野球漫画「グラゼニ」も、本編の長期連載に加えて、スピンオフがいろいろ出ている。うち一つが「昭和のグラゼニ」。
この時代の「プロ野球」の存在感、ステータスは今とは比べ物にならない。読者も、そして原作者も、「この時代の野球」を描くほうが、いま現在を舞台にした野球を描くより楽しく、そしてゼニになると踏んだのだろう(笑)。プロレスもそんなのばっかで、昭和平成のプロレスを振り返るコンテンツのほうが元気です(俺の観測範囲)。
野球のことも、感覚でわかるよ。
プロ野球の大ファンだったことは一度も無いが、それでもこの時代の選手列伝や技術論はちょっと楽しく読むし、だからこそ、以下の話を紹介するのだ。
長嶋に憧れて立教大で大活躍してプロに挑む、という選手にモデルがいるのか、漫画「チェイサー」のように主人公には架空のキャラを当てはめてお話づくりをしてるのかわからんけど、ともあれ今、舞台はスーパースター長嶋茂雄…がモデルの選手が惜しまれつつ、華々しくも涙の現役引退。
そしてV9川上…がモデルの監督(以下、このパターンの時は省略!)からその地位を受け継ぎ、これも高校野球の大スター定岡をドラフトで得て、さあ初優勝に邁進だ!!というあの時代。
で、いま無料公開されている回(第4期 その7、その8「意識改革」「キャッチフレーズ」の巻)では……
※有料だが、ほんとはその前の回から読むともっといい
comic-days.com
長嶋をお手本に打撃を身に着けた主人公はプロ入りしヤクルト…がモデルの球団スパイダースへ。
そして「荒川道場」「一本足打法を王に教えた男」の荒川と、広岡から指導を受けるのだが…荒川は大学ではホームランバッターだった主人公に、「一本足打法」と徹底した「ダウンスイング」を命じる……主人公はそれを必死で学びつつ戸惑う。彼はある晩、自分をこの球団に導いたスカウトについ本音を漏らす…

このへんなー。
なんか米大リーグでも「フライボール革命」とかいうんでしょ?「フライを打つぐらいならゴロを打て(そっちのほうが間違ってヒットになりやすい)」という時代から、その正反対、どうせならフライを打て、という話に、統計分析、おなじみセイバーメトリクスでそうなった……
あちらじゃホームランをそもそも「ビッグフライ」というそうで。なんかカロリー高い料理みたい(笑)
で、内部の人間は言う。要は一本足打法および「荒川道場の教え」は、技術そのものというより、”意識”をさせること、精神的な成長。あるいはゴリゴリのアッパースイング打者に、ダウンスイングと口を酸っぱくして言い続ければ、なんかちょうど良くなる……、みたいな塩梅の話。

ドラゴンボールの神仙水じゃないんだから(笑)
そして、ぶっちゃける。

そして、それを補足する昭和の謎。
「一本足打法がそんなに優れた打ち方なら、もっと後継者がいてもいいんじゃね?」
主人公は、カネやん率いるチームとオープン戦で対峙するが…おやおやカネやんも荒川道場には否定的?
そして、こうやって主人公を翻弄する秘策を投手に授け…

言い放つ!!

この種の「XXXXで成功したのは○○だけじゃないか。してみるとXXXXがすごいというより、○○がすごかっただけでは?あるいは○○の特徴に特化した、普遍性のない技術では?」といえば、宮本武蔵の『二刀流』がよく言われた。司馬遼太郎はまさにその理論に基づいて中編を書いているし。
しかしそうではない…とは、武道に詳しい我乱堂@SagamiNoriaki氏が何度もツイートしているところだ。
人間は意外性がある話が好きなようで、武蔵は実際は二刀流は使用してなかったとか、そういう話はたまに受ける。実際は武蔵の流派は二刀流が主体で、形も、技術の発展の仕方などから鑑みても、普通に武蔵は二刀流を使用して、二刀流で試合していたと思われる。現実はなんにも意外性も面白みもない。
— 我乱堂 (@SagamiNoriaki) 2023年2月23日
が、そういう剣道史はここ十数年くらいで解ったことなので、戦前では二刀流が少数なのは難しい、弱い、武蔵以外にはできない、デメリットが強い…みたいな言説がよく検証されないままに小説などで広まり…今に至る、というようです。司馬先生みたいに知っててデタラメ書いた人もいるみたいですけどw pic.twitter.com/B15ej5iU6f
— 我乱堂 (@SagamiNoriaki) 2022年11月19日
伝わってた地方では、それなりの勢力になってたこと多かったみたいですね。二天一流に限定しても、熊本、福岡、新潟…武蔵の弟子筋の流派まで含めると、佐賀、愛知、静岡、兵庫…武蔵流を入れていた心形刀流や柳剛流は、それこそ全国あちこちに伝わってました。強かったかは…個人差ですかねー
— 我乱堂 (@SagamiNoriaki) 2022年11月19日
そして…これ、絶対に読者に伝わらないだろうけどさ、おそらく少年マガジン?に、誰の作品だか…「素晴らしきバンディッツ」という架空の弱小プロ野球球団を描いた漫画がかつてあり、ここでずーっとアッパースイングに拘るホームランバッター?がいたという設定がなされていた。
大して面白い作品じゃなかったが、なぜかうちにどういう経緯か、一冊だけ置かれていて、当時漫画なんてなかった家で繰り返し読まれていたので、そこだけ覚えています。
ありゃ?原作 沢村翔/作画 峰岸とおる? 結構大物の作品だったのか……
とくに電子書籍化も、「スキマ」のようなサイトにも収録されないから、そういうものなのだろう。
あ、最後に。
栄光に包まれて現役引退し、そのまま華々しく監督に就任、世間の期待に包まれてV1を目指す長嶋巨人……とくれば、今の我々はその後にやってくる未来を知っている…。