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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「DNA鑑定・親子関係裁判」最高裁で僅差判決…この裁判は「人類社会の常識が、科学で覆る」というSF的状況なのだ

本日「DNA親子鑑定」判決。法の発想に無かった「DNA」を科学が生んだのだから、そりゃ混乱するわ。歴史よ、科学にひれ伏せ。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140717/p3

と書き、科学と進歩の側に立った当方ですが、結果は
「カ、カテエ…まるで溶岩石のように凝り固まった最高裁のアタマ!」ということに(笑)。ただ、大接戦だったようです

DNA型鑑定技術の向上で、家族の生物学的なつながりが客観的にわかる現代に「父子とは何か」を問うた訴訟は、17日の最高裁判決でも、血縁がない夫と法律上の父子関係を維持することへの賛否が3対2で分かれ、僅差で賛成が上回った。
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/140717/evt14071721380046-n1.html

とかいいつつ、ホントにまじめにいうなら、「まぁどっちかに決めないといかん」ということで、しかも現行法を基にしてるんだから、その前提を敢えて認めるなら、そういうのもやむなし、かもしれないとは思うこともあるのですよ。
今回の判決ではそのへんも語られているそうだが、「立法の措置が必要」なのですよ。
 
何度も繰り返すが、もともと「DNA鑑定」という発想が法律制定時にはなかったのだ。おその前提で、当時はああいう枠組みは合理的だったのだ。ただそれだけの話で、法律制定者が科学の進歩に無知モーマイで対応できないのはよくある話ですな。
 
「当時は合理的だったかもだが、DNA鑑定ができた以上は不合理となっている」という点ではこれと同じ。これは逆に、フェミニスト的な立場にたつひとが「その技術を使えば、法律の前提がそもそも無くなる」と変更を要求していたわけで。
 ↓

実は、この話を考えたのはもうかなり前、1990年代です。
この時期に「プレステージ」という討論番組がありました。…(略)弁護士時代の福島瑞穂氏はレギュラーでして、その中の一つとして「男性は離婚後すぐに再婚できるのに、女性はXXカ月(今調べたら300日だね)経過まで再婚できない。これは差別ではないか?」という討論テーマに出演して、撤廃論から論じていました。
彼女の論法は「この規定は明治時代に作られたもの。昔はともかく、今はDNA鑑定で親子関係が確実に分かるのだから、この規定の必要は無い」という主張。
 
これは私はめずらしく、福島氏と意見が一致するところです。
法律制定時、DNA鑑定の技術はなかった。
今はある。
使えばいい。ザッツ・オール。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081124/p8

で、そもそもの
根本を振り返る。

婚外子」裁判から大屋雄裕氏が語る、結婚制度のそもそも - Togetterまとめ http://togetter.com/li/562424


「子の父親はわからない」という前提で家族相続制度を作ってきたので、わかるならそれを完全に反映する法制度というのもアリではないかと思うわけですが。別に私一切困らないしな。けけけ。
 
というか、嫡出推定制度は所詮DNA鑑定の不完全な代替物に過ぎないので、「完全な監視社会」の方が正義にかなっているのではないかと思うところです。

「完全な監視社会」というのはDNA検査によって摘出を確認する社会、という意味合いのことですな。人の自由、プライバシーを縮小することで、こういう無用のトラブルは解決できると。

この本の本格紹介をあとで書かねば…なつやすみのしゅくだい。



立法するなら、赤ちゃんの最初の検診に国の費用負担で「DNAの確認」をする。その証明書を出す、とか。

なんだ、1カ月したらお上はいま検診を強制してるじゃねえか。
http://www.baby-vaccination.net/kenshin/
このときに、国の費用でDNA検診をすればいい。それで国の責任で、証明書でもなんでも発行すればいい。それでいいじゃねえか。
「もう、俺の子だと決めたんだ。余計な波風を起こすな」と思う人は、そりゃいるでしょうが、それはどう考えても「例外」なのでして、遺伝的な意味では親じゃないよ、と公の機関で証明された上で、その家庭の中で話し合って納得してもらえれば。公の記録は記録として、きちっとやる義務がわが人民の人民による人民のための政府には存在する。
その閲覧は規制してもいいのだろうけど。
ここをうやむやにして、記録上も「遺伝子上の親」であると記すのはよろしくないでしょう?
「天切り松闇がたり」の「百万石の甍」も、遺伝子上の父親でないと分かった上でふかい尊敬と情愛を抱いている。


に、してもそもそも「結婚制度」は、「生まれてきた子の父親が誰であるかを、とりあえず推定するために生まれた」というのは面白い見方ですな。
夜這いが当たり前のムラでは、逆に妊娠した女性がその夜這いした相手の中から、好きな人を選んで結婚できる―という話も聞いたことがあるが、これもまた、逆の形で摘出を決める方法のひとつであるのでしょう。

ん?今でもこの制度、適用が可能かもしれん(笑)

特上カバチ!!-カバチタレ!2-(26) (モーニング KC)

特上カバチ!!-カバチタレ!2-(26) (モーニング KC)



この話、何度書いても面白いのはやっぱり、そういう人類何千年の風習が、「科学」によってひっくり返るところにあるのでしょう。SFファンこそ、この状況を見て、いろいろ考えることがあると思う次第です。「センス・オブ・ワンダー」の心を忘れずに…。