まず事件の概要をば。
韓国検察、前国防相逮捕 北朝鮮に配慮、捜査記録隠蔽か
2022/10/22 08:18
【ソウル=時吉達也】韓国人男性公務員が2020年、北朝鮮に射殺された事件に絡み、韓国の検察当局は22日、機密文書の隠蔽を指示した容疑などで徐旭(ソ・ウク)前国防相を逮捕した。南北融和を重視する文在寅(ムン・ジェイン)前政権が北朝鮮に配慮し、事件の矮小(わいしょう)化を図った可能性があるとみて調べている。
現政権下で文前政権の閣僚が逮捕されるのは初めて。野党側は「政治報復」として反発を強めており、与野党の対立がいっそう激化しそうだ。
男性は20年9月、業務中に行方不明となり、その後北朝鮮側の海域で射殺されたことが判明。徐容疑者は「男性が自ら亡命を試みた」とする政府判断と食い違う捜査記録の削除などを指示した疑い…(略)
www.sankei.com
日本語サイトを運営する韓国新聞メディアの関連社説から。
ハンギョレ [社説]検察の集中捜査に対し特検カード切った韓国野党第1党代表
登録:2022-10-22 02:49 修正:2022-10-22 08:29
共に民主党のイ・ジェミョン代表が21日午前、国会内の党代表会議室で「大庄洞特検」を要求する特別記者会見を行っている/聯合ニュース
野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表が21日、自身と尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に関する疑惑をすべて取り扱う「大庄洞(テジャンドン)特別検察(特検)」の導入を尹大統領と与党「国民の力」に提案し、受け入れを求めた。与党は検察捜査を理由として直ちに拒否の意思を明らかにした。しかし、最近の検察による捜査の集中は狙い撃ち捜査だとの疑惑を招いている。イ代表の要求を「希釈」とみなすだけでなく、捜査の公正さをいかに担保するか、与野党は真剣に議論する必要がある。イ代表はこの日、「特検は、これまでに提起されてきたすべての疑惑を網羅しなければならない」と述べ、大庄洞開発や火天大有(大庄洞開発で多額の利益を得た資産管理会社)の資産管理の実態解明、尹大統領の釜山貯蓄銀行に対する手抜き捜査疑惑、火天大有の筆頭株主であるキム・マンベ氏の実姉が尹大統領の父親の家を購入した経緯、大統領選候補時に尹錫悦候補が「大庄洞の不正の本丸はイ・ジェミョン」とした発言の選挙法違反問題などを、すべて特検の対象とすべきだとした。イ代表の提案は、大庄洞開発の収益金の一部が城南(ソンナム)都市開発公社のユ・ドンギュ元本部長と民主研究院のキム・ヨン副院長を経てイ代表側に流れたという疑惑に対して逆対応するかたちだ。同氏は違法な大統領選挙資金疑惑について「私的な利益はただの1ウォンも得ていない」とも述べている。
大庄洞の開発特恵疑惑はもとより、イ代表の最側近であるキム副院長の金品授受容疑も明確に真相が明らかされるべき重大な事案だ。だが、資金の規模や性格などの確認されていない被疑事実が検察から流出されるのは、検察が「違法な大統領選挙資金」という結論をあらかじめ決めているのではないかという疑問を抱かせる。検察が国政監査の期間中に民主党本部の家宅捜索を試みるなど、野党と正面対決する姿勢を見せていることも、政治的意図を疑わせる。「尹錫悦検察」の信頼性には懸念があるだけに、これを機に独立的な特検によって真相を究明しようという提案は一理ある。
ただ、イ代表が提案した特検の捜査範囲が包括的であること、検察捜査が本格化して間もないことなどは議論の余地がある。イ代表が「民主党の持つ力をもってしてでも必ず特検を実現しなければならない」と公言したことも不適切だ。与野党の合意なしに議席数の力をもって特検法を推し進めるのも行き過ぎだが、公党の代表が京畿道知事時代の事件について自らの司法リスクの盾として党を利用しているとの批判も免れない。
大庄洞特恵疑惑は、大統領選挙期間から1年以上も政争の対象となっている。特検導入問題がもう一つの「火薬庫」となって国会を麻痺させることのないよう、与野党は双方とも党利党略から脱し、信頼性のある捜査を通じて国民的疑問を解消しうる代案を議論してほしい。
中央日報 【社説】徹底した捜査で脱北漁民の強制送還の真相を究明しなければならない
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
2022.10.20 12:01
2019年11月に発生した脱北漁民強制送還事件に関連し、盧英敏(ノ・ヨンミン)大統領秘書室長(当時)が昨日、検察の召喚調査を受けた。検察が捜査に着手した後に召喚した文在寅(ムン・ジェイン)政府時代の大統領府関係者の中で最高位職だ。盧前室長は、海軍が東海(トンへ、日本名・日本海)上で脱北漁民2人をだ捕した2日後、大統領府対策会議を主宰し、彼らを強制送還することを決めた疑い(職権乱用など)が持たれている。
強制送還は当時、板門店の状況が写ったア写真と映像が7月に統一部によって公開され、事実として固まった。捜査を進めた検察は合同尋問の調査途中で帰還意向書をこの漁民が作成したという内容を把握した。国家情報院(国情院)が、だ捕当日に亡命の意思を明らかにした保護申請書に基づいて大統領府国家安保室に状況報告をした事実も明らかになった。
憲法上、脱北者は大韓民国の国民であり、帰国の意思がない限り、強制送還されてはならない。北朝鮮送還の口実だった「凶悪犯」だったとしても、事実関係を含めた調査と結論を韓国刑法の基準で先に出すべきだった。しかし、盧前室長が主宰した大統領府対策会議で、強制送還の方針が電撃的に決まった。これに対して、国情院は従来の報告書から「亡命意思表明」「強制捜査申立て」という内容を除いて統一部に伝えた。大統領府対策会議の翌日だった11月5日、統一部は「漁民2人を北朝鮮に送還する」という通知文を送り、2日後の7日強制送還を強行した。警察特攻隊まで動員された。一様に前例のないことだった。強制送還された漁民は、北朝鮮で処刑されたという。
現在明らかになった内容だけでも、盧前室長と関与した人物の違法性を判断するには十分なものとみられる。さらに、安保専門家ではない大統領秘書室長が違憲であり、国際的人権問題にまで飛び火しかねない強制送還問題を議論する会議を主宰したという点は疑問だ。盧前室長側は公式会議ではなく、ティータイム形式の懇談会であるため議事録を作成しなかったという立場だが、これも納得し難いことだ。
検察は18日には海洋水産部公務員である故イ・デジュン氏射殺事件に関与した徐旭(ソ・ウク)前国防部長官と金洪熙(キム・ホンヒ)前海洋警察庁長に対して拘束令状を請求した。2020年9月、イ氏が自ら越北したという結論を下すために証拠を隠蔽・歪曲したという疑惑だ。脱北漁民の強制送還事件と同様に、南北関係を考慮した結果、違法で異例のことが多数行われた。監査院が書面調査を試みたところ「無礼なこと」という反発を買ったが、この事件と強制送還事件の最後のパズルは全て当時最高統帥権者だった文前大統領に向かう。文前大統領は全く知らなかったのか、報告を受けたならどの程度まで介入したのか説明が必要だ。検察は客観的かつ徹底した捜査で、その答えを得てほしい。
なお、朝鮮日報にも日本語サイトはあるが、23日現在関連の社説はない。