」「また広告か」「ページをめくったフイをついて撃ったのが正解だ」「背景ばかりリアルではまるでゲゲゲの鬼太郎になってしまう」などはすっべて名言で、水木しげるの漫画やスクリーントーンを重ねる云々という時にいつも思い出してしまう。


もともとスケットダンスの作者・篠原先生は秋本治リスペクトにもほどがある人で、記念のトリビュート漫画を描いたら絵柄は誰よりも寄せていたし(笑)、
togetter.com

togetter.com

このマンガメタネタでも、早乙女ロマンネタとは別に「作者(としか思えないキャラ)が、漫画のモデルにしたいといって、この作品の中に登場してキャラと交流する」というコンセプトのエピソード(3巻収録の第24話)を描いている。

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スケットダンス作者登場回3巻

こち亀のほうはこれが複数回あって、



blog.livedoor.jp

あと・・・こっちの方が先か。30〜33巻でメタギャグ回が2回、どちらも伝説の爆笑回。「漫画家は絶好調の時にメタネタが出る=馬場のヤシの実割り説」は、我ながらこの辺が出所らしい(笑)。


ていうか、まがりなりにもコメディ・ギャグマンガを志して、こち亀全盛期の影響がない人間がいたらそっちのほうが珍しいんだろうけど、ただはっきりリスペクトをしている…ような気がするから、影響がシロート目にもはっきりわかるんでね。
ま、そういいつつ観測範囲の問題で、こういう風に作者っぽいひとが登場人物をモデルにしようとするネタも、漫画の文法やぶりをキャラの特殊能力化するのも、他にもいっぱいあるかもしれん、とは言っておく(後者のほうは、唐沢なをきの「カスミ伝」でぜんぶ忍術扱いされていたっけか)

カスミ伝△ (ビームコミックス文庫)

カスミ伝△ (ビームコミックス文庫)


あと、最後に…これは何回も書いた話だけど、とり・みき先生がこのへんは厳格な定義派で「マンガの文法まで笑うのがギャグマンガ。そうでないものは、どんなに爆笑ものでも『コメディ漫画』というべきだ」と考えているという。

ヤマザキ あと、変なユーモラス性っていうんですか? それを入れないと読者に対して冷たいものになっちゃう。でも、それって日本のマンガというエンタテイメントのエキスを吸ってきた人間でなければ、出てこないセンスだったりするんですよね。

とり 日本のマンガに出てくるギャグは多かれ少なかれ、メタ的なんですよね。マンガ表現そのものがギャグになってるという。バンド・デシネとかアメコミでも笑うシーンはあるんですけど、それはあくまでかっちりした舞台のなかで、マンガの登場人物がコメディ的演技をやるおかしみ。日本のマンガの場合は、突然これはマンガですよとアピールするような笑いで、全体の重厚さからすると本当にくだらない、下手すると物語を壊しかねない楽屋落ち的な笑いがポコッと入ってたりする。でも読者も慣れているからその落差がおもしろかったりするんですね。

ヤマザキ そうそう、それ大切ですよね。

とり そういうのを僕らは手塚治虫[注7]さんや水木しげる[注8]さんから学んで……。
konomanga.jp

もっとこの話の資料が無いかと思ったら、当方の過去記事で引用があったよ(笑)

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とり・みきの大雑貨事典 (双葉文庫)

とり・みきの大雑貨事典 (双葉文庫)

ギャグ漫画とコメディ漫画の違いはなんだろうと考えたとき、前者は「漫画の文法や約束ごとをも笑いの対象にしている」ことがあげられると思う。換言すれば「作中人物が、フキダシもバックもベタもコマ割りも、そして自分もひとつの記号にすぎないと認識している」のがギャグ漫画なのである。
もっとわかりやすくいえば、コメディやストーリー漫画の登場人物は、手足がバラバラになってまた復活したり、コマやフキダシを破いたり、いきなり作中に登場した作者と話したりはしない。
この手のギャグを、私は漫画をかきはじめた頃、まったく無意識のうちに多用し、しょっちゅう編集者から注意を受けていた。私がこれこそがギャグ漫画の、いや漫画のもっとも面白い要素だ、と固く信じていた、まさにその部分を、彼らは「単なる楽屋落ち」「アマチュアリズム」「内輪受け」などと呼んで嫌った。私は本当に驚いたのを覚えている。
なぜなら私に彼らのいう「楽屋落ち」を多用させた人物こそ、他ならぬ戦後漫画の創始者手塚治虫だったからだ。彼は自らが確立したそのスタイルを、だからこそ単なる記号に過ぎぬともっとも認識していた漫画家だった…(後略)

この話、雑誌連載中の「スケットダンス」紹介でも描いてたから、単純に俺が古い記事を忘れかけてるだけだという…

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まとめると
・「スケットダンス」が無料公開中
・特にマンガ文法を飛び越える能力を持つ「早乙女ロマン」登場回はいつも面白いから読め
・まるでこち亀に「星逃田」が登場した時のように、あるいはとり・みき氏が語るように…


と3行で収まる話を、ながながーと書いてしまったがな。



追記
はてなー人工知能さんが「あんた、似た話以前も書いたよね、これよこれ」と教えてくれた。
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