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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「憲法には究極の理想を盛り込めばいいのだ」という発想は、むしろ『立憲主義』から遠い、という話〜5月3日に寄せて


※以下、内田氏の連ツイで続いています。クリックすれば読めます。一応、この記事も後ろにつけておこうかな…



ここで引用した「憲法で台風も禁止せよ」というネタ、出典検証を図書
館レファレンスの中の人がしている。

質問
(Question)

田中美知太郎の「憲法に平和を唱え挙げて平和がもたらされるというなら、台風は日本に来てはならないと憲法に記すことだけで台風が防げるか」という趣旨の文章を正確に知りたい。

回答
(Answer)
名言辞典類からは出てこなかった。また『田中美知太郎全集 増補版 第26巻』(資料1)の付属資料の総著作索引で冒頭に「平和」の語が付いた著作を調査したが、出てこなかった。
手がかりを得るために、インターネットの検索エンジンGoogleで<田中美知太郎><平和><台風>の語でかけあわせ検索し、ヒットしたものを読んでいくと、「今日の政治的関心」が出典であることを紹介する個人ホームページがあった。(最終検索日:2004.3.11)
資料2に収録されている『今日の政治的関心(二)』を通覧するとp248に「・・平和というものは、われわれが平和の歌を歌っていれば、それで守られるというようなものではない。いわゆる平和憲法だけで平和が保証されるなら、ついでに台風の襲来も、憲法で禁止しておいた方がよかったかも知れない。・・」
とある。
初出は『中央公論』昭和33年9月号。ほかの論文とともに、『敢えて言う』(資料3 中央公論社 昭和33年刊)にまとめられて刊行された。資料4にもあり。

crd.ndl.go.jp

福田恆存は「当用憲法論」で、国内法で犯罪を前提にしているのに、憲法では平和を前提にするのか、という話を書いていた。

前半の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」といふのが途方も無い事実認識の過ちを犯してゐるからです。これは後に出て来る「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会」といふ一節についても言へる事です。例の座談会で、この虚偽、或は認識を揶揄し、刑法や民法の如き国内法の場合、吾々は同胞に対してすら人間は悪を為すものだといふ猜疑を前提にして、成るべき法網を潜れぬ様に各条項を周到に作る、それなのに異国人に対しては、すべて善意を以て日本国を守り育ててくれるといふ底抜けの信頼を前提にするのはをかしいではないかと言った。第一、それでは他国を大人と見做し、自国を幼稚園の園児並みに扱つてくれと言つてゐる様なもので、それを麗々しく憲法に織込むとは、これ程の屈辱は他にありますまい。
nakamoto.hateblo.jp

ここから敷衍して、「(素晴らしい理想を謳えばいいのなら)日本国憲法は軍隊だけでなく、よろしく警察、裁判所、税務署などの不保持を宣言すべきである」という戯文を考え付いたこともある。




【資料】内田樹氏の、冒頭に紹介したツイートのその後の連ツイ