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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

有能なのに実生活や些事は怠惰で「しっかり者の目下に管理され、それが可愛げになっている」キャラクターを考える【創作系譜論】

※【創作系譜論】は準タグです。これでこのブログ内「日記」を検索すると、関連記事が出てきます



「銀英伝」アニメのリメイクを記念して、ちょっと自分で思い出をたどってみると、このヤンとユリアンの描写を読んだ高校時代には、 もうすでに物語をメタ的と言うか、お話作りそのものを評論するような視点も思っていて「へー、こういうやり方でキャラクターを立てる(この「キャラ立ち」という言葉は「サルでも描けるまんが教室」で知った)のか。あざといけれど、うまいもんだな」と、メタ的に感心したという記憶があります。

実際、作者もすごく筆が乗っているのか、ユリアンがヤンの生活無能力ぶりを優しく敬意を持ってフォローし、それを周囲がからかうシーンはいずれも生き生きしているし、言い回しの工夫も凝らされている。
英伝が一般的な SF やスペースオペラから頭ひとつ抜けて人気を博している理由の一つは、間違いなくこの関係性もあると思います。

 

「僕が起こさなくてもきちんと7時に起きられますか」
「起きられるさ」

ヤンは断言したが、自信や根拠があってのことではなく、極端に言えば反射的に虚勢を張っただけのことである 。
「ほんとうに大丈夫かなあ」
「あのな、ユリアン、こういう問答を他人がもし聞いていたら、ヤン・ウェンリーという男はよほどひどい生活無能力者だと誤解するのと違うか」
質問形式でヤンは抗議したが 、ユリアンは無言で肩をすくめ、自分の声でなくヤン自身の記憶と自制心に期待する風である。


そういうシチュエーションに関して自分が最初に読んだ作品がこの銀英伝なので、そこからその源流をたどるというのも簡単ではなさそうです。




元々、 「しっかり者の子供」だけで、 無邪気で無垢をよしとする少年少女キャラクターの逆を張っているのだから、 色々と出番はある。
ただ、自然な流れとしてフォローする相手は「ダメな父ちゃん母ちゃん」の方が多かった気がします。ぶっちゃけ「じゃりン子チエ」か。映画ってこの前亡くなった高畑勲さんが監督だったとか。


関川夏央は「知識的大衆諸君、これもマンガだ」 という漫画書評集の中で「PaPa told me」という作品を紹介している。これ色々重要な作品だと思うんだがまだ読んだことはないんだよね。
※その後読む機会があった
m-dojo.hatenadiary.com

こっちはやや近い。以下、上記の書評本より。

…若くして妻を亡くした文筆業者が小学生の一人娘と都会のマンション暮らしをしている、その日常を淡々と、 また当世風のお洒落な甘さで描いている。それだけのことだと言ってしまえば済むのだが、何かしら気になる部分がある。
(略)
娘は単に娘ではない。妻であり恋人であり友であり母である。秘書でもある。虫のいい願望だが大抵の中年男が人に隠れて抱いている。
月刊誌の編集者が原稿を取りに来る。「あと5分でできるから」と父が取り次いだ娘に言う。娘が編集者に伝える。「あと30分ぐらいでできますって」。
「1960年代に青春を送った人は、自分のファッションセンスを信じてはいけない」
娘の発言である。インタビューを受ける時の父の服装が気になる。故に娘はその着こなしを考え、買い物をしてきて父に与えている。娘の若い叔母が言う。「父親のワードローブ管理している小学生の娘なんて、滅多にいないわよお。」
いるものか。

この作品、ウィキペディアを見ると、どうも今でも連載が続いているんですが…関川氏の本が出たのは1991年。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Papa_told_me
Papa told me』(パパ トールド ミー)は、1987年からヤングユー(2005年10月、11月号を最後に休刊)にて不定期連載されていた榛野なな恵の漫画。テレビドラマ化、ドラマCD化もされている。コーラスと別冊コーラスでの不定期掲載を経て、現在、Cocohana不定期に掲載中。



大人びた思考を持つ小学生の女の子的場 知世と、その父親である作家の的場 信吉、この2人の父子家庭が、自由で創造的な家庭を目指す日々の光景を描いた物語である。
主人公の的場知世から見た日常と世の中に対しての独特の視線と鋭い指摘が、多くの読者に人気を博し、漫画でありながら、この作品の書評が光村図書から出版されている国語教科書の書籍紹介に掲載されるに至っている。
また、的場一家以外の人々の生活にもスポットを当て、都会で孤独に生きる人の心を繊細に描いており、この点も読者の共感を呼んでいる。
第35回(平成元年度)小学館漫画賞少女向け部門受賞。


ただ銀英伝以降、(かな?ここも保留が必要だが)一つのテンプレートとしてこういうヤン・ユリアン的キャラクター、…それも単独というより、有能だが生活無能力のキャラAと、それをフォローする目下のキャラBの「関連性」こみで描かれるというのは増えてると思うのですね。


では増えてる…の結果を今言おうと思ったんだけど、具体名になるとあれっというぐらい思いつかんかった(笑)

作品名 有能だが生活無能者 フォローする目下
PaPa told me 的場信吉(父親) 的場知世(娘)
銀河英雄伝説 ヤン・ウェンリー ユリアン・ミンツ
新世紀エヴァンゲリオン 葛城ミサト 碇シンジ
鋼の錬金術師 ロイ・マスタング大佐 ホークアイ中尉

ぐらいでした。
このままだと、「それがテンプレになっている」と言うこの仮説自体を捨てなきゃならなくなるんですが(笑)、それももったいないので読者さんに○ミ\(・_・ )トゥ ←丸投げするので、追加してください。

いろいろな声






gryphon(まとめ用RT多)@gryphonjapan
そういえば「料理ベタヒロイン史」も以前から研究課題にしようと思ってたが手付かず(笑)

gryphon(まとめ用RT多)@gryphonjapan
エスパー魔美を暫定的に元祖認定していますが自信なし

ブクマでも例が寄せられています
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/gryphon/20180411/p2

編集者・中津宗一郎氏が語る

途中コピペ処理あり


 
@gryphonjapan
そういえば田中芳樹氏は「キャラクターの個性は欠点で決まる」的な発言してたっけ。
 
 
khak@k_h_a_k
隙がある方が良いという意味なら、オーベルシュタインの犬。
  
gryphon(まとめ用RT多)@gryphonjapan
それも記事中に書いた「ヨシキうまいなー、ややあざといけど」という感情を、リアルタイムで感じた箇所です(笑)
 
@Singulith
同じ事を、藤子不二雄氏(どっちかは忘れた)も、言っておられましたね😃
 
gryphon(まとめ用RT多)
オバQは犬、ドラえもんはネズミ、チンプイはネコが怖い…と、ややテンプレ的な意味での「弱点」に過ぎた気もしますが(笑)、それでも重要な指摘ですね
 

追加おまけ ヤンとミサトの比較への異論反論オブジェクション









2023年追記

「葬送のフリーレン」人気を考察するまとめ内に「強いがちょっと抜けてる師匠と、あまり遠慮が無い弟子のバディもの」というジャンル分けが出てきて、なるほどそれはジャンルだと膝をうつ。
togetter.com