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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「アウティング」と、ノンフィクション考

「君が部落のことを書いたことで、私の家族がどれほど辛い思いをしているか知っているのか。そうなることが分かっていて、書いたのか」
 私は答えなかった。返す言葉が見つからなかったからだ。どんな理屈をつけようと、彼の家族に心理的ダメージを与えたことに変わりはない。
 野中は何度も同じことを私に聞いた。私は苦し紛れに言った。
「ご家族には本当に申し訳ないと思っています。誠心誠意書いたつもりですが……これは私の業なんです」
 私の業とは、心の奥深くから湧き上がってくる、知りたい、書きたいという取材者としての衝動のことである。「あなただって、自分の業に突き動かされて政治をやってきたのではないか」
と私は言いかけて、その言葉を途中でのみ込んだ。


この話、ここから思い出した

togetter.com
そのブクマ

[B! 漫画] 赤松健さん、呪術廻戦の作者を「女性」と断定。本人の意思を無視した性別のアウティング行為に批判が集まる

から。
もうお約束になってるが、自分のブクマを、長文で展開していこう

いやそのアウティング認定、法的に正しいの?幾つかの司法判断は「性的指向」とか故に認定されたのでは…また、鬼滅の刃作者に関する2020年文春オンライン記事 https://crea.bunshun.jp/articles/-/26549 も「アウティング」?
https://b.hatena.ne.jp/entry/4717001378809486946/comment/gryphon

文中にある、文春記事は転載されてこちらに……って、本当にこれもアウティングに定義されるなら、広めるのも問題だという事になるが、結論先取りすると個人的には相当に疑わしいと思うので、該当箇所を引用しよう
(それもアウティングに該当し、読みたくないと思った人はご回避ください)

crea.bunshun.jp

性別も明かしていない 作者の素顔は?

「性別すら明らかにしていませんが、処女作は2013年、24歳の時に書き上げた『過狩り狩り』なので、今は31歳前後。これが鬼滅の前身になった作品です。

 この時は福岡在住となっており、コツコツ新人漫画賞などに応募していたようです。初連載を機に上京し、初めてアシスタントなどを雇うのに、先輩漫画家の事務所を見学に行ったとか」(ジャンプ関係者)
(略)

「ジャンプではすでにボスの鬼舞辻無惨との戦いも終わっています。ネット上では様々に噂されてきましたが、実は作者は女性です。家庭の事情もあり、長く東京で漫画家生活を続けることはできないみたい。連載終了のタイミングで実家に帰るのではと囁かれています」(別のジャンプ関係者)

これがアウティングに相当し、問題であるかどうか、の一参考資料として、「当時(2020)の、文春オンライン掲載時のはてなブックマーク」にもリンクを張っておこう。
[B! comic] 累計6000万部超え「鬼滅の刃」 “女性作者”の素顔と“まもなく連載終了”の事情 | 文春オンライン



自分が知ってる過去の例

冒頭に、非常に印象深い「野中広務 差別と権力」を紹介したが、これは直接に、ダイレクトに繋がるとは思っていない。

なぜなら言うまでもないが、

A・野中広務は国会議員、与党幹部、大臣などを歴任した公人・権力者である
B・同時に「被差別部落の出身」という情報が、それ(相手が公人)であっても取り扱いに相当注意しなければならないセンシティブな情報である 

という、「書いていい」「書いては良くない」という点では、最大限…両極端の条件がせめぎ合っている案件だからだ。
(ちなみに週刊朝日佐野眞一の「ハシシタ 奴の本性」が最大限に批判され連載中止になったのは、出自に関する情報を「書いたから」そのものではない)



他の事例で、いろいろ思い出すもの。固有名詞は…あえて略すか!

・あの人は外国人風の筆名だが、執筆者は日本人
・あの人は筆名で、実は現役官僚
・あの人は新興宗教◇◇の信者
・あの人は離婚経験があり、息子が一人いる
・あの人は担当編集と結婚した
・あの人は本名に見えるがペンネームであり、ペンネームであることも公表していない
・あの人は同性愛者であり、作中にもそれが反映されている
・あの人はしょっちゅうゲイバーに通っている
・あの人は元〇〇という経歴があり、■■の作品にはその経験が生かされている
・あの人は元ヤンキーで、補導とかもされた
・あの人は別のXXXという名義で成人向け映画、小説、漫画…に出演・製作・執筆していた
・あの人は〇〇という雑誌に書いていたが、雑誌のバックが総会屋・宗教団体なので 脅迫絡みの記事/誰かのちょうちん記事 を書いていた


・・・・・・・ぶっちゃけ、こういう情報が一番多かったのは「噂の真相」だな!1号ひとつぐらい、定義ど真ん中だな、っていうのも含めた”アウティング”があったぞ、あれ。


自らが公開しているプロフィール以外で、どれなら語っても「アウティング」じゃないのか?

ぶっちゃけ
「自分で公開しているプロフィール以外は、一切他人は(確認・許可なしで)触れるべきでない。それをしたら(すべて)アウティング」と定義されても、重要条件として「政治家などは例外」とされれば、個人的にはそれであまり実害はないし、心地良い。

しかし、それで済むのか?といえば……



2015年に、ある政治家に関する報道に絡んで『「隠れホモ」はLGBTとは関係ない』という意見が話題(賛否両論)を呼んだこともあったな。




どこから、「本人も認めた・言及した」としていいのか?

そもそも、自分が言及したプロフィール(属性)というのは、通常すごく限られているのでな。創作活動に携わる人とかだと、特に最近は相当に人気があっても、最低限のことしか公表しないなんてのは全然稀ではない。
ジャンプ作家が新年号で羽織袴で集団写真を撮って挨拶する、なんてうるわしい?慣習はいつ消えたのか。ぶっちゃけ、うっとうしい顔が並ぶだけで売り上げにも貢献しないだろうしな(笑)
そして人気が無い人は「自分の属性を語るのは全然オッケーだが、どこにもそれを語る場が無い」ということもあるわけだし(笑)。
属性にしたって「自分の菩提寺浄土真宗」という属性をプロフィールに載っけてる漫画家とかはあんまり見ない、どの属性を自己紹介するのかは幅があるのだ。

またさ、たとえばある特定宗教をバックにした政党から出馬表明をしたし、党の役職に就いているけど、「自分は〇〇教の信者です」と正式に表明したりはしてない、ってひともいるし
その日とは2011年にある雑誌で始めてそれに関するインタビューに公式に答えて、それ以降は正式に、この問題に関してはアウティングではなくなった、ということになるかな?

マンガ家・さとうふみやが初めて語る幸福の科学と『金田一少年
09年の衆議院選挙で「幸福実現党」より出馬した、『金田一少年の事件簿』でおなじみの人気マンガ家・さとうふみや氏。
これまで公の前に現れることのなかった同氏が、作家生活20周年を迎えた今、自身の信仰とマンガ作品について初めて赤裸々に語ってくれた──。

sarusuberazu.blog64.fc2.com

どうみても自伝的要素があるよね、としか読めない作品に、赤裸々とも言えるかたちで自分の性的指向性自認を描いたが「あれはあくまでも芸術的に構築した文学」ということに公式にはなっている(少なくとも著作権を継承した遺族らはそう語っている)なんて人もいる。

こういうのも、本人が明確に表明していない以上、それを語るのは「アウティング」となるのか。


対象者に確たる証拠と事実を、発言者が掴んでいると「アウティング」で、証拠がない状態で語ると「推測」ということでいいのかな?

そもそも冒頭の話題って、事実関係が違うんじゃない? という話がある。
で、もし事実関係が違っていて、それを断定調で語ったら「あやふやな情報を事実として語った」という批判になる(そういうスタンスのブクマも多いのはご覧の通り)


だが推測としての「この作家は実は女性…だと思う、作風などから分析して」「原作者は、外国人風のPNだけど、日本人でしょ。そんな気がする」は、セーフ…なのかね??
事情通が、実は実際にファクトとしての情報を掴んでいるけど、そういう言い方をする、ってこともありそうだ。