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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

糸井重里氏「まず、総理から前線へ。」の反戦コピーの出来を後悔。「今なら戻してって言う」

ロング・インタビューの一部ですが、少し話題になってますね。

http://mainichi.jp/feature/interview/news/20150213mog00m040014000c.html

(略)…徒党が主人公になる動きは人間を変える。それは居心地が悪いんだよなぁ。

 昔、天野祐吉さんが雑誌「広告批評」で反戦広告特集(1982年)をやるというからお手伝いしたんです。天野さんは個人的にとてもよくお付き合いしていただいて、企画も良いと思った。当時、僕は勢い余って2枚作ったんです(※天野さんは「広告批評」元編集長。コラムニストとしても活躍した。2013年死去)。

 一つは「とにかく死ぬのヤだもんね。」ってコピーです。どっちが正しいかというんじゃなくて、死ぬのが嫌だという視点から反戦ポスターができると思ってテーマにした。これは別に評判をとらなかったけど、当時は「まぁいい出来だ」と思っていた。でも、いま考えると「言葉としてできてねぇな」って思う。

 戦争を美化したいとかそんなことではなくてね、戦争以外でも人ってもしかしたら何かのために死んでもいい、という気持ちになるかもしれない。それもまた人間ですよね。人間を二層、三層まで掘って捉えるということができていない言葉だなって思うわけ。今批評するなら、それは戻してって言います。

 もう一つは「まず、総理から前線へ。」。これは話題になりました。

今もインターネットで話題になっていると聞いています。でも、これも今なら戻してって言いますよ。

 戦争に対する考えが深まっていないですよ。戦争はゲームや子供のチャンバラごっこではない。単純に戦争になった時に総理が前線に行けばすむっていう話じゃないんじゃないって思う。これは何かをやりたければ、「○○をやってから言え」っていうのと同じ論理だもん。紋切り型を上手な決まり文句にしただけですよ。決まり文句で批判するだけで、戦争を無くすこともできなければ、実際のところ何にもなんない。ちょっと考えが甘いし、鳩の絵を描けば平和っていうのと同じ感じで引っかかります。

 これは天野さんの義理立てで引き受けちゃった仕事だから、どっかで自分がいいと思ったものじゃなくて、天野さん、こんなので良いでしょ。こういうものが好きでしょって出したところがあると思う。やっぱり義理で引き受ける仕事は後で自分を苦しめるよって思った。

 どちらも良いコピーだと思わない理由は「ほんとうかな」が弱いことです(略)


この話はずっと自分、書いてきたんで、再紹介するだけで済みそうだな。糸井重里さんの告白は「あ、作者ご自身もそう思ってたんすか、そりゃそうでしょうね」と思います。いい悪いや賛否を超えて「こりゃ陳腐だわい」ってのは、かなり共有される感想だと思うんだがねえ…


過去の文章にリンクを張り、ちょっと関連を抜き出しておく。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150131/p2
この写真とキャッチコピーは有名ですよね。糸井重里さんのコピーだ。
だけど、これって、「エボラウイルスの拡大を防ぐために、流行地帯へ向かえ!」と総理が命じたと言ったとしたら、迷彩服の自衛官ではなく白衣の医官
「まず、総理からエボラ流行地帯へ。」
と言うたかておかしくない。
同じ議論は
『フィリピン台風救援への自衛隊派遣』(オペレーション・サンカイ)
についても語ってたんで、まあその繰り返しですわ。

自分も家族も現地に行かない人の『フィリピン台風救援への自衛隊派遣』への支持・賛同…について。再考「ジェシカ・百田理論」 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20131115/p5

 

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20060527/p3
NPO自衛隊より活躍する、と熱弁を振るう福島瑞穂社民党党首に対し、自衛隊で30年以上勤め上げた志方俊之氏が「じゃあ、社民党NPOを組織してイラクに向かえばいいじゃないですか」と言ったこと。

(大意)
福島党首「寄付はしてます」
志方「お金だけですか? 実際に行かないんですか?」

これは正しい正しくないで言えば志方氏の論難が無茶で、金だけであっても福島氏が批判される筋合いはないと思う。
だが、ほらみろだ。
ヤン・ウェンリー的、あるいはジェシカ・エドワーズ的「お前が行け」論は、単純な反軍思想にとどめることはできない。こうやって復讐されるんだよ。

 

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120304/p2
「貴方がた権力者はいつでも切り捨てる側」
「あなたはどこにいます?」
「他人に命令する前に、自分たちで実行なさったら」
は、痛快な啖呵であり、一種の部分的な真実はそこに含まれているんだけど、究極のところでは無効な言説である、ということでいいのではないか。
違うなら、現場の社員・作業員らの命を重んじて、全面撤退を命じた(としておく)東電首脳こそ銀英伝的には「正義」であるということになる。

そうだ、まだブログには書いてなかったが、もひとつネタがあったのでtwitterを転載しよう。

gryphonjapan@gryphonjapan
日本の国会議員で、WW2を経験した年配の人の引退が続いた今は、佐藤正久議員が「わたしは唯一『戦場』(※定義上は非戦闘地域だけど)を経験した。君たちは経験がないから私の意見を否定できないはずだ」とタンカ切れちゃうわけですよ。 @dragoner_JP @a
 
自衛隊は「訓練の苦しさ、しんどさ」だけでも自慢できるからねえ。/そして危険地帯に行った、危険に直面した度なら作家は曽野綾子、漫画家は小林よしのり、議員は佐藤正久を超える人は少ない(笑、でもそやろ?) / “田母神元空自幕僚長に戦場…” http://htn.to/49PqAM
 
あたしは冗談でいうのですが、戦場体験がどーのこーのという話をするなら、今の国会で軍事政策に関し、ヒゲの隊長こと佐藤正久議員に異論を唱えられる人は誰もいない、ということになると(笑) @NaokiTakahashi

もっとも当方は
ある程度この種の「紋切り型」に紋切り型としての価値は認めている。「税金なんてのは、国がドロボーしてるのと同じだ」「医者を見たら死神と思え」とかと同じ種類の……

まあ「天野さんの義理立て」「天野さん、こんなので良いでしょ。こういうものが好きでしょ」じゃ、思想的に深みが出るわけもないじゃないかっ。それで紋切り型じゃないものをだせなんて無理ゲーだよ。CM天気図で、紋切り型じゃなかったことが20年間あったかっ。


最終的に、これらは「お前が戦場に行け論リンク集」にまとめた
m-dojo.hatenadiary.com



追記 「保護者が死んだ子供への支援充実を」「お前ん家がまず養子にして引き取れよ!」という論法と同じ(じこぼう氏ツイート)

じこぼう @kinkuma0327

https://twitter.com/kinkuma0327/status/571605302111432704
https://twitter.com/kinkuma0327/status/571605584232906752
 
じこぼう @kinkuma0327 ·
昨日のツイートに関連して、「まずはお前が親のいない子供を養子縁組で引き取れ」みたいなことをいっている人を見たんだけど、ぼくにはそんなことはできません。っていうか、ぼくはそういうことを個人“のみ”に負担させるのをやめようって話しているのに「お前が負担しろ」とか、日本語読めんのか。
 
じこぼう @kinkuma0327
例えば、『尖閣諸島を守れだぁぁぁ? そういう勇ましいキレイゴトはてめぇが私費で武器の一つや二つ買って国に寄付してから言いやがれ。なんだったらお前が尖閣に住んで防人になってから言いやがれ。まずはお前が負担しろ。それができないなら黙れよ』なーんてことは、一応、ぼくはいいませんよ。


とまれ
今回の糸井重里氏の「反戦コピー創作秘話」告白は、自分にとっては上に紹介したように、長年書きつづけていたジェシカ・エドワーズや百田尚樹氏が振りかざした論法の、ひとつの思想的な終わりの宣告でありました。


まさか、こんな形で終幕を迎えるとはねえ……。