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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「歴史は教師とすべきだが、主人にしてはならない」…豪首相が、李克強に語った言葉より

韓国財団が日本企業の賠償肩代わり、「元徴用工」解決策発表…朴外相「悪循環の輪を断ち切るべき」

2023/03/06 12:34

6日、ソウルで、「元徴用工」の訴訟問題について解決策を発表する韓国の朴振外相=ロイター
 【ソウル=溝田拓士】韓国の 朴振パクチン 外相は6日午前、日韓間の最大の懸案である「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」の訴訟問題について、韓国大法院(最高裁)判決で確定した被告の日本企業の賠償を、韓国の財団が肩代わりする解決策を発表した。日韓関係の悪化をもたらした問題の決着に向け、大きく踏み出したことになる。


 ソウルの外交省で記者会見した朴外相は、経済や安全保障などあらゆる分野で日韓協力が非常に重要だとして「長期間硬直した関係を放置せず、国益の次元で国民のために悪循環の輪を断ち切るべきだ」と述べた。
(後略)

www.yomiuri.co.jp


以降は、直接の関係がない話。(※間接的に関係するかは、それぞれで判断してください)

トニー・アボットというオーストラリアの首相がいた。
ja.wikipedia.org

在任期間は2013年9月18日 - 2015年9月15日、G7の政治指導者としてはかなり短いな、日本並みに(笑)


で、この本によると…

安倍外交を支えた言葉の力

アメリカ議会演説、戦後70年談話、ヒロシマ真珠湾で交わした和解スピーチ、全国戦没者追悼式式辞――「総理のスピーチライター」が明かす安倍外交の軌跡。米議会演説前には寝室、総理専用機、そしてアメリカの迎賓館でもスピーチの練習を続ける総理の姿が。演説草稿の作成過程で、総理がこだわったキーワードとは? 総理と一体となり、言葉を紡いだ著者にしか書けない「安倍さんの肉声」。昭恵夫人による喪主挨拶も掲載。

第1章 スピーチライターとは何か
第2章 「安倍外交」はこうして生まれた――価値の言葉と三つの成果
第3章 安倍総理との「初仕事」
エピソード01 読まれずに終わったインドネシア演説
第4章 ホロコーストの記憶の前で
第5章 一世一代の米議会演説
エピソード02 ケネディ大使と早稲田でのスピーチ
第6章 歴史への処し方――キャンベラ演説
第7章 岸信介の米議会演説――継承されたもの
第8章 戦後七〇年談話――わたしの案がボツになったわけ
第9章 和解の完成――ヒロシマ真珠湾
エピソード03 御名御璽事件――総理のスタイルについて
第10章 バイ・マイ・アベノミクス――希望について
第11章 アジアで民主主義を語る意味――インドとの絆
結びにかえて――最後の「スピーチ」

「あまたの国の数多い指導者と親疎いろいろの関係を築いた安倍総理にとって、アボット氏ぐらい、信頼を寄せ、強い友情を感じた相手はいなかった」
とのことだ。


で、こんな話をアボット氏本人が講演で回想していたという。

…二〇二二年二月二日、アボット氏はハンガリーブダペストにある保守系シンクタンク(ダニューブ・インスティテュート)に招かれ、「歴史の教訓」と題したスピーチをこう始めていた。

しばらく前のことになりますが、ビルマで東アジア・サミットがあったとき、わたしは日本の安倍晋三、中国の李克強ブルネイのスルタンと、なんとなく一緒に立っていました。
李さんは安倍さんに、日本は戦時中にどうたらこうたらと、まぁ非難がましい話をしてる。だから注意を逸らしてやるつもりで、スルタンの腕をつかんで「英国の植民地主義に、さぞかし怒ってるでしょう」と言ったんです。聞こえよがしにね(ブルネイは英領土だった)。
すると二人がこっちを向いたから、李克強さんにわたしは意見した。「歴史ってのは先生とするにはいいけど、ご主人さまと戴いて仕えた日には、ひどいもんですよ」と、そう、ね。


スピーチの日付は、ロシアがウクライナに侵攻を始める三日前。アボット氏は、ロシアと中国を一方に置き、米英豪日を対比させる構図を打ち出し、自由世界は自分たちを偉大にしたものが何かということに自信を持つべきだと結んでいる。
同じ価値観から、アボット氏は衆人環視の中、李克強氏に一泡吹かせた。安倍総理にとって頼もしい盟友だったわけである。
なお、History is a good teacher but a bad masterというシャレの効いた表現を、アボット氏は好んで何度か使った。

「歴史は師とすべきだが、主人にしてはならない」…アボット豪首相の言葉


ここには色んな話というか、政治的事情があることは外野でもわかる。
たとえば、
・豪州は確かに日本帝国主義と直接交戦し、被害を受けてもいるが、そもそもの成り立ちが英国の豪大陸侵略と移民(流刑?)であり、先住民との関係含めた問題を宿命として背負っている。
・日本との歴史問題の前に今現在は中国の膨張政策、権威主義こそが危険であり、そちらをけん制したい
アボット氏の当時のライバルは、中国通というか親中派としばしば評された労働党ケビン・ラッド首相(アボット氏の攻勢によって首相を退いた。2023年から駐米大使になるそうな)であり、それとの差異を示したい



……などいろいろあろう。それに、「歴史は師とすべきだが」のほうを、日本はちゃんとやってるんかい、という話もあろう(笑)

しかし、そんな面を含めて、ともあれオーストラリアの首相が中国首相(李克強)に対して、公の場でこんなふうに語っていた、という挿話と、このことわざ的な言葉は面白かった


安倍総理のスピーチ」は本の性質上、こういうレトリックの部分を細かく拾っているが、そのほかにもちょっとした秘話や人物像のスケッチが面白く、あとでまたいくつか紹介したい。