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ウクライナ戦争3年と、停戦交渉に関する社説集

※ほぼ一週間前、アメリカのトランプ政権が直接ロシアとの停戦交渉に乗り出した時の社説も合わせて…

(社説)米ロ首脳の協議 頭越しの交渉を危ぶむ

2025年2月14日 5時00分

米大統領任期1期目の2018年7月、トランプ氏(左)はロシアのプーチン大統領フィンランドヘルシンキで会談した=ロシア大統領府の公式ページから


 ロシアのウクライナ侵攻を終わらせるための話し合いは必要だ。しかし、侵略の被害者であるウクライナの意向をないがしろにする交渉を進めれば、ウクライナはもちろん世界の将来に大きな禍根を残すのは必至だ。

 トランプ米大統領がロシアのプーチン大統領と電話で話し、侵攻終結に向けてただちに交渉を始めることで合意した。プーチン氏との協議そのものを拒否していたバイデン前米大統領の方針を百八十度転換した。

 ロシアがウクライナへの大規模侵攻を始めてまもなく3年。国際法違反の侵略が成功する前例を残してはならない意味でも、ロシアに侵攻を断念させる以外に根本的な解決策はない。

 しかし、戦況が膠着(こうちゃく)し、全領土からロシア軍を追い出す見通しがほぼ断たれている状況で、ウクライナの人々の犠牲をこれ以上増やさないための停戦に向けた一歩になるのであれば、今回の動きは評価しうる。

 懸念されるのは、トランプ政権がロシアとの2カ国だけで交渉を進めることだ。

 トランプ氏との電話でプーチン氏は「紛争の根本原因を取り除くことが必要だ」と述べたという。

 プーチン氏はかねて「ウクライナはロシアが認める範囲でしか主権を行使できない」と主張し、事実上の衛星国になるよう求めていた。その目標を阻む動きは排除するという意図の発言ならば、国家の主権は平等であるとする国連憲章の理念を真っ向から否定する暴論だ。

 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は昨年来、停戦の際にはロシアの再侵略を不可能にするための万全な措置が必要だと主張している。プーチン氏の過去の言動をみれば、もっともな懸念だ。

 だがヘグセス米国防長官はウクライナの領土回復を「幻想」と切り捨て、将来の北大西洋条約機構NATO)加盟も否定した。米国はロシアの主張に取り込まれているのではとの疑念が拭えない。

 仮に現状での停戦が実現したとしても、ロシアの占領地に住む多くのウクライナ国民の人権をどう守るのか。ロシアが再度軍を進めてウクライナ全域を支配下に置く動きをいかに封じるのか。トランプ氏の発言に、そうした問題意識は感じられない。戦争を終わらせた偉大な指導者という自らの名声しか考えていないのではないか。

 侵略戦争の再発を防ぐためにも、今後の交渉に、ウクライナや支援してきた欧州を関与させることが欠かせない。
www.asahi.com


(社説)ウクライナ侵攻3年 歴史の教訓踏まえた交渉を

2025年2月24日 5時00分

トランプ氏が初当選した2016年の米大統領選を前に、リトアニアの首都ビリニュスの中心部に、トランプ氏とロシアのプーチン大統領のキスを描いた壁画が登場した=2016年11月12日、駒木明義撮影


 ロシアがウクライナへの全面侵攻に踏み切ってから、きょうで3年を迎えた。ウクライナの国土を破壊し、日々おびただしい犠牲者を生んでいくこの戦争を、一刻も早く終わらせる必要がある。

 ただし、ウクライナの頭越しにロシアとの交渉に乗り出し、プーチン大統領の言い分を丸のみするかのようなトランプ米大統領の姿勢は、極めて危ういというほかない。

 国連憲章の根本原則を踏みにじる侵略の責任を問うことなく、ウクライナを丸腰で放り出すのに等しい「停戦」となれば、解決どころか、世界の将来に大きな禍根を残すことになるだろう。

 日本は欧州と協力し、停戦交渉にウクライナの意向を踏まえるようトランプ政権への働きかけを強めるべきだ。

 ロシアはウクライナの国土の約2割を占領した。ウクライナは一昨年の反転攻勢が失敗に終わり、その後は苦戦を強いられている。2014年にロシアが占領したクリミア半島だけでなく、22年以降にロシアが占領した領土も、そのすべてを近い将来に奪い返す展望は乏しい。


 ■トランプ復権で動き

 ゼレンスキー大統領はこうした状況を踏まえ、昨夏以降トランプ氏の再登場を想定した布石を打ってきた。ロシア南部クルスク州への越境攻撃や、支援国への地下資源の提供案などがそれだ。

 ほぼ現状での停戦を受け入れる。かわりに交渉の場では少しでも強い立場に立ち、被占領地の奪還は将来の外交に委ねる戦術だろう。

 譲れない条件は、ロシアの再侵略を防ぐための万全の措置だ。ウクライナへの大規模な軍事支援や、多国籍軍の停戦ラインへの展開を想定しているとみられる。

 プーチン氏もトランプ氏の取り込みに必死だ。狙撃された際のトランプ氏のふるまいを何度も称賛。前回の米大統領選が「盗まれた」とするトランプ氏の主張に同調した。

 プーチン氏にとって停戦の条件は、ウクライナが二度とロシアに刃向かうことができないよう、軍事的にも政治的にも無力化することだ。


 ■ロシア「免罪」の懸念

 ロシアからの独立維持を求めるウクライナと、ウクライナを属国化しようとするロシアの立場は、対極だ。

 そうした中、トランプ氏はプーチン氏との直接交渉を始めた。ウクライナや欧州の国々と十分にすりあわせることなく交渉に臨んでも、ロシアに取り込まれるだけだ。

 トランプ氏は最近、ウクライナ側が戦争を始めたかのような虚偽の発言をし、ゼレンスキー氏を「独裁者」とも呼んだ。早くもプーチン氏に吹き込まれた「物語」を信じ込んでしまっているようだ。

 トランプ政権からは、ロシアの侵略行為に限らず、子供の連れ去りや民間人虐殺、民生用インフラ破壊といったおぞましい戦争犯罪への批判は聞かれない。本質的な問題に目を背け、ロシアを免罪しようというのだろうか。

 米国が支援から手を引けば、ウクライナは抵抗が継続不能に陥る可能性が高い。それを「停戦」と呼ぶことはできない。ロシアは態勢を立て直して再びウクライナ支配下に置こうとするだろう。

 そもそも、ロシアが本気で停戦を望んでいると信じる理由もない。

 なぜなら、ウクライナ東部の戦況は目下ロシアに有利に進んでいる。さらに、非常時を口実に自国民の目と耳と口を塞いで、団結を求める現状は、独裁的な政権の維持にとって好都合だ。

 米国を交渉に引っ張り出すことでウクライナを孤立させる。米欧の間にくさびを打ち込む。あわよくば制裁の緩和を引き出す――。これらが当面のプーチン氏の狙いだとすれば、すでに成功を収めつつあるようにみえる。


 ■火種を残さぬために

 ゼレンスキー氏や日米欧の高官が今月中旬、安保問題の国際会議で集まったドイツのミュンヘンは、歴史に重い教訓を刻んだ土地だ。

 1938年9月のミュンヘン会談で、英仏はヒトラーの要求を受け入れ、当時のチェコスロバキア西部にあってドイツ系の人々が多く住んでいたズデーテン地方ナチス・ドイツへの併合を認めた。

 合意の際の「これ以上の領土要求は認めない」という条件を、ヒトラーは翌年に踏みにじった。ソ連と密約を結んでポーランドに攻め入り、第2次世界大戦が始まった。侵略に手を染めた独裁者の危険性を過小評価した帰結だ。

 ミュンヘン会談でも独ソの密約でも、チェコスロバキアポーランドなどの当事国は、自身が不在の場でその運命を決められてしまった。

 ウクライナの将来を大国の思惑だけで決めることは許されない。決してきれいごとではない。ウクライナのためだけでもない。世界の将来に火種を残さないためだ。

 ウクライナ危機と距離を置く新興国の多くも、大国の専横は許されないという考えでは一致できるはずだ。そうした共通認識を世界に広げる努力が不可欠だ。
www.asahi.com

ウクライナ問題 露に譲歩すれば禍根を残そう

2025/02/18 05:00


 ロシアによるウクライナ侵略の停戦実現に向けて、各国の外交が活発化し始めた。

 ただ、米国のトランプ政権の突出した言動に対しては、欧州各国から警戒感が示されるなど米欧間の亀裂も表面化している。先行きには不安がつきまとう。

 欧米の首脳や閣僚らが参加したミュンヘン安全保障会議では、米露が停戦交渉の開始で合意したことを巡り、議論が沸騰した。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は会議で講演し、「我々の関与なしに行われる取引は決して受け入れない」と述べた。

 交渉に積極的なトランプ米大統領は、ゼレンスキー氏に伝えずにプーチン露大統領と協議し、停戦交渉の開始で合意した。

 ゼレンスキー氏が、自国の頭越しに交渉が進み、不利な形で決着する事態を許せるはずがない。米露を 牽制 けんせい したのは理解できる。

 トランプ政権は国際秩序を守ることよりも、いかに米国の利益になるかを重視しがちだ。このため、欧州全体に米国主導の交渉への不安が広がっている。

 会議では、米政府でウクライナ問題を担当するケロッグ特使が、交渉の場に欧州の席はない、と述べた。欧州側は「我々抜きでの交渉はあり得ない」と反発した。

 当面の衝突を避けるため、米国が停戦交渉を進めることは歓迎すべきだが、プーチン氏の主張に歩み寄るような米政権幹部の言動には、疑問を抱かざるを得ない。

 1938年のナチスドイツによるチェコスロバキアの一部併合を巡り、チェンバレン英首相は戦火の拡大を防ごうと、ドイツの主張を認めた。この 宥和 ゆうわ 政策が、後のポーランド侵攻や第2次世界大戦に 繋 つな がった歴史を想起させる。

 いったん武力で他国の領土を奪うことを許したら、取り返しのつかない禍根を残す。停戦交渉に欧州が関与するのが当然だろう。

 岩屋外相は安保会議で、ロシアが「勝者」となった場合、「中国のみならず、世界中に誤ったメッセージを与える」と強調した。

 露の侵略が成功裏に終わったと中国が認識すれば、台湾を武力で統一する、といったシナリオが現実味を帯びる恐れもある。

 欧州では、停戦後のウクライナに平和維持部隊を派遣する案が浮上している。スターマー英首相は部隊を派遣する考えを示した。

 日本政府も、武力による侵略行為は許さない、という国際的な連帯を強化するため、明確な意思表示をすべきだ。

https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20250218-OYT1T50003/

ウクライナ侵略 プーチン氏に勝利与えるのか

2025/02/24 05:00


◆法の支配と主権平等の堅持を◆


 ロシアによるウクライナ侵略は24日で開始から3年となり、重大な局面を迎えている。

 米国のトランプ大統領が就任して1か月。ロシアのプーチン大統領との停戦交渉に乗り出したが、ロシアの暴挙に対して、欧米や日本などが一致して立ち向かうという構図は一変した。

 米露の接近、米国と欧州の亀裂という新たな情勢は、プーチン氏の思惑通りの展開をたどっている。国際秩序に深刻な打撃をもたらす危険な状況である。


◆戦闘終結は急務だが

 この3年間で、ウクライナ軍の死者は約4万6000人、負傷者は約38万人を数える。国内外に避難を余儀なくされた市民は1000万人を超えた。ロシア兵の死者は推計9万人とされる。

 あまりに多くの命が失われ、罪のない市民が生活を奪われている。戦闘に終止符を打ち、更なる犠牲を防ぐことが急務である。トランプ氏が「戦争による大勢の死を防ぎたい」と強調していることに誰も異存はない。

 しかし、そのトランプ氏が、侵略を始めたロシアとの協議を優先し、もう一方の当事者であるウクライナや、ウクライナを支援する欧州を排除して交渉を進めようとしているのは問題だ。

 ロシアは国連安全保障理事会常任理事国として、武力の不行使や主権平等を原則とする国連憲章を率先して順守すべき立場にありながら、一方的にウクライナへの侵略を始めた。

 にもかかわらず、トランプ氏はロシアを非難せず、批判の矛先をウクライナに向けている。ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、「始める必要のない戦争に突入させた」との認識を示した。

 さらに、ウクライナで昨春予定されていた大統領選が戦時下のため延期されていることを念頭に、ゼレンスキー氏を「選挙なき独裁者」と非難し、国民からの支持率は「4%」と主張した。

 実際の支持率は、最新の調査で57%とされる。

 これでは、トランプ氏が、ロシアの立場を代弁しているのも同然である。ロシアはかねて「ゼレンスキー氏には正統性がない」と主張し、ゼレンスキー氏との交渉を拒否してきたからだ。


◆露の思惑通りの展開に

 トランプ氏は得意とする2国間の「ディール」(取引)に持ち込み、昨年の大統領選で公約した停戦を早期に実現し、功績としたいのだろう。ウクライナの資源開発にも意欲を示している。

 だが、これこそプーチン氏の思うつぼである。欧米や日本による対露制裁やウクライナ支援の協調を崩し、民主主義陣営を離間させる狙いは成功しつつある。

 トランプ氏が功を焦れば、てだれのプーチン氏に足元を見られる。ロシアの力や威圧による一方的な現状変更の試みを容認すれば、ロシアに屈服したことになり、国際社会にあしき前例を残したとのそしりは免れまい。

 ロシアに譲歩せず、停戦や恒久平和をめざす難しい交渉をやり遂げてこそ、トランプ氏は「偉大な米国」の指導者だと認められるのではないか。

 今回の動きは、米英とソ連(ロシア)の首脳による第2次大戦末期の「ヤルタ会談」を 彷彿 ほうふつ とさせる。

 3か国の指導者が欧州の戦後体制について合意したが、それがソ連の東欧支配につながった。東欧の国々は半世紀近くもソ連の「衛星国」として扱われた。


◆欧州の参加が不可欠

 大国同士の思惑に、小国の運命を委ねるわけにはいかない。ウクライナの停戦交渉には、ウクライナと欧州の参加が欠かせない。

 停戦には、ウクライナの抑止力担保が必要となる。だが、ウクライナ北大西洋条約機構NATO)加盟にはロシアが反対し、トランプ氏も否定的だ。

 フランスや英国など欧州の有志国が、停戦後、ウクライナに平和維持部隊を派遣する構想を示した。ロシアの「再侵略」を防ぐ上で検討に値するが、その場合でも米国の関与は不可欠だろう。

 停戦の行方は、東アジアの安全保障にも影響を与える。ロシアが勝者になるような形で決着が図られれば、武力による台湾統一を否定しない中国を勇気づけることにもつながりかねない。

 日本はウクライナ支援で米欧と足並みを 揃 そろ えてきたが、米欧の間の亀裂が表面化し、難しい立場となった。国際的なルールを重視し、武力による侵略は許さないという立場を、これまで以上に明確に示していかねばならない。
www.yomiuri.co.jp

ウクライナ侵攻 米国の終結提案 「公正な平和」へ導けるか

2025/2/14 東京朝刊
838文字
トランプ米大統領ホワイトハウスで2025年2月12日、AP
 国際法を踏みにじって隣国に侵攻したロシアを利することがあってはならない。重要なのは、ウクライナが解放され、安全が守られることだ。

 トランプ米大統領プーチン露大統領が電話で協議し、ウクライナ戦争の終結に向けた交渉を始めることで合意した。米国が提案し、ロシアが受け入れた。


 両首脳は「大勢の死を止めたい」との考えで一致し、「長期的な問題解決は可能だ」との認識を共有したという。

 ロシアの侵攻開始から間もなく3年を迎える。戦闘は長期化し、民間人の犠牲者は1万2000人を超える。交渉の開始は歓迎すべきだが、予断を許さない。


 懸念されるのは、トランプ氏のロシア寄りの姿勢である。

 ロシアが占領したすべての地域がウクライナに戻ることは「ありそうもない」と述べ、「いくつか」にとどまるとの見方を示した。

 ウクライナが求めている米欧軍事同盟の北大西洋条約機構NATO)への加盟については「現実的ではない」と退けた。


 「迅速な終戦」という大統領選公約の達成を急ぐあまり、当事者であるウクライナの頭越しで交渉を進め、それを押し付けるなら、独善が過ぎる。

 ウクライナが重視するのは、一体的な領土の維持であり、主権が侵害されないための国際的な「安全の保証」だ。ゼレンスキー大統領は「公正で永続的な平和」を求めている。


 クリミア半島の奪還は現時点では難しくとも、将来的に外交によって取り戻す余地を残したい考えだ。一方、安全を守るための体制が整わなければ、ロシアがいつ再侵攻するとも限らない。

 責任は欧州各国が担うべきだとトランプ氏は主張し、ウクライナへの軍事・経済支援を削減するという。だが、バイデン前政権が「専制主義から民主主義を守る」と訴えて続けてきた大規模支援をいきなり打ち切るのは、無責任だ。

 「力による現状変更」を許せば、国際秩序の弱体化が進む。トランプ氏が何よりも考慮すべきは、ウクライナの利益である。ゼレンスキー氏と緊密に意思疎通しつつ、地域の安定につながる和平構想を描くべきだ。

mainichi.jp


ウクライナ侵攻3年 大国の論理で平和築けぬ

オピニオン

朝刊政治面
毎日新聞
2025/2/24 東京朝刊
1654文字
左から順にトランプ米大統領プーチン露大統領、習近平・中国国家主席の肖像を並べたアート作品=ロシア占領下のウクライナ南部クリミア半島ヤルタで2025年2月8日、ロイター
 ロシアがウクライナへの侵攻を始めてから、3年が経過した。戦闘が長期化する中、停戦を探る動きが出ている。

 一日も早い平和の実現が望まれる。しかし、大国が強者の論理で小国に決着を迫るようなことがあってはならない。

 ロシアはウクライナ領の約2割を占領している。ウクライナは露西部クルスク州へ越境攻撃して一部地域を占拠したが、ロシアの優勢は変わっていない。

 人的被害は甚大だ。双方の戦死者数は推定各7万人超とされるが、さらに多数に上る可能性がある。ウクライナでは約1万2600人の民間人が命を落とした。


 被害が拡大する中、世論調査によると、停戦交渉に前向きなウクライナ国民が増えている。

 一方、ロシアはなりふり構わぬ人海戦術と物量作戦で戦闘を継続しているのが実態だ。

 プーチン政権は、地方の住民に高給を支払い、志願兵として前線へ送り込む。友好国・北朝鮮の兵士も戦場に投入している。


懸念される頭越し停戦
 バイデン前米政権は、対露制裁とウクライナへの軍事支援を強化する一方で、戦争終結に向けた糸口は見いだせなかった。


 ロシア、ウクライナ双方の疲弊が色濃い状況で、停戦交渉に乗り出したのがトランプ米大統領だ。プーチン露大統領と電話協議し、米露高官による交渉を開始した。

 だが、当事者のウクライナや欧州諸国は参加していない。ウクライナの頭越しに、トランプ氏がロシアの言い分を認める形で「取引」を進めることが懸念される。


 戒厳令下のウクライナでは昨春に予定されていた大統領選が延期された。トランプ氏は、ゼレンスキー大統領を「独裁者」呼ばわりし、ロシアと歩調を合わせて大統領選の早期実施を求めている。

 だが、国際法を破って侵攻したロシアに非があるのは明らかだ。プーチン氏に対しては、国際刑事裁判所ICC)から戦争犯罪の容疑で逮捕状が出ている。

 ゼレンスキー氏が「ウクライナ抜きで戦争の終結方法や条件が決められることはあり得ない」とくぎを刺すのは当然だ。欧州諸国の首脳からも、性急な動きを危惧する声が上がっている。

 ロシアによる占領が固定化することがあってはならない。ウクライナ全体の安全が脅かされない保障も必要だ。

 プーチン氏は「ロシア帝国の再興」という野望を抱いているとされる。ウクライナの属国化を視野に入れており、一旦停戦したとしても再侵攻の恐れは拭えない。

 過去にも、大国同士の取引で主権が侵された例がある。ソ連ナチス・ドイツと東欧を分割する秘密協定を結んだが、その先に待っていたのは、平和ではなく第二次大戦だった。


不問に付せぬ露の暴挙
 第二次大戦後の国際社会では、各国が互いの国境を尊重し、武力によって現状を変更しないというルールを作ってきた。

 今回、ロシアを利する停戦になれば、あしき前例となる。「戦争の違法化」に取り組んできた人類の努力が無に帰してしまう。

 戦禍のウクライナでは、物心両面で荒廃が進む。露軍の攻撃で200万棟を超える住宅や施設が破壊されたとみられる。電力などインフラ施設の被害も甚大だ。大量の地雷は復興の妨げとなる。

 国外に脱出した難民は690万人を数え、故郷を離れた国内避難民も370万人に上る。

 「“平和のための平和”では意味がない」

 侵攻後の2022年6月に来日したウクライナ人女性、ハンナ・ボビルさん(30)は「国際的なルールに沿った平和にならなければいけない。戦争を始めたロシアは責任を負うべきだ」と訴える。

 戦争は早く終わってほしいが、公正で持続的な停戦でなければ受け入れ難い。多くのウクライナ人に共通する思いだろう。

 その願いが裏切られてはならない。ルールにのっとった停戦が実現するよう、国際社会は米露に働きかけを強めるべきだ。

 「法の支配」を掲げ、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と支援を続けてきた日本の責任でもある。

 仮に戦闘が止まっても、ウクライナの人々やその心、国土に残された傷は深い。停戦交渉の行方にかかわらず、ウクライナを支え続ける必要がある。

mainichi.jp

<社説>米ロの停戦交渉 ウクライナの声を聞け

2025年2月15日 07時16分


 トランプ米大統領がロシアのプーチン大統領と電話で協議し、ウクライナ侵攻の停戦に向けた交渉を始めることで合意した。
 侵攻から24日で3年。早期停戦が必要でも、トランプ氏はロシア寄りの姿勢が目立ち、侵攻されたウクライナの頭越しで交渉を進めることは禍根を残す。米国はウクライナの主張に十分に耳を傾けて交渉に臨まねばならない。
 トランプ氏の対ロシア融和外交は、バイデン前政権の方針を全面転換するものであり、電話会談では、両国が第2次世界大戦で協力し、ナチスドイツに勝利した歴史を称賛した、という。
 ただ、ナチスのような野蛮な攻撃を続けているのはロシアにほかならない。ウクライナでは、自由で開かれた国際秩序を主導してきた米国の「裏切り」として失望感も広がっている。
 ウクライナのゼレンスキー大統領は米ロの停戦交渉合意について「わが国抜きの停戦交渉には同意できない」と反発。欧州連合EU)と欧州主要6カ国は共同声明で、停戦交渉にはウクライナと欧州の参加が不可欠と強調した。
 停戦交渉にウクライナの意向が十分反映されるべきは当然だ。
 ゼレンスキー氏は、北大西洋条約機構NATO)の加盟確約など、ロシアによる再侵攻を防止するための安全保障措置を条件に、ロシアに領土の一部を占領されたままでも停戦交渉入りを受け入れる姿勢を示していた。
 しかし、トランプ氏はプーチン氏との電話会談後、ウクライナNATO加盟は非現実的だと指摘した。これではウクライナが停戦交渉に同意できるはずがない。
 ゼレンスキー氏は14日からドイツ・ミュンヘンで開催される安全保障会議で、米国のバンス副大統領、ルビオ国務長官と会談する。会議に参加する岩屋毅外相もウクライナや欧州と歩調を合わせ、ルビオ氏らを通じてトランプ氏に対ロ融和姿勢の再考を促すべきだ。
 トランプ氏はウクライナが「いつかロシアになるかもしれない」と述べるなど、長きにわたるロシア支配の苦難の歴史には関心がないようだが、大国が中小国を犠牲にすることは容認できない。
 ウクライナで公正で永続的な和平が実現できるか否かは、国際秩序を維持できるかどうかの岐路でもある。今ほど国際社会の結束が求められている局面はない。

www.tokyo-np.co.jp



<社説>侵攻から3年 ウクライナ和平 公正に

2025年2月24日 07時08分


 ロシアによるウクライナ侵攻から3年。大量の核兵器保有する軍事大国が国連憲章に違反し、主権国家である隣国を蹂躙(じゅうりん)し続ける事態が続く。プーチン大統領は直ちに無条件で撤退すべきだ。
 ウクライナは今、ソ連時代の1930年代初頭のホロドモールと呼ばれる人為的な大飢饉(ききん)以来の人道的危機にある。軍関係者と民間人合わせて6万人が死亡。国土の約2割が占領されたままで、約700万人が避難民として国外への脱出を余儀なくされた。和平が急務であることは言をまたない。
 今、最も懸念されるのは最大の支援国である米国の方針転換だ。トランプ大統領プーチン氏を一切批判せず、一方、ウクライナのゼレンスキー大統領を「独裁者」呼ばわりしている。親ロシア姿勢は異様ですらある。
 民主的に選出されたゼレンスキー氏は今も過半数の支持がある。トランプ氏がプーチン氏の反ウクライナプロパガンダの影響を受けているのなら事態は深刻だ。
 停戦に向けた米ロ交渉は、実績づくりを急ぐトランプ氏の足元を見透かしたロシアの主導で進んでいるように映る。
 しかし、ウクライナと欧州の参加なくして停戦は不可能だ。
 ロシアの狙いは領土拡大ではなく、ウクライナ全土を影響圏に置くことであり、和平のためには欧州が関与する形でウクライナの安全が保障されなければならない。欧州を排除して一時停戦が合意に至っても、ロシアは軍を強化して再び侵攻する可能性がある。
 2015年にウクライナ東部紛争で停戦したミンスク合意の7年後、ロシアは全面侵攻した。同じ失敗を二度と繰り返してはならない。独裁者への宥和(ゆうわ)政策は逆効果だ。国際社会はナチス・ドイツ侵略戦争を想起すべきである。
 力による現状変更を認めれば冷戦後の国際秩序は崩壊する。日本政府は欧州などと歩調を合わせ、ウクライナ和平を公正なものへと導く責務がある。この侵略戦争プーチン氏の「勝利宣言」で終わらせてはならない。

www.tokyo-np.co.jp

産経新聞社説

<主張>米露停戦交渉 ウクライナの立場尊重を

社説
2025/2/15 05:00
オピニオン
主張


今月24日で3年を迎えるロシアのウクライナ侵略をめぐり、トランプ米大統領プーチン露大統領が停戦交渉の開始で合意した。

両首脳は遠からずサウジアラビアでの直接会談に臨むという。第二次大戦以来最大規模の欧州での戦争終結に向けて外交が動き出したが、トランプ氏の仲介には危うさがある。ウクライナの頭越しにロシアと協議を進め、多大な譲歩を強いる恐れがあることだ。

国連憲章に反し、自らの野望と力によって隣国の領土を蹂躙(じゅうりん)しているのは、プーチン氏である。まずは占領地からの露軍撤退を強く迫ることが、交渉の出発点でなければならない。

だがトランプ氏は、ロシアが一方的に併合した南部クリミア半島を含む2014年以前の領土をウクライナが回復する可能性は低いとの認識を示した。侵略の起点は「2014年」だという意識でウクライナ国民は祖国防衛に結束してきた。その立場を軽んじる発言だ。

トランプ氏は、ウクライナ北大西洋条約機構NATO)加盟は非現実的とも語った。プーチン氏の罪は問わず、その利を汲(く)む宥和(ゆうわ)的な態度が露骨だ。プーチン氏はトランプ氏に、戦争の根本的な「原因の除去」が不可欠ともクギを刺した。

ウクライナに民主主義陣営の一員として平和と繁栄を希求する意思を放棄させ、露の属国とすることが、真意だ。事実上の降伏を狙うプーチン氏との拙速な停戦合意は、次の侵略のゴーサインになりかねない。

トランプ氏が駆使すべきディール(取引)とは、ウクライナに軍事支援停止をちらつかせ、領土割譲をのませることではない。プーチン氏の不当な要求をかわし、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重することにある。露軍が占領を続ける一部領土の主権まで放棄させるような妥協は許されない。

プーチン氏の再侵略を抑止する意味でも、ウクライナへの安全の保証は最重要の課題だ。カギとなる平和維持部隊を派遣するのは欧州の責任である。

ロシアを支える中国や北朝鮮も交渉の帰趨(きすう)を注視する。力による現状変更を追認すれば、法の支配に基づく国際秩序は崩れ、中国は台湾併吞(へいどん)の野心を募らせるだろう。日本は自国の安全保障と直結する課題として、停戦問題に関わるべきだ。

www.sankei.com


産経新聞社説

<主張>ロシアの侵略3年 ウクライナの立場を守れ トランプ氏は言動を改めよ

社説
2025/2/24 05:00
オピニオン


ロシアのプーチン大統領主権国家ウクライナへの侵略を始めて3年が経(た)った。

「ロシアとウクライナは一体だ」というプーチン氏の帝国主義的な妄執が侵略戦争を開始させた。力による現状変更を図る暴挙で明白な国連憲章違反である。改めて強く非難する。

ロシアの非道な攻撃で、祖国防衛に立ち上がったウクライナ軍は6万5千人が戦死し、のべ37万人が負傷した。無辜(むこ)のウクライナ国民は4万人余りが殺傷されてきた。戦争前に約4100万人だった人口のうち、今も約700万人が国外避難し、日本には約2千人が滞在中だ。

同情を禁じ得ない。

停戦交渉は公平公正に
ロシアは、2014年にウクライナ南部のクリミア半島を併合した。この3年間で東部と南部の4州の大半を占領し、併合を宣言した。これらはウクライナの領土の約2割にも及ぶ。

このような無法は許されない。露軍は無条件で直ちに撤退すべきである。ウクライナの領土主権が守られなければ、国際秩序自体も動揺する。

トランプ米政権の発足で米政府の方針が大きく転換した。トランプ大統領は停戦実現に強い意欲を示し、米露間で交渉が始まった。

侵略戦争は終わらせるべきだが、当の被害者であるウクライナが交渉から外されているのはおかしい。米国と並んでウクライナを支援してきた欧州も蚊帳の外だ。今は軍事強国だけで物事を決する帝国主義的な時代ではない。公平公正な交渉を求めたい。

トランプ氏が、今回の戦争で悪いのはウクライナのゼレンスキー大統領だといわんばかりの言動をとるのは目に余る。プーチン氏の身勝手な主張を受け入れているのか。
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