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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「蛮社の獄」林述斎や鳥居耀蔵のもうひとつの顔(新聞書評欄より・4)

http://www.yomiuri.co.jp/book/review/

「蛮社の獄」のすべて

「蛮社の獄」のすべて

……蛮社の獄は明治以来、鎖国一辺倒に固まった幕府の守旧派と、開明派の憂国ヒーローがイデオロギーを戦った物語として理解されてきた。そういう一面的な対立構図を正面切って否定するのが本書…(略)
 悪役(ヒール)と言えば、対外政策の諮問に答える立場の大学頭(だいがくのかみ)林述斎と、その三男で目付鳥居耀蔵(ようぞう)であった。儒学の権威を背負った父子が西洋を蛇蝎(だかつ)のごとく嫌ったゆえの「蘭学弾圧」と言われてきた。が、実際のところ、述斎は答申で打払い令そのものを挙げて、敵国の使者に矢を放つこと自体が国としての「徳」の薄い判断ではないかと批判するなど、視野の広いリーダーであったことが浮かび上がってくる。耀蔵とて、後の町奉行時代になるが、蘭学書の出版停止が審議された際に、役に立つ知識は取り入れるべきとして西洋医学書の翻刻を積極的に勧めるなど蘭書を保護する側に立っている…

これを紹介したのは、本ブログ読者にはいうまでもないがみなもと太郎風雲児たち」(蛮社の獄篇)への異論になっているからだ。これも前に書いたが、みなもと氏はもともと漫画的演出の意図の元に資料Aと資料BのうちからAを選ぶことも、そもそもフィクションを承知で取り入れることもいとわない。
だからこの本のこの書評にあるような内容を知っていたかいなかったかは分からない。
ただ、ひとつ言えるのはこの漫画を読んでいなかったら、そもそも自分はこの書評を「ふーん」と読み飛ばし、記憶にも残さなかったろうし、ここで紹介もしていない、ということだ。他の歴史書と趣旨が同じであろうと正反対であろうと、「風雲児たち」がロッククライミング時の岩の出っ張りやくぼみのように「足場」になって、山嶺へ上るのを助けてくれるのである。