「隅田川 誰をあるじと言問わば 鍋焼うどん おでん燗酒」_榎本武揚
実はこれ、アンサーソングらしい。というか歌自体が微妙にテキスト違うな。
晩年のエピソードが『世界人物逸話大事典』(角川書店)に紹介されている。
武揚は何度か大臣になったが、決して地位を利用して蓄財などせぬ清廉な江戸っ子であった。晩年は東京向島の風景を愛し、ことに百花園が好きでよく訪れ、そこで酒を飲むのを楽しみにしていた。百花園にある永機の句碑、「朧夜や誰れを主の隅田川」を見て拙いと言い、酔狂のあまり、「隅田川誰をあるじと言問はば 鍋焼うどん おでん 燗酒」と書いて、「どうだ、うまいだろう」と大笑いしたこともあった。(加茂儀一『榎本武揚』)
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敷地の一角に「榎本武揚旧居跡」の案内看板だけが建っています。以前旧居の写真を見ていたので、もう少し大きいスケールの榎本邸跡を期待したのですが。
以前、梅若公園の紹介のときにも触れましたが、榎本は元々幕臣でありながら、明治政府の外務大臣等の経歴を持っています。明治の早い時期に、この地を購入したようですが、住み始めたのは明治30年以降のようです。江戸っ子気質が強かったと言われています。
勝海舟ら旧幕臣との交流親交もあり、墨提をよく散策していたようです。また、向島百花園にもよく訪れ、酒豪な榎本は、園主と酒を飲み交わすこともあったようです。園内に俳人・其角堂永機の句碑「闇の夜や誰れをあるじの隅田川」を見て、うまくない句だとして「朧夜や誰れを主(あるじ)と言問はむ鍋焼きうどんおでん燗酒」と短冊に詠み直しています。
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と、榎本の洒脱さのほか、なんとも庶民的なものを好む金銭的な清廉さもうかがえる歌だとか。
作品中では「江戸っ子なのに、そばでなくなべ焼きうどんとは、これ如何に?」というところから「鬼滅の刃」にも飛び火して、どったんばったん大騒ぎ
自分は直接、句集や詩集を読むことはほとんどない。だが、歴史の本を中心に、名句、名歌は突然引用されるものだ。あるいは芸術的には取るに足りない句も、その事件や人物に関わっていると重要な意味を持ったりもする。
そういう時、「遭ったらすぐに捕まえて保存する、忘れないように」というポケモン的なムーブが必要だと、経験で教わった。
そんなわけで吉田戦車が引用した榎本武揚の狂歌を、こうやって保存蓄積してシェアする。
また歴史上の人物が詠んだ歌や句、詩はこっそりウィキペディアにも盛り込むことを趣味としているのだが(野暮な「シンプル記述論者」どもは嫌がるようだが)、なんとすでに収録済みだった。ただし冒頭が「隅田川」でなく「朧夜や」のほう。
子供の成長記録をマンガにすると、ある時期からいろいろその当人の心境もあって悩みどころとも聞くが、OKを貰っているのか順調に進んでいる。
榎本武揚は漫画「MUJIN」でも重要な役どころとして出てて…佐幕派の目からみた、やや辛辣な「勝海舟評」を述べる役どころにもなっている。
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