上田信『戦国日本を見た中国人 海の物語『日本一鑑』を読む』
講談社選書メチエ7月。「16世紀半ば、戦国時代の日本をルポルタージュした中国人がいた。その後すっかり忘れ去られていた貴重な記録『日本一鑑』には、いったい何が書かれているのか。…」
— 猫の泉 (@nekonoizumi) May 29, 2023
⇒上田信
『戦国日本を見た中国人 海の物語『日本一鑑』を読む』 https://t.co/OYbt2Ijt2s
「…明清時代の中国を、ユーラシアの陸と海から大きな視点でとらえた著作で高く評価される著者が、日本の戦国時代を描き直す意欲作。
— 猫の泉 (@nekonoizumi) 2023年5月29日
1523年、戦国日本の有力者、大内氏と細川氏が日明貿易をめぐって争い、中国の港町を争乱に巻き込んだ「寧波事件」は明朝に衝撃を与えた。…」
「…密貿易と倭寇への対策に悩む朝廷の命を受けて、日本の調査のために海を渡ったのが、『日本一鑑』の著者、鄭舜功である。「凶暴、野蛮な倭人」という従来の先入観にとらわれない鄭舜功の視線は日本の武士から庶民におよぶ。生活習慣や日本刀の精神性、切腹の作法、男女の出生比など…」
— 猫の泉 (@nekonoizumi) 2023年5月29日
「…多岐にわたって、凶暴なるも秩序ある日本社会を描いている。
— 猫の泉 (@nekonoizumi) 2023年5月29日
また、日本さらに畿内への詳細な航路の記録は、当時の日本の政治・軍事状況を映し出す。九州の東西どちらを通るのか、瀬戸内航路か太平洋航路か――しかし、大きな成果をあげて帰国した鄭舜功には、過酷な運命が待っていたのだった。…」
「…本書によって、日本の戦国時代は、応仁の乱から関ヶ原の合戦へという「陸の物語」ではなく、実は日本からの銀の輸出と海外からの硝石・鉛の輸入を主軸とする「海の物語」であったというイメージが、新たに像を結んでくるだろう。」
— 猫の泉 (@nekonoizumi) 2023年5月29日
amazonにはまだ来ていないな
から、目次の一部も引用しよう
序章 中世の日本を俯瞰する
1 ポスト・モンゴル時代の日本
2 『日本一鑑』と著者・鄭舜功
第一章 荒ぶる渡海者
1 寧波事件の衝撃
2 朝貢と密貿易
3 商人から海賊へ
第二章 明の侠士、海を渡る
1 草茅、危言す
2 観察する渡海者
3 日本での政治工作
4 慌ただしい帰国
第三章 凶暴なるも秩序あり
1 日本人のイメージ
2 刀と日本人
3 通過儀礼
4 礼儀作法と切腹
第四章 海商と海賊たちの海上ルート
1 大陸からの海上ルート
2 分岐圏を北へ
3 分岐圏を東へ
4 紀伊水道から大阪湾へ
終章 海に終わる戦国時代
1 中世から近世へ
2 その後の主役たち
思うこと。
・そりゃそうだな、明国にとっては、日本の戦国時代は織田信長の桶狭間でも信玄謙信の川中島でもない。「大内氏と細川氏が貿易をめぐって争い、わが港町「寧波」まで被害を受けて困るわ!」がリアルな戦国時代なのだ。なんかすいません…同じような感情をイギリスvsオランダの争いに長崎が巻き込まれた、江戸日本は持っただろうね。
・しかしその時に「まず日本で何が起きているか、その文化や制度や勢力図はどうなっているのか、お前調べてこい!」と、能力と意欲のある無位無官の人間に朝廷が命じて派遣されたなんて、明政府存外機能してるじゃん。こんな調査を秀吉が朝鮮、明、あるいはマカオにおいてやってたら、対外侵略の野望も達成できたかもだ。
・そして、識者の注目点は今やはり「日本からの銀の輸出と海外からの硝石・鉛の輸入を主軸とする「海の物語」」になってるのだなぁ、と。科学研究が進んで、戦極の古戦場から出てきた鉛の弾丸を成分分析して「これは輸入されたカンボジアの鉛」とかわかる時代なんだから(笑)
この前「戦国日本の軍事革命」を読んだので、この話にも興味を持てました。
・そして、この執筆者の数奇な運命は…歴史にこんな形で名前を残せたのは、彼の本望だったのだろうか。
ja.wikipedia.org
宮田登『弥勒』
講談社学術文庫7月。「世界が終わるとき、やってくる。
— 猫の泉 (@nekonoizumi) May 29, 2023
蘇我馬子も藤原道長も惚れ込んだ弥勒(みろく)信仰。五十六億七千万年後に降臨し人々を救う、未来仏とは何か?…」
⇒宮田登
『弥勒』 https://t.co/g9TG3WAH5z
「…広隆寺の国宝として有名な、弥勒菩薩半跏思惟像。弥勒とは、五十六億七千万年後に現れて衆生を救うという、阿弥陀や釈迦と並ぶ仏のことである。古代日本に伝わると、災害や飢饉と結びつき、末法思想(メシアニズム)として全国の民衆に広がった。…」
— 猫の泉 (@nekonoizumi) 2023年5月29日
「…戦後民俗学の泰斗が、中国・朝鮮との比較を通して、日本独自の弥勒信仰の歴史と民俗を復元し、日本文化の原型を描き出す。宗教民俗学を土台にした日本文化論!」
— 猫の泉 (@nekonoizumi) 2023年5月29日
こちらも目次を。
www.hanmoto.com
【目次】
はじめに
第一章 民間伝承としての弥勒
第二章 宗教運動と弥勒
第三章 比較宗教論における弥勒
第四章 日本仏教における弥勒
第五章 鹿島信仰と弥勒
第六章 朝鮮半島と沖縄の弥勒
第七章 世直しと弥勒
第八章 大本教の中の弥勒
まとめ
ミロク=ボサツ=スーパースター。
著者の宮田登氏はカタカナの「ミロク信仰の研究」が有名だ。呉智英や浅羽通明も書評で紹介し得たりしたっけ。
ちょっと個人的に思い出すのは、世界史すべてを無理やり一冊の漫画本にした、ごく無名の高校世界史参考書があって…だから章ごとに作者もバランバランなんだけど、中国の元末期~明建国を描いた人が、思いっきり少女漫画(というか当時の「アニメ風」)の、まあ絵柄で、元末期の重税に苦しむ民衆が「なぜ弥勒は降臨されぬ…なぜ末法の世は終わらぬ…衆生は救われぬのか…」「ならば我らがまず弥勒を迎える準備をするのだ!」と、白蓮教徒の乱が起きた…というね。そこだけセリフやコマ割りが、学習漫画(以前の用語を列挙した参考書)なのに詩的だったことで覚えている。
とにかく、世界の終わりと、それによる一発逆転の救済という物語が、一神教の影響か何か知らないがアジアに巻き起こり、そしてそれを日本・中国・朝鮮で共通点や差異を比較する。面白いとおもいませんか。
ああ、そうそう、グインサーガにも「ミロク」という宗教が出てくるんでしょ?こちとらそこに到達しなかったけどさ(笑)。ガイドブックで読んだ記憶あり