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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ライトノベル「俺がお手紙をもらったので、もう一度親政をしなきゃならなくなった件」

これは11月23日に発表したかったのだけど、いろいろ遅れてしまった。
書いた後気づいたけど、文体をラノベっぽくする工夫を忘れてしまった。

23日夜。すべての儀式を終えた2人が、住居に戻ってきた。
「ふう、この年になると、やはり体力的にきつくなるな」
「あら、ぜんぜんそうは見えませんわ。お元気に見えますよ」
「まあ、これからさらに忙しくなるからな…ちょうど1カ月後の誕生祝賀イベント、あれはごたごたで開催できないかもしれないな」
「あら、バルコニーで『宣言』を読み上げることにすればいかがでしょう」
「そうだな…」

彼は、「手紙」を再びとって、読み直した。報道ではこの手紙は届いていないことになっていたが、そこは宮内庁幹部とのあうんの呼吸で、公にはそう報道されたものの、実際には手元に届き、ご高覧に達していたのだ。
「朕に、事態の打開を求める民草の思いがあるなら、応えねばならんな…」
「あら、きましたわ」
複数の人物が、最敬礼後、部屋に入ってきた。
宮内庁特務『八咫烏』、勅命によってものどもを召集いたしました」

 
彼らに、御苑の主が問う。
「朕が兵力は、いかほどか?」
 
「はっ、八瀬童子衆、ここに!わがほうの兵力は、5000人にて」

八瀬童子(やせどうじ、やせのどうじ、はせどうじ)は山城国愛宕郡八瀬郷(現在の京都府京都市左京区八瀬)に住み、比叡山延暦寺の雑役や駕輿丁(輿を担ぐ役)を務めた村落共同体の人々を指す。室町時代以降は天皇の臨時の駕輿丁も務めた。伝説では最澄伝教大師)が使役した鬼の子孫とされる。寺役に従事する者は結髪せず、長い髪を垂らしたいわゆる大童であり、履物も草履をはいた子供のような姿であったため童子と呼ばれた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E7%80%AC%E7%AB%A5%E5%AD%90

紫の衣に身を包んだ僧侶も、合掌して報告する。
「無論、延暦寺も全僧兵をあげてお味方に。興福寺もでございます。なぎなたを磨いて、お待ち申し上げます。遷座はなされますか?」
「状況が悪くなればな。だがその必要もなかろう」
本願寺も、今回は東、西を挙げてお味方申し上げます。すでに御文を全国に飛ばしておりますし、特に加賀では、一晩…いや1時間で、知事の首をすげかえて『百姓の持ちたる国』にいたしましょうぞ」


その後、語ったのは、迷彩服という場違いな服装の男だった。
「陛下の面前で、このような格好でお目見えすること、まことに恐懼の至りであります」
「なに、案ずることはない。蛤御門のときも、慶喜は甲冑で現れた。戦場は戦場の作法がある、というぞ」
「ははっ」
「では単刀直入に聞く。そちらの隊で、朕個人に忠誠を誓う勢力はどのくらいだ。」
「…まことに、まことにおそれおおいことです。本来、一兵卒に至るまでかくあるが当然ではありますが、しかし長州閥の跋扈するわが陸軍、いや陸上自衛隊は、一筋縄ではいきません。特に今の首相は、その長州閥の頂点に立つ男。自衛隊への影響力は相当なものです。よくいって6分か7分。悪くすると五分五分かと」
「それで十分だが・・・ただ、皇軍相打つことだけは、父のときでも最期の最後に避けられた。最後まで、その努力をするように」
「その時は、安倍側につくやつばらに、わが放送局から『お前たちの家族は逆賊になるので皆泣いておるゾ』と放送いたしましょうか・・・ただ経営委員に、賊側につく委員が増える前に決起がないと困りますが」
そう語ったのは、ある公営放送局に努めるアナウンサーあがりの男である。徳川の血筋でありながら、いやだからこそ、今回は朝廷側に忠誠を誓うと決めていた。
「まあ、その心配はございません。彼らが委員になる可能性は『永遠のゼロ』でございます・・・あっ御前にて軽口、失礼を。」

もう一度迷彩服の人間が続ける。
「問題は海上自衛隊でございます。海上は薩のものですが、薩長同盟の効力は、199年にわたるとされており、まだ有効期間が続いております。おそらく相当数、おそらく鹿児島は敵に回るでしょう」
「うむ…」
「ならば、山口攻めはぜひともこの福島の『平成白虎隊』におまかせを!もともとこの騒動、福島の現状を憂いた、憂国烈士の議員が動いたことによるもの。されば福島の我らが先鋒おおせつかることできればこの上なき幸いでございます。そして戊辰の折の賊軍の汚名、晴らしたいと思います」

紀州熊沢党も、今回はお味方申し上げる。いまは北朝南朝の因縁を超えるときだと、熊沢本家の仰せです」
 

ここに一人だけいる、女性が語った。
「ただし…長州を、見くびってはいけませんわ。かの一族、『満州皇帝の秘宝と秘術』を持っているそうですから。岸があちらに行っていた時代、かなり強引な形でそれをこちらに持ち込んで、隠しているそうですわ。その財力と…あるいは魔力、侮るわけにはいけません」
「ほう、きみがそんなことを知っているとは」
「”日清”製粉も、旧清王朝とは多少のご縁があるものですから」…


この場所に、男たちを呼び寄せた主は、少しの間をおいてこう言った。
「それでも、やらねばなるまい。
あの男は、それを望んで朕に手紙を託したのだ。
第三次長州征伐・・・いや、第二次王政復古によって、再稼動に進む現政権を倒し、以って王道楽土を築かねばならない」

そして、一冊の本を開いた。
わが父のある意味でライバルの男・・・ふふ、その本にのっとって私が行動せざるを得なくなるとはな。

天皇は全日本国民と共に国家改造の根基を定め そがために天皇大権の発動によりて 三年間憲法を停止し両院を解散し全国に戒厳令を布く。」 
注一 権力が非常の場合有害なる言論または投票を無視し得るは論なし。いかなる憲法をも議会をも絶対視するは英米の教権的「デモクラシー」の直訳なり。これ「デモクラシー」の本面目を蔽う保守頑迷の者、その笑うべき程度において日本の国体を説明するに高天ヶ原的論法をもってする者あると同じ。
北一輝 「日本国改造法案大綱」)
http://www.geocities.jp/osaka_multitude_p/gakushuu_bunken/kitaikki/nihonkaizouhouantaikou.html

そして言った
「わたしの、草薙の剣を、持ってきてくれ。邪と魔を祓う、あの剣を。」

解題

・言葉の使い方や事実関係は、めちゃくちゃもいいところです。
・ちなみに鹿児島、山口のほか、佐渡もおそらくは敵にまわりそう。島民は崇徳上皇を崇拝しているだろうから。北一輝の系譜を告ぐものだけは味方になるだろうけど。
・あと、浜松と静岡・・・ここは双方の憎悪がはげしいから、片方が官軍に入るなら、片方は賊軍に回るだろう。これはしかたない(ほんとか)
・というか、「ヘルシング」入ってるだろこれ。「第九次十字軍」とか「法王庁13課イスカリオテ機関」「大英帝国円卓会議」とか描かれてるあの作品に、「不謹慎といってもこういう前例があるじゃないすか」という、こころの励みにずいぶんとなった(笑)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/HELLSING

 
 
・ま、そんな話は枝葉末節である。一番描きたかった、この作品のてえまは「あそこに手紙を出す、というのは煎じ詰めれば、こういう世界を期待してるってことにつながるで」ということであります。大きな、憲法や民主主義の外の超越的権威によって、そういう「民主主義のハードル」を飛び越える。それでいいのかい、と。
・この作品に関しては、浅羽通明氏を講師に、まさに新嘗祭の11月23日に開かれた「KKベストセラーズ教養講座」が、直接ではないが間接的に刺激を受けた。感謝と責任転嫁をしておきたい(笑)
http://school-market.net/category/1368586555/
(そのときの講義はまだ未掲載。今後でしょう)