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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

遂に「人間が蛇を怖がるのは生来的な脳の働きで、学習や経験ではない」で決着した?幾年の論争終結?(ダーウィンが来た!)【日曜民俗学】

まず、論より証拠、配信中であり、これを見てもらえれば話は早い。

お正月特集 ヘビのひみつ徹底解明!

初回放送日:2025年1月5日

ヘビ年ということで、番組開始18年で初のヘビ特集!ヘビのスゴ技や進化の秘密、ヘビが嫌われる理由を大解明!さらに、世界最大の毒ヘビ・キングコブラの意外な姿に密着!

古くからコワ~い存在として恐れられてきたヘビ。一体なぜヘビはコワいのか?それにはヒトがサルだったころからの因縁が関係していた?さらに、毒吹きや温度感知能力、壁登りなど、ヘビのスゴ技も大検証!ヘビの進化の秘密は「丸飲み」にあった!?そして、ヘビを食べるヘビ・キングコブラを探すため、取材班はインドネシアのバリ島へ!ヘビで唯一、巣を作って卵を守るキングコブラのお母さんに密着。親子の愛の意外な結末とは!?

www.nhk.jp


蛇特集を一度もダーウィンが来た!でやってなかったというのは実に怠慢な話であったが、それはそれとしておもしろかった。
へび、かわいかった。

だが、ここで、自分的には非常に見逃せないことが、確定した事実として提示されていた。


「放送ウラ話」に詳しく出ているので、転載しよう。

◎放送19年初!ヘビが主人公!なぜヘビは「怖い」のか?
ヘビ好きの皆さん、お待たせいたしました!番組放送19年で初のヘビ主人公回です。なぜこれまでヘビを一度も取り上げなかったのか…その理由は皆さんのご想像にお任せしますが、まぁ苦手な人も多い動物ですのでね…。

 そんな中で、ヘビの何をテーマにするか…。悩んだ私は、なぜヘビがそこまで嫌われてしまうのか…ということから調べました。ヘビが苦手な理由が分かれば、苦手な人でも番組を見られるかも…、と思ったわけです。いろいろ調べてたどり着いたのが「ヘビ検出理論」。難しい言葉ですが、要は「ヒトの祖先は、天敵のヘビを素早く見つけるために脳の視覚野が発達し、脳が大きくなった」という理論です。最初にこの理論を見たときは半信半疑でしたが、調べていくと多くの科学者によって肯定されている理論ということが分かりました。日本でも名古屋大学の川合伸幸教授によってかなり詳しく研究されていることが分かり、番組にもご協力をいただきました。


花の中からヘビを探す→すぐ見つけられる


ヘビの中から花を探す→ヘビに目がいってしまう

番組では幼児を対象に実験をしましたが、上記2枚の画像を見比べてみると、確かに自然とヘビに目がいってしまうことが分かります。では、我々の脳はヘビの何を見てヘビと認識しているのでしょうか?手足のない長い体?それともニョロニョロとした動き?それとも大きな口?実は、川合教授の研究によると「ウロコの模様」なんです。ヘビのウロコの模様を画像処理で消してウナギのような姿にすると、ヘビとして素早く認識しなくなるんだそうです。逆に、ヘビのウロコ模様を両生類のイモリに張り付けると、ヘビと同様に素早く認識できるようになるんだとか。ヘビのウロコは他のは虫類と違って規則正しい格子状になっています。どうやら、我々はこの規則正しい格子状の模様が目に入るとヘビと認識し、自然と目がいってしまうようです。人より目立ちたい!という方は、ヘビ皮のファッションを身につければ、人目を引くことができるかもしれませんね(怖がらせてしまう可能性もあるのでお気をつけて…)。

www.nhk.jp

ダーウィンが来た
ダーウィンが来た 蛇を怖がる
ダーウィンが来た
ダーウィンが来た 蛇怖い

ええええええええええええええ!!!
と、「え」を並べる資格が当方にはあるだろう。
なんとこのブログで、その話を最初にしたのは2008年。
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「宗像教授伝奇考」「宗像教授異考録」等も紹介した

>

宗像教授異考録11巻 稲荷と蛇
<。

宗像教授伝奇考 蛇神融合


その時の問題意識はそのままなので、そっくり該当部を再録する

ヘビがなぜおっとろしい、マジパネー(まじめに、半端でない)存在なのか。
聖書の作者が、エデンの園でイブを誘惑する重要な悪役のキャストにヘビ君を起用したところ、これが非常な当たり役となったのはよかったが、そのせいでその後の役どころが限定されてしまった…という「ヘビ=天本英世死神博士」説というのがある(例えが古い?)。


しかしそれでは中国の神龍や、日本のヤマタノオロチについては説明がつかんだろう。(青森県戸来村から伝承云々は無しで。)
上の「宗像教授」ではヘビが
■矢が飛ぶさまに似ている
■天から落ちてくる稲妻に似ている(稲妻の名の通り、雷は豊作につながるので(気温が暑く、雨が多い)喜ばれる)
■恵をもたらす川が、名前の通り”蛇行”している(※これは別の回です)
などによる連想があった・・・としている。


アイザック・アシモフ
同じ形で、脱皮によってどんどん大きくなるのは、古代人には「死と再生」に見えた。医者の象徴ヒポクラテスの紋章がこれなのは、そういう意味だ・・・としている。

そして忘れちゃいけない、宗像ならぬ、「ミナカタ教授伝奇考」…じゃなかった、南方熊楠の「十二支考 蛇篇」。
なんと天下の青空文庫も、まだ十二支考全部はテキスト化されていないそうだが、幸いにもこちらは出来ていた。


http://www.aozora.gr.jp/cards/000093/files/2536_20184.html
しかし怪物熊楠でさえも

…グベルナチスが動物伝説のもっとも広く行き渡ったは蛇話だといったごとく、現存の蛇が千六百余種あり。寒帯地とニューゼーランドハワイ等少数の島を除き諸方の原野山林沼沢湖海雑多の場所に棲み大小形色動作習性各同じからず、中には劇毒無類で人畜に大難を蒙(こうむ)らするもあれば無毒ながら丸呑みと来る奴も多く古来人類の歴史に関係甚だ深い。故にこれに関する民族と伝説は無尽蔵でこれを概要して規律正しく叙(の)ぶるはとても拙筆では出来ぬ。

と、このヘビに関する俗説神話伝説の多さに音を上げる始末だ。
それほどまでに、なぜにわれわれはへびを意識するのか。

ここでいきなりだが、この前読んでいた森下一仁氏の「思考する物語」という本を紹介します。宇野常寛ゼロ年代の想像力」と同様に、90年代のSFマガジンに長期連載されていた評論だ。
通して読んでみると、けっこうSF好きには常識的な認識をあらためて説かれているような迂遠な感じもして、すごく感動したとか興奮したでは正直なかったけど、上の「へび怖い問題」について、ある説を引用していたのだ。

やや余談めくが、人がなぜこれほどまでに蛇を嫌うのかという問題もこのこと(※何を指すかはあとで分かります)に関係しているようだ。蛇に対する恐怖には本能説と学術説があって、従来はどちらかというと本能説のほうが優勢だった。学習説は、蛇には毒があるからかまれると危険だ、だから恐怖を感じる、というものだが、蛇を怖がる人が必ずしも危険な目にあったわけではないし、毒をもたないと分かっている蛇も非常に嫌悪されるからだ。
ところが10年ほど前、ウィスコンシン大学でミネカという大学院生が行った実験がこの情勢を逆転させた。彼はまず、生まれて一度も蛇を見たことのないサルが、蛇を恐れないことを確認する。
次にそのサルの前で、別のサルが蛇を見て怖がる場面を目撃させる。本の一瞬、しかも一度きりの経験で、そのサルは以後、蛇を恐れるようになったのである。(正高信男『なぜ、人間は蛇が嫌いか』)
生命に関わる学習は一回きりで身に付くということを「ガルシア効果」というらしいが、それは自分自身の体験に限らず、仲間の危険を目撃することによっても同様なのだ。このような現象は、恐怖体験以外ではありえないようである。


以前、「人間の蛇嫌いは恐竜に追われていた小型哺乳類が、遺伝情報レベルで爬虫類への恐怖を持っていてそれを受け継いでるから」という説を聞いたこともあるけど、それよりは説得力がある。水や火、暗闇や高いところへの恐怖…なんてのもこれで説明がつきそうだ。

そして、こういう本があることが森下氏の著述から分かった。

だいたいこれで、蛇を嫌うという話はおおよその概要がつかめた。
ここには本からの引用も含め詳しく書いてある。

http://www.wvase.co.jp/WVASE/THINK-IMAGE/thinks5.html

いいすか、蛇を猿や人間が恐れるのは「本能説」「体験・学習説」が以前からあったが、「蛇に誰か1匹が被害に遭っただけでも、集団に恐怖が伝播するからだ」という有力説があり、その時の実験でも「一度も蛇を見たことがないサルは蛇を恐れない」とされた。というか自分もこちらの説の方が説得的に感じておった。



しかし、その後。2013年に…「精子を通じて動物は恐怖を遺伝させる」という学説が出てきた。
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恐怖の記憶、精子で子孫に「継承」 米研究チーム発表

2013年12月4日14時51分
http://www.asahi.com/articles/TKY201312040021.html
 【吉田晋】身の危険を感じると、その「記憶」は精子を介して子孫に伝えられる――。マウスを使った実験で、個体の経験が遺伝的に後の世代に引き継がれる現象が明らかに……
 実験は、オスのマウスの脚に電気ショックを与えながらサクラの花に似た匂いをかがせ、この匂いを恐れるように訓練。その後、メスとつがいに…(後略)


これは、こちらの話にも伝播する。

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【070902】“獅子フン迅” シカよけ特効薬にライオンの糞成分

2007年09月14日 | 獣害-対策:忌避
 百獣の王は糞(ふん)も怖い? JR東日本盛岡支社が、ライオンの糞から抽出した成分入りの試験液を、岩手県内を走る釜石線(花巻-釜石駅)の一部路線に散布したところ、列車とシカとの衝突事故が激減したとの実験結果を明らかにした。同支社は、研究開発した岩手大と連携して動物忌避剤の特許を出願するほか、商品化も目指す。

 同支社によると、山あいを走る釜石線では、野生動物との衝突事故が年間約40件発生し、被害の大半がニホンシカやニホンカモシカ。シカを近づけない有効策がなかなか見つからなかった。

 同じ悩みを抱えたJR西日本が平成15年秋、ライオンの糞をまく実験で、シカを線路に寄せ付けない効果をあげたことを知り、釜石線でも同じ実験を実施。翌16年には、盛岡支社の要請を受けた岩手大の松原和衛准教授を代表に「ライオンプロジェクト」を立ち上げた。

 プロジェクトチームは、地元の盛岡市動物公園で飼育されているニホンシカを使って実験を重ね、シカが嫌う有効成分を絞り込んだ。17年と18年の秋に約3キロの区間で試験液を散布したところ、年間20件あった衝突事故を3件に減らすことに成功した。

 日本の野生のシカが、見たこともないライオンの糞を避ける理由について、松原准教授は「恐らく、シカとライオンの先祖が出合っていて、シカは身を守るために避けようとするDNAが組み込まれているのではないか」と指摘する。

 同チームは、有効成分の絞り込みをさらに進め、3年以内の商品化を目指すという。
blog.goo.ne.jp

だから!
本能説、学習説の争いは、幾年にもわたる研究と論争の結果、「本能説」に軍配が上がったようなのだ。
他ならいざ知らず、NHKの番組なら幾重にもファクトチェックし、厚みのある証拠と判断の末に報じているのだろう。
ボーっと生きてんじゃねえよ




そして、名古屋大学の川合伸幸教授」も名前と顔を出して論じておられる。ネット社会も進歩しているから、少し調べればこのテーマにまつわる専門的な論文も見つかる、読むことができるかもしれない。
でも調べない。…といいつつ、ついつい検索しちゃった。ネイチャーに載ったみたいよ

www.nagoya-u.ac.jp
【ポイント】
・人間やサルは脅威の対象を早く見つけることが知られていた。
・ヘビやイモリを知らないサルが、イモリよりヘビを早く見つけることを確かめた。
・もともとウロコがない両生類のイモリに、画像処理でヘビのウロコを貼り付けると、ヘビと同じくらいか、それより早く見つけられた。
・ヘビに脅威と感じるのは、長い身体や尾、クネクネした動きや姿勢のせいでなく、ヘビのウロコのせいであることが判明した。

 
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら


【論文情報】
雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル:Japanese monkeys rapidly noticed snake-scale cladded salamanders, similar to detecting snakes
著者:Nobuyuki KAWAI
DOI:10.1038/s41598-024-78595-w
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-024-78595-w
Japanese monkeys rapidly noticed snake-scale cladded salamanders, similar to detecting snakes | Scientific Reports

そんなことで、理知や経験によって得る恐怖というのも別にあるんだろうけど(まんじゅうとか濃いお茶が怖い、など)、こと蛇にいたっては、人間は遺伝と本能によって恐怖感を感じるのだと。蛇が怖くないやつは本能がおかしいっ。
だから、蛇を一度も見たことがない赤ちゃんとかも、へびをみたらびびるのだと。


こういう大いなる科学ロマンが、人気番組によって世に広まることを喜ぶのです。・・・・でも、ホントかなあ?(いまなお、ちょっと疑う。)



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