INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

国会は「諜報戦争」の舞台…その中の超一流スパイ・野中広務が称賛する「病院情報は、公明と共産が一番早い」…って怖いわ!!

最近、少なくともはてなでは「国会」が話題になっています。火元は…実は自分はいまだに「はてな匿名ダイアリー」の構造がよくわからないのだけど、ここを舞台にして「国会ウォッチャー」という名前(一般名詞でなく固有名詞ということでいいのですかね?)で書いているかたの記事が、何度も多くのはてブを得て、大きな話題になった。
普通のブログで書いてくれれば探しやすいというか、アンテナに入れられるのに、と思うのですが、まあはてブ経由で見られればそれでいいか
(仮)これで多くは網羅できるかな?
http://b.hatena.ne.jp/search/text?q=%E5%9B%BD%E4%BC%9A%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC

で、国会質疑というのは退屈なことも多いが、
エキサイティングな場面も確かにある。

そして、テクニカルな法律の攻防もわかれば見ごたえはあるけど…もっと端的に秘密資料や、秘密証言がバーンっと出てきて大きな騒動になる、いわゆる「爆弾質問」というのがあります。
森友学園」騒動でも、いろいろ出てきましたね。

こういうのは一種の「諜報戦」「スパイ合戦」と考えてもいい。そうだ、みんな大好き「スパイ活動!!」なのです。

いや、スパイと聞くとがばっと起き上がって耳を傾ける人もいるだろう。
男の子も、いや女の子も同様に、「スパイ」、あるいは「探偵、怪盗」はプロ野球選手や宇宙飛行士、マンガ家やサッカー選手に負けず劣らず、やっぱりみんな大好き。やれるならやりたいんだわ、みな(断言)。

むかし、そんな「みんなスパイをやりたいんだ」ネタで何本か書いたな。

バクマン。」、コンビの新作漫画(劇中劇)に一言…”スパイごっこ”の面白さかな?その系譜と類似作 - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100510/p3
 
「実はNHKBS1はすごいインテリジェンス情報の塊」(池内恵)…専門家がいうと、厨二的スパイ願望を刺激されるなあ。 - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140409/p2

国会が、しのぎを削る大物スパイたちの諜報合戦の舞台と考えると、にわかに、あの退屈なテレビ中継がミステリーの場になるではないですかね。
そんな、
「スパイ・諜報活動者という側面から見た国会議員」という点では、絶対に戦後議会で屈指の存在であるのが、「野中広務」であります。議論の余地はない。

もちろん純粋な諜報力では、日本のフーシェとまで言われた後藤田正晴なんて存在もいるが、基本的にそれは警察組織をバックにしたものだ(警察をやめて議会に入っても、そんなサポートが継続してあるというのも本来はおかしいのだは)。
野中広務氏は、ほぼ徒手空拳というか、行政組織とは別の形で、「野中諜報機関」を作り上げてきた。メディアから裏情報が入ってくる光景などもけっこう記述されているものもある。そんな政治家とメディアの関係も気になるし、はっきり言って、そういう野中氏の情報・諜報活動は後述するが面白い一方で、非常に暗く、陰湿で、恐ろしいものを感じざるを得ないものだ。
彼は一時総理大臣候補とも言われつつ、そうはならなかったが、こういうのを力の源泉にする人間は権力の頂点にはいくべきではない、という力学もあったのではないか。それは後藤田正晴も同様だった気がする。

だが、面白いという点では実におもしろいのである。

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

闇将軍―野中広務と小沢一郎の正体

闇将軍―野中広務と小沢一郎の正体


余りに面白いもんだから、けっこう野中広務の回想記は何種類も出ているし、中には聞き書き、学問的なオーラルヒストリーも多い。90年代の日本政治のキーパーソンでもあるから当然だが、
その「面白さ」のひとつとして、要は「俺はけっこう、スパイ活動、諜報活動、裏工作に手を染めたよ。具体的にはこうこう…」と、かなりぶっちゃけて語るのですね。
けっこう天然なのか、それとも計算なのか、引退議員である気安さや、すでに90歳を超えた「神のうち」に入った人でもあるからか・・・・・・・


上の本も実に面白いのだが(過去にも紹介記事あり)、今回は、野中氏本人からの聞き書き、オーラルヒストリーであるところの

聞き書 野中広務回顧録

聞き書 野中広務回顧録

57歳で中央政界に進出、自治大臣官房長官自民党幹事長と権力の階段を駆け上がり、90年代の日本政治をリードした野中広務氏。村山、橋本、小渕、森内閣を裏側で支え、「政界の狙撃手」との異名を取った氏は激動の政治状況の中でどのように決断し、いかに闘ったのか。これまで語られなかった新事実をまじえ、なまなましく語る。

から引用しよう。聞き書きだから、ぜんぶ野中氏が「これはしゃべっとこ」というふうに思ったことだという点に注目!

兵庫県から出ている当時の衆議院議員のことなんです。それはぼくが官房長官の時かな、僕に「お前は小沢を天敵とか悪魔と呼んでいながら、野党と組んで、絶対に許せん男だ」と言って、予算委員会で質問したときに「僕はあんたからそんな言葉を聞く筋合いはない。あんたのことなら、この場でなんぼでも言いたいことがある」と言ったら、「委員長、こんなことを許していいのか」と言いながら収まってしまった(笑) 70P

(野中が失脚させたNHKの島圭次会長の子分の)男が、よく本や雑誌に野中が悪いんだ、みたいなことをかいておりました。わたしも執念深いから調べたら、この男が国際興業と話をして、タクシーを使ってある程度リベートをとって裏金にしていたということがわかったりしました。 82,83P

(1993年の細川政権時、連立与党は与党側の席に移るか、第一党であり続けた自民党がそのままの席に座るかというしょうーもない争いの中で)
ガタガタしてるあいだに、僕はヤマツル(社会党の大物・山口鶴男)さんに「委員長、ちょっと」と言っておくの部屋に行って「委員長、あんまりこれに口を容れんほうがいいですよ」と言ったんだ。「なんでや?」と言うので、「(略、小此木彦三郎という国対族の政治家が)『野中君な、これから役に立つかもわからんから、国対委員長の時のメモを、コピーしたやつをやるから、持っておれよ』と言って小此木メモをくれたんだ』。それには金の受け渡しのこともものすごく面白く書いてある。国対委員長が、野党に金を配る表現が実に面白く書いてあった。だからヤマツルさんに、『俺はな、小此木さんから「小此木メモ」を持っているんだよ。それが出てきたら、あんたのところに怪我人が出るから、あんまり最初から荒療治をするのはやめといたほうがいいよ』といった。
そうしたら、「いや、俺は小渕さんとも選挙区が一緒だしな。小此木さんとも親しかったし、まあそれは、わかった、それなりの動きをしよう」と言って、コロッと変わってくれた。 115p

「小此木メモ」というのはずいぶん効いたなと思いました。リアルに書いてあるんですよ。ある爆弾質問が上手だった男の名前が書いてあって、「彼が電話をかけてきて『彦さん、ちょっと都合してくれへんか』という。『いや、俺いま二本しか手元にないんだ』と言ったら『いや、二本で結構や』という。『そうか、それなら第14号控室のところの便所に今から行くから、そこで小便しようやないか』と言って、俺が200万渡したら、本人は棹を持ち替えて、ポケットに入れた」とかね(笑) 135P


まあ、なんだ。おそろしいほどの諜報力、情報収集力と、それを透明性向上や腐敗一掃ではなく、政治的な裏取引と脅迫、圧迫のために活用する野中広務の「闇の男」っぷりがよくわかるではないか。

ある種の滑稽味も感じるけど、やはり結果的には
「非常に暗く、陰湿で、恐ろしい」と書いた意味がお判りでしょうか。

しかし!!!!!
その「自民印、絶対零度の剃刀」とでもいうべき大物スパイ、野中広務が、的ながらあっぱれ、とその情報収集力に脱帽し、舌を巻く相手がいる。


そのひとりが、公明党草川昭三だ。

草川さんの情報は恐ろしいものでした。たとえば、細川さんが奥さんのお父さんのお名前でNTT株を買ってるのがわかったわけです。大和銀行参議院口座に入っていることもわかった。それを、われわれよりも前に草川さんは知って追ったんだ。
質問したあとで、「あんたら、よくそこまで調べたな」とく草川さんが言った。「あんたはもっと前から知っていたのか?」と言ったら、「俺も三か月ほど前から知っておったけれどな」というから、「あんたという人は恐ろしい人だ」と僕は言った。それほどの情報通でした。
どこの役所の人間が自殺をしたとか、どの政治家がまもなく病気が重くなって死ぬとか、そういう情報については草川さんほどの情報通はないですね。    122、123P

あっさり
言うな。

だが、「徳川家康が恐れた男!」でちょっとマイナーな武将を持ち上げられるように「野中広務が恐れた男!」も怖いですよ。草川氏、ご存命でお元気なら、この人からのオーラル・ヒストリーを聞くことはできまいか。

しかし、
質問者は、さらに深く尋ねる。
その返答もすさまじいい。

―それは病院関係の情報ですね。
病院なのかな。病院は共産党公明党が一番情報が早いですね。京都で谷垣(禎一)君のお父さんが危ないというのを知ったのは、共産党が一番早かった。だから選挙の準備も早く打ち出した。


なんだよ、ここだけに立ち上る「素晴らしいライバルに称賛を送るスポーツマンシップ」的なさわやかさは(笑)

「あの議員の口座の情報、3カ月まえに掴んだか! いやー、やられた」
「病院情報はあなたが一番早かったよ」
「あの議員が死にそうなこと、貴方たちは真っ先に知って選挙準備したわね…」


「諜報道」?




情報・諜報は合法非合法を含め、必要ではあるのだけど。

国会は日本国の生き残りの場である。
また行政、政府の問題を暴くために、どこからか情報を、アンオフィシャルな手段であっても引っ張ってくる必要はどうしても出てくる。
だから与野党問わず、国会議員が情報力、諜報力が高く、秘密情報を持ってくる力があることも、一概には避難できないのだろう。


しかし、その「闇」、暗さという部分も、絶対に見ておくことが必要だし、そういう人は「床の間においてはいけない」という不文律なども必要でしょうねえ。

高坂正堯が、ある場所でこう語っていた。

ドイツの有名な宰相ビスマルクは、名言を残しましてね。「自分はスパイは嫌いだけど、スパイという行為は非常にありがたいと思う」と言ったんですよ。政治にはそういうところがあるんですけどね。ヨーロッパの連中は、そういうところが図太いんでね。


佐高信氏との対談。同氏「日本への毒薬」272p