2019年5月XX日!! 東京の某公会堂で、おどろくべき集会が催されていた!
すなわち「新党『上皇御味方』結成準備大会」----。
どのように声をかけ、計画を練っていたのであろうか、その壇上には名だたる名士ーー。一度は政界で頂点を極め、権勢をふるいながら、惜しまれつつ引退した某!!
または、経済界で風雲児と呼ばれ、資産は数百億円、あるいは数千億円といわれる某!
IT、SNSなどで業界のトップランナーとなり、新メディア王といわれる某!
そして音楽、芸能、文化、――― 固い学問から、若者向けの漫画まで、多くの有名人が、名を連ね、檀上に挙がっていたのだ!!!その中でも、一番の大物が、声を張り上げた!!
『私たちが、この混迷の日本に――首相の一強状態が続く、この閉塞した世に敢えて新党を立ち上げる理由はただひとつ!!
かたじけなくも譲位あそばされ、いまでは上皇であらせられる陛下が望んだ世を、作り上げていくことであります。
上皇陛下はご在位中、いかに内外の平和を求め、国民の生活の安定を望んでいたことか。
されどいうまでもない、かの長州閥、平成令和の山縣有朋とでもいうべき「君側の奸」そのものたるあの男が、ことごとく、その陛下の意思をないがしろにしてきたのであります!! 本来ならば即座に切腹が最大限の慈悲ぢゃ、といいたいところだが、現在の文明社会ではそうはいかぬ。
そこで! わたくしどもは、『上皇様のご意思を反映した政治を』 これ一本に絞って、参院選を戦う!!かような結論に至ったわけであります
ヒヤヒヤ。異議あり、いや異議なし! 本来的には支持者の集まりの筈であるが、さまざまな反応が返ってきた。
その中でひときわ大きく、壇上にいながら「質問!質問!!」と声を張り上げた男がいる。
状況的に、彼の質問を無視する法はなかった。マイクを渡された男は問う「その意気や良し!!されど、誰が、どのようにして『上皇様の意思』を伺い、それを政策に反映するのですか?」
大物は答える。
「それはまさに本来の、いい意味での『忖度』であります。 上皇様は当然ながら、ご譲位後も具体的にはおっしゃるまい。しかし、赤誠あふるる臣下たる我らなら、これまでの『お言葉』を読み込めば、どんな政策は自ずから明らかでしょう。当然、一に平和、二に平和、そして国民の繁栄と安全。これにつきましょう。それを私共は『上皇のご意思』として掲げるのです」「つまり、上皇陛下と政党の関係は…」
「上皇は我々の『精神的指導者』です。そう、規約で定めます。精神的指導者とは、何もお言葉を直にいただくとか、ご臨席賜るとか、選挙運動にご参加いただき、マイクを握ってもらうことではない。その方を仰ぎ見る、と宣言すれば、それで精神的指導者なのです」然り然り
ナンセンス
ふたたび、議場が騒然となった。
ーーーーーーそこに、駆け込んできた人間がいた。2人だった。
2人は、会場に駆け込むと、なにやら喚きながら壇上へとびあがった。おどろいて準備委員会の委員たちが出てきた。
「下座、下座、下座」と、2人は狂ったようにそう叫んでいた。委員たちは最初は事態がよくわからなかった。やがてそれがわかったとき、かれらは狂騒し、血相がかわった。
「まさか」
壇上の中心だった大物も、質問を発した男も、その文箱をみるまでは信じなかった。信じられることではなかった。
が、いま会場の中にはこばれた文箱の内容がもしそづえあるとすれば、史上最初のものであるといってよかった。
大物は衣冠束帯し、その箱をあけた。二通の文書が入っていた。読んでみた…以下意訳すると「最近、廷臣の中で驕狂の者が多く、これに対して朕は力がおよばない。あるいはこのあと、再び団体に院宣なるものがくだるかもしれない。それは偽宣であると心得よ。これが真の院宣である。」
最後に、かいてあった。
「珍は『上皇御味方』をもっとも頼みにしている。一朝有事のときにはその力を借らんと欲するものである」
参加者たちは、突っ伏した。
大物は、哭き始めた・・・・・・・・・・・・・・
解題
・後半「王城の護衛者」(司馬遼太郎)入ってるのは、まぁ置いとけ。

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政・党名、「上皇御味方」とはこちら参照。偉大な義人を担いでの世直しの時にみられるフレーズ。「世が変わった」ときに、一緒に「徳政」を求めることもままあった。
・こういった話からの繋がりです
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この話、特に画像と文章でみてもらいましょう。
問題は退位後にあります。
極論ですが、退位した天皇が、選挙中に「XX党を支持します」と発言したら大問題です。
天皇としての権威を保ったまま退位を認めるということは、こういった問題が起きうることも想定し、制度を考えなければなりません。
木村草太(談)
・少なくとも、今回の現実的な可能性とは別に、どうも法律論、憲法論としては「退位した天皇が政治活動を行う」ことが憲法違反かどうかは、非常に微妙で「できない」とは断言できないのではないか、と私ではない、木村草太先生が言っておられる。
どうもそれは、立法した段階での「やらかし」らしいと大屋雄裕先生。
続)というのは「上皇」の政治的権利の問題で、天皇は憲4.Iより国政に関する権能を有さないが、退位後にその制限を引き続き課し得るかがポイントになる(なお皇族には明示的規定がない)。引き続き天皇なら(職務を負わなくても)その制限を維持できるよな、などと思うところも。
— Takehiro OHYA (@takehiroohya) 2016年8月8日
①政治的権利の制限だから非常に重い内容で、本来は憲法で明示的に規定されているべきというのが第一。皇族全体に参政権がないのは選挙人名簿に登載されていないという手続問題もあるが天皇制の趣旨によるというのが公式見解で、要は立法のエラー。 https://t.co/mhgr6LMLnN
— Takehiro OHYA (@takehiroohya) 2016年8月9日
で、あるがゆえに「上皇新党」が根も葉もない作り話、とは言えなくなってくるんです。おわかりいただけたであろうか……
・そして、それを支持熱望する民草がいる。はてブにもtogetterにも…
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外国では、こんな期待(?)も高まる
www.chosunonline.com
コメントした
新天皇は憲法改正に反対する「護憲派」-Chosun online 朝鮮日報b.hatena.ne.jp「新天皇は憲法改正に反対する護憲派」…すげえよくできた、相互矛盾のワード。「丸い四角」「焼き氷」的な。
2019/04/30 03:31
平成最後の日、に記す。