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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ポアンカレ予想解明?のロシア人がフィールズ賞(を辞退)、日本人がガウス賞

ペレルマン氏、フィールズ賞初辞退 ポアンカレ解け引退
2006年08月22日23時07分
 名誉や地位に背を向け続けてきた「孤高の数学者」は、数学者にとって最高の栄誉とされるフィールズ賞も拒んだ。難問「ポアンカレ予想」解決の道を示し、数学に新たな地平を開いたその業績はだれもが疑わない。それだけにペレルマン氏が受賞を拒否した衝撃は会場に静かに広がった。

 国際数学連合のジョン・ボール会長がペレルマン氏の名前を呼び上げると、3000人が集った会場はひときわ大きな拍手に包まれた。客席では同氏の姿を探そうと会場内を見回す参加者も。だが、同会長は「残念ながらペレルマン氏は受賞を辞退されました」と告げ、会場はため息に変わった。

わたしがポアンカレ予想とはなんぞや、ということを書くわけがねぇ。
それより、もはやそういう人の存在はベタな伝説になっちゃったのかなあ、今は国の品格がどうのこうのとか、お説教する「名士」になってしまったのかなあ・・・と、勝手にがっくりしていた「数学者=奇人」の伝説が、まさに復活したのがとってもご機嫌な話じゃないか。


http://d.hatena.ne.jp/tullio/20060823
によると、同業者内の「数理科学メーリングリスト」でも「食堂で見かけたけど,とてもヘンな人でした」と言っておられた方がおりましたが」といわれるぐらいの人だったそうな。


【補足】ここで特筆しておきたいが、リンク先の写真をみるとペレルマン氏はラスプーチン以上にキングコングブルーザー・ブロディに似ていることが判明しました。
キングコングの生きる場所は四角いマットだ、ジャングルだっ」(梶原一騎調)

ペレルマン氏は、業績もさることながら、メディアの取材を拒み、人前にもほとんど姿を見せない孤高ぶりでかえって注目を集めた。

 怪僧ラスプーチンを思わせるひげもじゃの顔。趣味はキノコ探しを兼ねた森の散歩。昇進や米国で活躍するチャンスを辞退し、欧州の若手数学者に与えられる賞も拒否した。

 小島教授は「ひとりでできるのが数学。ひとりを好むタイプが数学者になるのかも。数学者らしいシャイなペレルマン氏は、脚光を浴びる舞台に体が拒絶反応を起こしたのでしょう」と、同氏の立場を思いやった。

http://www.asahi.com/international/update/0822/020.html

・・・同氏は現在無職で、サンクトペテルブルクの郊外で母親と生活。わずかな貯金と元数学教師の母親の年金だけが生活の糧で、「(授賞式が開かれる)マドリードに行く費用もない」という。

いい話すぎて。
松田洋子作「薫の秘話」かよ(笑)


「高等数学の計算より、簡単な金勘定ができる息子がほしいわあ」


薫の秘話

薫の秘話


でも、ちょっとポアンカレ予想について話すと、なんかのSF解説で「人間はドーナツと同じなのである」という一文を読んだ記憶がある。
つまりドーナツの孔というのは、口から肛門までつながる人間の消化器系をひとつの「孔」と考えれば、同じものだというのである。
なるほど納得、つうか納得以外しようもない。おまけにしょーもない話のような気がする。
(いいのかな、これがポアンカレってことで。いやこれはトポロジーだっけか)


だがこれが専門家によると、何か新しい地平を開いているらしいからあなどれない。
そのへんは、おまえらに任せた。
なにか有益な技術につなげとけ。



http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200608220094.html

第1回ガウス賞に伊藤・京大名誉教授 国際数学者会議
2006年08月22日


 4年に1回開催される国際数学者会議が22日からスペインのマドリードで始まり、社会に大きな影響を与えた数学者を顕彰するために創設されたガウス賞の第1回の受賞者に京都大の伊藤清名誉教授(90)が選ばれた。伊藤氏は、60年以上前につくった確率解析の理論が、金融の分野でデリバティブ金融派生商品)の価格決定の方程式に応用され、「ウォール街で最も有名な日本人」と注目された・・・・

伊藤氏の業績についてはWIKI伊藤清」「伊藤の補題」を参照。参照したがわからん(笑)。
ただ、ブラウン運動なら聞いたことあるっす。
水の中で分子が動くんだよネ。たしか花粉を動かすのを発見したんだっけ。で、この動きは「ランダム」だと考えて、それで丸く収まっていたものが、確率を微分だか積分だかして(======中略======)すると、ウォール街の株価変動がピタリと当たると。


つまり、
ブラウン運動上の実数値関数をテイラー展開すると、3次以上の項は0となる。すなわち、2次までのテイラー展開の剰余項が0となることがわかる。(証明は伊藤ルールを使って2次までのテイラー展開の剰余項が0になることを示せばよい。)」
ということですよ。すっげー。



この種の「数学で分かるわけが無いような気がするものが、数学の式かなんかで示される」というのは俺的には一種のロマンであります。
細野不二彦ギャラリーフェイク」にも、フィクションながらフラクタクル理論でゴッホの美しさを証明しようとする科学者、てな話が出てたよね。
もちろん「黄金比」伝説もそれに近い部分がある。

ギャラリーフェイク: 傷ついた「ひまわり」 (1) (ビッグコミックス)

ギャラリーフェイク: 傷ついた「ひまわり」 (1) (ビッグコミックス)

以前、「交通渋滞や電車内の満員ラッシュを数学的に研究する学問があるらしい」と書いたら「それ、してます」というコメントを頂き驚いたものだ。


ということで今回「奇人数学者」と「数学が現実社会を数式化する」という、個人的なツボの数学ネタを両方満喫できて面白かった。
そこから、ちゃんと数学を学ぼうという意欲はわかないのかね、俺。
はい、まったく。


奇人数学者伝といえば、以前書いた「ポール・エルディシュ伝説」のエントリがこれ。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20040907#p1

放浪の天才数学者エルデシュ

放浪の天才数学者エルデシュ

その他、名著をあげておこう


無限の天才

無限の天才

こういうのを読むこつは「分からなさ」に酔うことです。分からなさ具合を楽しむことです。

理系と奇人という点で
ここの「もやしもん」論を再紹介
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20051117#p2