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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

イスラーム学者の中田考氏は「領域国民国家のまやかし」と、健康保険を拒否している

集英社新書イスラーム 生と死と聖戦」を読んでいたら。

…(略)イスラームだけが世界中、どこでも人間による支配を受けずに生きていけるという、そういうシステムです。
本当にそんなことができるのか?実際、正統カリフ時代のダール・アル=イスラームはかなりそれに近いものでした。そして、現に私もかなりそれに近い生き方をしています。
何年か前、出版社の人たちと企画の打ち合わせをしていたときに、痛風発作が起こってしまいました。痛風というのは足が腫れる病気で、とても痛いんです。実は、痛風の発作による痛みは時間とともに薄れるので、私自身はそのままにしておいてと頼んだのですが、心配した編集の人たちが私を病院に担ぎこんでくれました。病院に行くと、保険証の提示を求められました。私は保険証を持っていないというと、怪訝な顔で尋ねられました。「保険証、失くしたんですか?」「大学をやめたときに、保険は脱退しましたから」

と、答えたときには、皆さん、なんでまた!と驚いていました。かなり無謀な人間だとあきれられたようですが、私にとっては当たり前のことでした。自分の健康について、国家がお金を徴収して世話を焼くということが、イスラーム的にどうもおかしいと感じたからです。
人間の寿命、生死の問題は最終的には神のご意思にゆだねるべきことのように思われますし、そもそも領域国民国家が運営する国民健康保険というものがなんともうさんくさく感じられたのです。
それにイスラームのシステムなら、相互扶助のために領域国民国家を経由する必要はありません。世界中から国境を越えて救援の手が差し伸べられることになります。それがカリフ制のよいところです。
日ごろからカリフ制復興を唱えている自分が、領域国民国家によるまやかしの福祉に加担するのはどうにもしゃくにさわったので、保険から抜けたのです。いまの病院は保険がなければ払えないほど高額なので、私はもう病院にもかかりません。それで死ぬようならそれも神の思し召しだと思っています。
イスラームの歴史の中では、病院は、篤信者の寄進(ワクフ)によって運営されてきました。国家が介入すべきことではないのです。
もちろん、年金もやめました。私はそういうものに興味がないのでほかに何があるのかは知りませんが、任意で入るものは一切入りません。((後略))

193-195P

うーん、言行一致といえばまさに言行一致なんだけど、
ただ究極的には
「私はもう病院にもかかりません。それで死ぬようならそれも神の思し召し」
という話で、そうでないと解決できないんだな、ということがわかった。



絶え間ない緊張が続く、中東イスラーム諸国をとりまく情勢。「イスラーム原理主義」すなわち「過激」「危険思想」というイメージが再生産されるなか、本来は唯一神アッラーの存在こそが、人間の人間による支配と国家の暴走、対立を食い止める秩序になりうると著者は説く。国境を越えて勢力を拡大する「イスラーム国」への評価も踏まえながら、ムスリムたちの死生観をわかりやすく解説する、必読の一冊。東京大学先端科学技術研究センター准教授・池内恵氏の解説付き。【目次】序章 イスラームとジハード/第一章 イスラーム法とは何か?/第二章 神/第三章 死後の世界/第四章 イスラームは政治である/第五章 カリフ制について考える/終章 「イスラーム国」と真のカリフ制再興/解説――自由主義者の「イスラーム国」論~あるいは中田考「先輩」について 池内 恵


あっ、解説の池内氏の文章、最初はブログに発表され、自分はその感想書いたことあったな
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